J. フォンタナ作 「幼子イエスをヨハネに示すマリア」 執り成し手なる聖母と、跪くフランス 大型の名品 32.5 x 27.5 x 7.2 cm

L'offrande de l'amour à l'Enfant Jésus par J. Fontana


彫刻のサイズ 縦 23 x 横 20 cm  最大の厚さ 5 cm

額縁とガラスを含む全体のサイズ 縦 32.5 x 横 27.5 cm  最大の厚さ 7.2 cm


フランス  1860 - 80年代頃



 若き母マリアが幼子イエスを幼いヨハネに示し、幼いヨハネがイエスを礼拝する場面を、石膏または漆喰の彫刻で表した作品。19世紀後半のフランスで活躍した彫刻家フォンタナ (J. Fontana) の作品です。





 この作品において、イエスは一歳くらいの幼児として表されています。ヨハネはマリアの親類エリザベトの息子で、「ルカによる福音書」 1章 26節によると、イエスよりも六か月年長です。ヨハネはいかにも荒れ野に住む預言者らしく、ラクダの毛衣を着ています。本品のヨハネは二歳くらいの幼児ですが、それにもかかわらずラクダの毛衣を身に纏っているのは、「マタイによる福音書」 3章 4節等に基づいて、ラクダの毛衣が洗礼者ヨハネのアトリビュートとされるからです。「アトリビュート」(英 attribute) とは、図像の聖人が誰であるかを判別する手掛かりとなる容姿、身なり、持ち物のことです。

 すやすやと眠るイエスの足元には南国風の植物が、背景には崩れた建物が造形されています。19世紀後半には新約聖書をテーマに多数のオリエンタリズム絵画が描かれました。本品の背景に見える廃墟も、考古学やオリエントに対する関心が、19世紀に高まったことを反映しています。





 本品の舞台が暖かな野外であること、イエスの年齢が一歳くらいであることを考えると、本品はエジプトへの逃避のイメージと重なります。

 美術作品の画面構成は、外典を典拠にする場合や、外典を直接的な典拠にしないまでも、外典から少なからざる影響を受ける場合が多くあります。新約外典「セラピオンによる洗礼者ヨハネ伝」によると、洗礼者ヨハネとその母エリザベトは、ヘロデ大王による幼子の虐殺を逃れるために、パレスチナの荒れ野で暮らしました。ヘロデ大王が死んだ日、エリザベトもまた亡くなり、七歳半のヨハネは荒れ野に一人残されて、母の遺体のそばで泣いていました。エジプトにいながらにしてそのことを知ったイエスは、母マリア、マリアの姉妹サロメとともに輝く雲に乗ってパレスチナの荒れ野に向かい、ヨハネを慰めるとともに、ミカエルとガブリエルに命じてエリザベトを埋葬させました。

 本品はイエスとヨハネをごく幼い姿に描いているうえ、情景描写も「セラピオンによる洗礼者ヨハネ伝」の該当箇所を反映してはいません。それゆえこの彫刻作品は外典に直接的に依拠したものではありませんが、イエスとヨハネを幼いときに出会わせている点で、やはり外典の影響を受けた美術史のコンテクストに位置づけられる作例といえます。





 本品のマリアは天の元后(女王)として戴冠し、堂々とした姿で表されています。マリアは左手をヨハネの背に添え、右腕を伸ばしてイエスを示しています。ヨハネは跪き、この世に生まれ給うた救世主を礼拝しています。





 洗礼者ヨハネはメシア(救い主、キリスト)の到来を告げ知らせる預言者ですが、救いを待ち望む全人類のうちのひとりでもあります。受胎告知の後、マリアはヨハネの母エリザベトをユダエア属州(ユダヤ属州)の山里アイン・カリムに訪ねましたが、マリアがエリザベトに挨拶すると、エリザベトの胎内にいたヨハネは喜んでおどりました。この作品においても、ヨハネの表情には混じり気の無い喜びが溢れています。




(上) フォンタナとボーセルによる「受胎告知」 額全体のサイズ 25.5 x 22 cm 当店の商品です。


 ヨハネの背後、彫刻の背景の縁に近いところに、彫刻家フォンタナのサイン (J. Fontana) が彫られています。フォンタナは 19世紀半ばから後半のフランスで活躍した人で、美しい「受胎告知」の彫刻も手掛けています。フォンタナによる「受胎告知」の画像を上に示しました。





 本品の浮き彫り彫刻は、優れた写実性、立体性、大きなサイズが相俟って、聖母子と幼いヨハネをあたかも眼前に見るかのような臨場感を感じさせます。人物像はすべて人体の正しい比例に基づいて彫刻されています。マリアとヨハネは楕円形画面の右側に彫刻されていますが、マリアにいくぶん前かがみの姿勢を執らせ、頭部を画面の中心線上に配置することにより、鑑賞者の視線が彫刻の右側にのみ向かないように考えられています。鑑賞者の視線はマリアの美しい顔に惹きつけられた後、マリアの右腕に沿って動き、イエスに到達します。あるいはマリアの顔から左腕を経由してヨハネに移り、ヨハネの視線に導かれて、やはりイエスに到達します。

 フォンタナによるこの彫刻は、神の経綸(けいりん 救世の計画)に参画する三者、すなわち第一に「救い主イエス」、第二に救い主の母として特別な地位にある「聖母マリア」、第三に救われるべき人間の代表である「洗礼者ヨハネ」を表しています。三者のうち最も重要なのが、視線の到達点である幼子イエスであることは確かです。しかしながらこの作品において、フォンタナは幼子イエスを無防備に眠らせ、マリアとヨハネがイエスを優しく見守る構図を採用しています。すなわち本品は、神が人間を愛する愛、イエスから人間へと向かう愛よりも、むしろ人間がイエスを愛する愛を表しているのです。

 本品の制作年代である 19世紀後半のフランスは、「悔悛のガリア」の時代でした。この時代のフランス人たちは、イエスに対して限りない愛と感謝を捧げようとしました。社会思想史の文脈で本品を読み解くと、執り成し手なる聖母に手を添えられ、イエスを礼拝する洗礼者ヨハネは、粗衣を着て跪く悔悛のガリア、フランス自身の姿に他なりません。「人間に対するイエスの愛」よりも、むしろ「イエスを愛する人間の愛」を表現する本品は、表現様式のみならずその内容においても、「19世紀後半のフランス」という時代と場所に、いかにもふさわしい作例となっています。





 この群像は19世紀フランスに特有のフレームに額装されています。黒く塗った幅広の枠は木製で、長い年月が経過するうちに木材が乾燥し、下部に亀裂が入っていましたので、補修を行いました。ドーム状ガラスは19世紀のオリジナルで、今日に至るまで一度も割れずに彫刻を保護し続けています。

 石膏あるいは漆喰で作られた19世紀フランスの聖像彫刻にはさまざまな水準のものがありますが、本品は限りなく芸術品に近づいた最高水準の作例です。保存状態も極めて良好で、第二帝政期から第三共和政期にかけてフランスの人々が抱いた信仰心を形象化し、現代に伝える美しいアンティーク品となっています。





178,000円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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