石膏彫刻 「悲しみの聖母」 イエスと一体化した汚れ無き御心 185 x 153 x 65 mm アグヌス・デイ、スカプラリオ、ロザリオによるルリケール


彫刻のサイズ 縦 185 x 横 153 mm  最大の厚さ 65 mm

ルリケール全体のサイズ 縦 342 x 横 281 mm  奥行 80 mm


フランス  19世紀半ばから後半



 19世紀半ばから後半にかけてのフランスで制作された彫刻、「マーテル・ドローローサ」(MATER DOLOROSA ラテン語で「悲しみの聖母」)。聖母像はアグヌス・デイ、スカプラリオ、ロザリオとともにルリケールを構成します。





 聖母像の素材は石膏で、大人が指を伸ばして手を開いたぐらいの大きさ、縦 185ミリメートル、横 153ミリメートルの楕円形に収まる高浮き彫りで、65ミリメートルの厚みがあります。聖母は縁飾りの無い悲しみのヴェールを被り、顔をやや下に向けて、神への愛と信仰ゆえに悲しみに耐えています。聖母の胸には「聖母の聖心」、あるいは「汚れなき御心」(le Cœur immaculé de Marie) が、神とイエスへの強い愛ゆえに、光を放って燃えています。聖母の聖心は悲しみの剣で刺し貫かれています。





 この浮き彫り作品で異例なのは、茨の冠が聖母の聖心を取り巻いていることです。

 聖母の聖心は、光を放ちつつ燃える心臓が、悲しみの剣で刺し貫かれている図像で表されます。キリストの聖心は茨に囲まれていますが、ちょうどそれと同じように、聖母の聖心は薔薇の花環(ロサーリウム、ロザリオ)に囲まれます。下の写真は 19世紀後半のカニヴェです。左のカニヴェは 1860年の日付が書き込まれており、聖画はアルブミン・プリントによります。右のカニヴェもほぼ同時代のもので、聖画はグラヴュールによります。いずれの聖画においても、聖母の胸には聖心(汚れなき御心)が輝いており、聖心は薔薇の花環に取り巻かれています。





 聖母の聖心は、剣に刺し貫かれているのみで何にも取り巻かれていない場合もあります。しかしながら聖母の聖心が何かに取り巻かれている場合、取り巻くのは常に薔薇の花環です。本品の彫刻において、聖母の聖心が茨に取り巻かれているのは、私(広川)がこれまで目にした唯一の作例です。

 本品の聖母の聖心は、茨に取り巻かれることにより、イエスの聖心と一体化しています。聖母とイエスの聖心を一体化し融合させた表現は、イエスの受難を悲しむ聖母の愛の強さを表すと同時に、イエスが罪びとを愛し給う如くに聖母もまた罪びとを愛し給うことを表します。神は人知を絶する愛により、イエスの受難という考え難い方法を通して救世を成し遂げ給いました。炎を噴き上げて燃えるかの如くに烈しい神の愛は、イエスの受難において現れたのです。アルマ・クリスティのひとつである茨の冠は、それゆえ、罪びとを愛し給う神の愛の象徴に他なりません。したがって聖母の御心を茨の冠が取り囲む表現は、罪びとを愛して神の前に執り成し給う聖母の愛を表しているのです。

 一方、聖母の御心を取り巻く茨は、人間の罪をも表しています。聖母ご自身は罪を持たない「無原罪の御宿り」であるにもかかわらず、聖母の御心は茨の棘に傷ついています。棘に傷つかずに咲いたロサ・ミスティカ、神秘の薔薇である聖母の心を傷つけ悲しませたのは、人々の罪に他なりません。それゆえこの作品の彫刻家は、茨に傷つき悲しむ聖母の姿を表すことにより、この作品を見る人々に悔悛を促しているのです。聖母の御心を苦しめる茨の棘は、聖母像を見る者自身の罪に他ならないからです。





 イエスの聖心(あるいは、聖心を示すイエス)を一方の面に、聖母の汚れなき御心(あるいは、汚れなき御心を示す聖母)をもう一方の面に、それぞれ表現した聖画やメダイは、稀少ながらも目にすることがあります。これらの作例は、二つの聖心を聖画やメダイの表裏に重ね合わせつつも、それぞれを別個のものとして表現しています。これに対して本品の彫刻に表された「茨に囲まれたマリアの聖心」は、ひとつの聖心が両方の図像的特徴を備えています。イエスの聖心と聖母の御心を融合させて、二つの聖心の一体性を究極まで推し進めた本品の彫刻は、「イエスを愛する聖母の愛」を強調するとともに、イエスと一体化して「罪びとを愛する聖母の愛」を強調し、さらに「イエスと聖母を苦しめ悲しませた罪びとに強く悔悛を促す」表現となっています。この彫刻が有する最後の特性は、本品が19世紀後半、「悔悛のガリア」時代のフランスで制作された作品であることに深く関係します。





 本品を保護するため、専門の額装職人に依頼して箱を制作し、聖母像と共にアグヌス・デイ茶色のスカプラリオ、シャプレ(ロザリオ)を封入して、ルリケールとしました。本品に封入されたアグヌス・デイ、茶色のスカプラリオ、シャプレは、聖母像と同様に、いずれもフランスのアンティーク品です。箱の前面はガラスで、箱のサイズは縦 34センチメートル、横 28センチメートル、奥行 8センチメートルです。箱の内側には落ち着いた赤のヴェルヴェットを張りました。赤は愛を象徴する色であり、聖母の衣の色でもあります。





 本品の聖母像は百数十年前のフランスで制作された真正のアンティーク美術品ですが、古い年代にもかかわらず、非常に良好な保存状態です。ルリケールの背面は開閉可能ですので、ご自身やご家族の記念物を納めて飾ることができます。





本体価格 148,000円 販売終了 SOLD

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