フランス語「シン・コレ」の「シン」(Chine)は、日本語の「支那」、英語の「チャイナ」と同じく、「秦」(シン)を語源とし、中国を指します。フランス語「シン」の語頭を小文字にした「シン」(chine)は東洋紙、すなわち中国紙と和紙を指します。「コレ」(collé)は他動詞「コレ」(coller 貼る)の過去分詞です。フランス語では、英語と同じく、他動詞の過去分詞は「受け身」を表しますから、「シン・コレ」は「貼られた中国紙」または「貼られた和紙」という意味で、サポート(英
support 台紙の役割を果たす厚めの紙)に極薄の東洋紙を貼り付けて、版画を刷る技法を指します。台紙の上に東洋紙を貼り付ける理由は、西洋紙に比べると、東洋紙のほうが一層きめが細かいからです。
ここでいう「東洋紙」とは、ライス・ペーパーのような、薄い上質紙のことです。ライス・ペーパーは台湾等に産するカミヤツデ(Tetrapanax papyrifer)の繊維で作られる平滑な紙で、時計修理の際にも使います。この紙が「ライス・ペーパー」(英 rice paper 米の紙)と呼ばれるのは、この紙が西洋にもたらされたとき、米が原料であると誤認されたからです。春巻きの皮は米でできており、紙のように薄いため「ライス・ペーパー」と呼ばれますが、ここで論じる上質紙とは無関係です。