スティール・エングレーヴィング 「ロードス」
Rhodes
原画の作者 J. M. W. ターナー (Joseph Mallord William Turner, R.A. 1775 - 1851)
版の作者 サミュエル・フィッシャー (Samuel Fisher, fl.1830 - 1855)
画面サイズ 縦 92 mm 横 139 mm
イギリス 1834年頃
≪この版画のエングレーヴァーについて≫
サミュエル・フィッシャー (Samuel Fisher, fl. 1830 - 1855) はバーミンガムで生まれ、ロンドンで活躍したエングレーヴァーです。トーマス・シェパード
(Thomas Hosmer Shepard, 1793 - 1864) の≪現代のアテネ≫(Modern Athens, 1829-31)、ウィリアム・ビーティ (William Beattie, 1793 - 1875) の≪スコットランド・イラストレイテッド≫(Scotland Illustrated, 1838)、N. P. ウィリス (Nathaniel Parker Willis, 1806 - 1867) の≪アメリカの風景≫(American Scenery, 1840) 等に挿絵を描いています。
ターナーの原画に基づく作品としては、画集≪イングランドとウェールズの景勝地≫(Picturesque Views
in England and Wales, 1833)に掲載された版画を皮切りに、ターナーの生前に6枚の作品を制作しており、うち2枚は連作 ≪フランスの河≫(The Rivers of France, 1833 - 1835) のためのものです。
当時イギリスでは≪フレンドシップス・オファリング≫(Friendship's Offering)というギフト用豪華本のシリーズに人気がありましたが、この1841年の巻にウィリアム・クラウチ
(William Crouch, fl. 1817 - 1840) の原画に基づくフィッシャーのエングレーヴィングが掲載されており、批評家ジョン・ラスキン
(John Ruskin, 1819- 1900) がこの作品に詩を寄せています。
ラスキンは実のところクラウチの原画を気に入らずに酷評しているのですが、エングレーヴァーであるフィッシャーを称賛して、フィッシャーのおかげで原画よりもはるかにすばらしい版画に仕上がっている、と書き残しています。(Works, 2.205)
≪この版画について≫
チャールズ・バリー卿のスケッチに基づいてロードスを描いたターナー作品のエングレーヴィング。
ロードス島はギリシア本土からクレタ島を経て小アジアに連なる島弧の東端の島であり、エーゲ海の入り口という海上交通の要衝に位置します。ロードスはロードス島の中心都市で、小アジアに面して島の東端にある天然の良港です。
ロードスの港は≪世界の七不思議≫のひとつ「ロードスの巨像」で知られています。これは高さ33mのブロンズの巨像で、大プリニウスによると建設に12年を要し、紀元前282年に完成しましたが、56年後の紀元前226年に起こった大地震で倒壊し、再建されることはありませんでした。(Plinius,
Historia Naturae
34:18)
この作品で遠景に見えるのは小アジアの山並みです。遠景の左半分の海岸線はエーゲ海に突き出た半島であり、その突端がクニドスです。使徒パウロはエルサレムで捕縛されてローマへ護送されるときにこのあたりを通っています。(使徒言行録27:7)
この作品の原画 ("Rhodes" 1832 - 34年 Wilton number: 1259) は現在所在不明になっています。
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