稀少品 貴重な三・五匁グラデュエーション 四十五センチメートル 十四グラム 優れた照りの国産あこや真珠 ヴェルメイユの留め金 オリジナルの共箱付 1949年から 1960年代初頭



 優れた照り(つや)を有するあこや真珠のネックレス。1948年から 1960年代初頭頃に制作されたもので、珍しいことにオリジナルの共箱が残っています。





 大きさ順に並んだ真珠の連を、グラデュエーション(英 a graduation)と言います。本品は三・五匁グラデュエーションと呼ばれるネックレスで、直径三ミリメートルから八ミリメートルの真珠が使用されています。留め金を含む全長は四十五センチメートルで、プリンセスと呼ばれる長さです。留め金は銀に金めっきを施したヴェルメイユです。





 真円真珠すなわち球形の真珠は、見瀬辰平氏が 1904年に養殖に成功し、1918年から 1919年にかけて商品化されました。1924年に御木本幸吉氏がアコヤガイ幼生のコレクター(採苗具)を考案すると母貝不足が一挙に解消され、1931年には五十一箇所の養殖場で数百万個の真珠が生産されました。戦前の生産数は 1938年に最多の 10,883,512個を記録し、その 64.9パーセントが三重県産でした。

 商品化されたばかりの真円真珠はどれも小粒でしたが、天然真珠ほどではないにせよ、初期の養殖真珠は現在よりもはるかに高価でした。1920年の平均月給が五十四円であったのに対し、直径三ミリメートルの真珠一粒は六十五円でした。当時貧しかった日本国民にこのような高級品が買えるはずもなく、真珠は全量が輸出に回されました。全ての真珠は神戸に集められ、海外へと売られてゆきました。





 やがて第二次世界大戦が始まると真珠養殖は不要不急の産業とされ、すべての養殖場は壊滅状態に陥って、生産はほぼ停止しました。1946年1月、GHQは当時の政府(大日本帝国政府)に対して真珠の在庫目録の提出を命じ、あらゆる真珠取引にGHQの許可を義務付けました。同年4月13日、マッカーサーは政府に対して、毎週決まった数の真珠製品を進駐軍の中央購買所に納入することを命じ、同年5月17日には進駐軍に納める以外の真珠売買を全面的に禁止しました。真珠は進駐軍にしか売ることができない商品となり、この状態が 1948年まで続きました。





 現代の真珠ネックレスは、同じ直径の真珠を連ねたユニフォーム・タイプです。しかしながら戦前及び 1960年代初頭まではほとんどの養殖真珠が直径三ないし四ミリメートルで、五ミリメートルとなるとかなり大きく、六ミリメートル以上の珠はほとんど採れませんでした。それゆえこの時代の真珠ネックレスは、全てグラデュエーション・タイプで、三・五匁グラデュエーションと総称されています。

 匁(もんめ)は真珠の国内取引及び国際取引に使われる単位です。一匁は五円硬貨の重さと同じ 3.75グラムです。一匁が 3.75グラムなら三・五匁は 13.125グラムですが、ネックレスに使われる真珠の個数には多少のばらつきがありますし、実際のネックレスには留め金の重量も加わります。本品の重量はおよそ 14グラムです。





 進駐軍に対する三・五匁グラデュエーションの卸値は、一本 7ドルでした。当時は 1ドルが 360円でしたから、7ドルは 2,520円です。1948年には国内の真珠売買が認められましたが、国内の卸値もこれと同じようなものでしょう。小売価格を卸値の 1.5倍とすると 3,780円、二倍ならば 5,040円になります。

 1953年の平均初任給は 4,500円ほどでした。現代の初任給を 20万円として三・五匁グラデュエーションの価格を換算すると、17万円から 22万円ぐらいになります。





 真珠ネックレスが本品のような三・五匁グラデュエーションであったのは、1960年代初頭までです。1960年代半ばになると直径七ミリメートルの珠が多く得られるようになり、真珠ネックレスはユニフォーム・タイプの時代を迎えます。しかしながら真珠は作れば作るだけ儲かったので生産過剰に陥り、真珠業界は大量の不良在庫を抱えて 1968年に真珠相場が暴落しました。真珠業界が回復したのは 1973年のことです。

 1960年代半ば以降、作れば作るだけ儲かった真珠は、養殖期間が短縮されてゆきました。以前は一年七か月、あるいは二年七か月の養殖期間であったものが、収穫を急ぐあまり半年ほどで海から引き上げられるようになったのです。これに伴って真珠層は薄くなり、真珠の品質は落ちてゆきました。





 しかるに本品は三・五匁グラデュエーションであり、養殖真珠の粒が小さかった 1960年頃以前のネックレスです。この時代の真珠養殖は時間をかけて行われ、充分に厚い真珠層の美しい珠が収穫されています。三・五匁グラデュエーションの価格は初任給が全て飛んでしまうほど高価でしたが、それに見合う品質が担保されていて、少し後の時代の真珠と比べれば、その輝きに格段の差があります。

 今となっては貴重な 1950年代頃の三・五匁グラデュエーションですが、本品はそのなかでもとりわけ美しい珠を使っています。本品だけを見てもなかなか分かりませんし、実物を見るならまだしも写真を見ても全く分かりませんが、同時代に作られた他の三・五匁グラデュエーションを並べて比べると、本品に使われている真珠の照り(光沢)は際立っています。







 三・五匁グラデュエーションはかつて真珠ネックレスのスタンダードでしたが、現在ではもう作られていません。稀少な三・五匁グラデュエーションの中でも、本品はとりわけ美しく、ご購入いただいた方には必ずご満足いただけます。糸は私(広川)がワイヤに替えましたので、切れる心配はありません。真珠ネックレスはたいへん上品なジュエリーで、カジュアル、フォーマルを問わずに日々愛用できます。





本体価格 78,000円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にて、お気軽にお問い合わせくださいませ。




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