≪版の作者について≫
チャールズ・カズン(Charles Cousen, 1819 - 1889)とジョン・カズン(John Cousen, 1803 - 1880)の兄弟はイングランド北東部、ヨークシャーに生まれた画家で、高名なエングレーヴァーでもあります。
ターナー作品をはじめ、フィンデン兄弟(Edward Francis Finden, 1791 - 1858, William Finden,
1787 - 1852)が中心になって製作した非常に豪華な画集 "Royal Gallery of British Art"
(1838 - 49)やエディンバラの出版社ブラック(Adam & Charles Black)が出した美しい画集 "Picturesque
Tourist of Scotland"(1849)、またウォルター・スコットのための挿絵など、多数の優れたエングレーヴィングで知られています。
≪原画の作者について≫
フォスター(Myles Birket Foster 1825-1899)はヴィクトリア時代のイギリスで最も重要な水彩画家のひとりです。
フォスター自身はラファエル前派の画家ではありませんが、 バーン=ジョーンズ(Sir Edward Burne-Jones 1833-98)やロセッティ(Dante
Gabriel Rossetti 1828-82)、またウィリアム・モリス(William Morris 1834-96) とも親交がありました。
「パンチ」や「ザ・イラストレイテッド・ロンドン・ニューズ」、「イラストレイテッド・ロンドン・オールマナック」等のイラストレーター、また美術収集家としても知られています。
フォスターは田舎の小道や田園風の小屋、ひなびた村の風景、花咲く生垣など、牧歌的な風景の名手で、ロングフェローの「エヴァンジェリン」、キーツの「ハイペリオン」のほか、サー・ウォルター・スコットやジョン・ミルトンなどヴィクトリア時代の詩人の作品を美しく飾る挿絵画家としても名声を博しました。
≪この版画のテーマについて≫
長い間床についていた快復期の少女が柔らかい枕に体を支えられて、暖かい日差しを浴びています。さきほどまで薄い本を読んでいたようですが、きっと疲れたのでしょう。本は膝の上に置かれ、少女は手を肘掛に置いて休んでいます。庭の植物や小鳥は明るい日差しの中で生命に溢れて生き生きとしており、少女の弱々しさをいっそう際立たせています。
小鳥を見守る少女の優しい眼差しは、少女が健康を取り戻しつつあることを物語っています。新鮮な空気と暖かい日差しに助けられて、いまはまだ蒼白い少女の頬も、まもなくバラの花のように輝きはじめるのではないでしょうか。
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