アーカンソー州ホット・スプリングズで採掘されたロック・クリスタル。
ロック・クリスタルは無色透明の水晶です。古代ギリシアの人たちがオリュンポス山の洞窟で水晶を見つけ、神々が水をあまりにも硬く凍らせたものと考えて、クリュスタルロス
κρύσταλλος と呼んだのが、クリスタルという鉱物名の由来であると言われています。クリュスタルロスはギリシア語で透明な氷のことでクリュオス
κρύος (寒気、霜)と同根です。ギリシア語クリュオスは寒剤 cryogen、凍結プローブ cryoprobe、 凍結防止剤 cryoprotectant
等、接頭辞 cry- として近代語に現れます。
なお水晶が極低温の水であって、火に対立するとの考えは東洋にも見られます。東晋の志怪小説「捜神記」巻一第二条「雨神」には、赤松子(せきしょうし)が「冰玉散を服用し、その処方を神農氏に教えたが、この術を学ぶと、火にはいってもやけどをせずにすんだ。」(竹田晃訳)とあり、竹田氏は冰玉散を水晶の粉末であろう、と解釈しておられます。
ロック・クリスタルは世界中に産出しますが、特に高品質の標本はスイスとフランスにまたがるアルプス地方とアメリカ合衆国アーカンソー州ホットスプリングズに産出します。他に重要な産地として、ブラジルのミナス・ジュライス、ゴイアス、バイアの諸州、マダガスカル、山梨県金峰山があります。