ジョン・バー作 「家庭の事件」 人物専門のエングレーヴァー、ウィリアム・グレイトバークによる楽しい作品 1870年代
Domestic
Troubles
原画の作者 ジョン・バー (John Burr, 1831 - 1893)
版の作者 ウィリアム・グレイトバーク (William Greatbach, 1802 - c.1885)
画面サイズ 縦 170 mm 横 256 mm
子供は好奇心が旺盛ですが、特に男の子は物を分解して「調べる」のが大好きです。この絵の男の子はふいごの蛇腹に切れ込みを入れて、中がどうなっているのか覗いてみたようです。男の子は好奇心に駆られて、後のことなど考えずにふいごの中を「調べた」のですが、蛇腹に切れ込みを入れてしまってから「どうしよう…」と思ったことでしょう。しばらくの間は気付かれなかったのですが、いよいよ夕食の準備をする時間になって、いたずらがばれてしまいました!
ふいごの蛇腹は革でできているので、いったん破れてしまうと修理はやっかいです。革の破れ目を貼り合わせる接着剤などなかなかありません。大きな空気圧がかかるので、普通の糊で張り合わせてもすぐに取れてしまいます。気密性が必要なので、針と糸で縫ってもうまくいきません。使えなくなったふいごを手に、おじいさんはどうしたものかと思案に暮れています。小さな妹がおじいさんに額をくっつけるようにして、興味津津で覗き込んでいます。炉辺ではおばあさんが火を起こそうと懸命ですが、ほほを膨らませて「ふーーーっ!」と風を送っても、灰が舞いあがるだけで、火は薪に燃えついてくれません。何せ肝心のふいごが使えないのです。
犯人の男の子はというと、戸口のところで腕をさすりながら、恐る恐る忍び足で中に入ろうと機会をうかがっています。男の子はさっき母親に捕まって、普段からいたずらばかりしている手を、棒切れでひどく叩かれたのです。母親はまだ棒切れを持ってこっちを睨んでいます。男の子はもう一度ダッシュで逃げられる態勢を整えて、ドアの陰で様子を見ています。
テーブルの下では小さなテリアが震え上がっています。男の子がふいごを調べているときに一緒にいた「共犯」なのかも知れません。母親のほうを上目遣いにそっと見上げています。しっぽはきっと後脚の間に挟んでいるのでしょう。
ジョン・バー (John Burr, 1831 - 1893) はスコットランドの画家で、子供をよく描いています。上の写真は「ザ・ケアレス・ナース」("The Careless Nurse" 「不注意な子守役」)と題された微笑ましい作品で、少女も赤ちゃんもたいへん愛らしく描かれています。興味深いことに、「ザ・ケアレス・ナース」には、本品「家庭の事件」と同一の室内が描かれています。
本品「家庭の事件」の原画はイングランドのコレクターが所蔵していた作品で、現在でもおそらく個人蔵です。美術館に行っても見られず、画集にも掲載されていない作品を見ようとすれば、しばしばアンティーク版画が唯一の媒体です。本品もそのような作品のひとつです。
《額装について》
版画は未額装のシートとしてお買い上げいただくことも可能ですが、当店では無酸のマットと無酸の挿間紙を使用し、美術館水準の保存額装を提供しています。上の写真は額装例で、外寸
40 x 31センチメートルの木製額に、赤色ヴェルヴェットを張った無酸マットを使用しています。この額装の価格は 24,800円です。
額の色やデザインを変更したり、マットを替えたりすることも可能です。無酸マットに張るヴェルヴェットは赤や青、ベージュ等に変更できますし、ヴェルヴェットを張らずに白や各色の無酸カラー・マットを使うこともできます。
版画を初めて購入される方のために、版画が有する価値を解説いたしました。このリンクをクリックしてお読みください。