フォンタナ及びボーセル作 「受胎告知」 フランス第二帝政期から第三共和政初期頃の彫刻 25.5 x 22 cm


額全体のサイズ 25.5 x 22 cm

フランス  1860 - 80年代頃



 若きマリアに聖霊が臨み、天使ガブリエルが受胎を告知する場面を、石膏または漆喰の彫刻で表した群像。バロック様式による作品で、二人の彫刻家、「フォンタナ」(Fontana)、「ボーセル」(Bausselle) の署名が刻まれています。


 古来多くの美術作品のテーマとなった「受胎告知」は、「ルカによる福音書」に典拠を求めることができます。「ルカによる福音書」1章26節から38節には次のように書かれています。

 六か月目に、天使ガブリエルは、ナザレというガリラヤの町に神から遣わされた。ダビデ家のヨセフという人のいいなずけであるおとめのところに遣わされたのである。そのおとめの名はマリアといった。
 天使は、彼女のところに来て言った。「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる。」マリアはこの言葉に戸惑い、いったいこの挨拶は何のことかと考え込んだ。すると、天使は言った。「マリア、恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。あなたは身ごもって男の子を産むが、その子をイエスと名付けなさい。その子は偉大な人になり、いと高き方の子と言われる。神である主は、彼に父ダビデの王座をくださる。彼は永遠にヤコブの家を治め、その支配は終わることがない。」
 マリアは天使に言った。「どうして、そのようなことがありえましょうか。わたしは男の人を知りませんのに。」天使は答えた。「聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを包む。だから、生まれる子は聖なる者、神の子と呼ばれる。あなたの親類のエリサベトも、年をとっているが、男の子を身ごもっている。不妊の女と言われていたのに、もう六か月になっている。神にできないことは何一つない。」
 マリアは言った。「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように。」そこで、天使は去って行った。




 本品の彫刻において、書見台の前に跪いたマリアは胸に手を当てて祈りの姿勢を執り、魂の深奥で神と対話しています。マリアと向かい合うガブリエルは右手で天を指さし、自分が神から遣わされた者であることを示しています。マリアの頭上には鳩の形の聖霊が臨み、眩い光でマリアを包み貫いています。





 書見台に開かれている本は旧約の預言書で、乙女が救い主を生むことにより、旧約の前表が成就されることを表しています。クレルヴォーの聖ベルナール (St. Bernard de Clairvaux, 1090 - 1153) は、マリアが受胎告知の際に「イザヤ書」7章14節を読んでいたと考えています。「イザヤ書」7章14節には次のように書かれています。

  それゆえ、わたしの主が御自ら/あなたたちにしるしを与えられる。見よ、おとめが身ごもって、男の子を産み/その名をインマヌエルと呼ぶ。(新共同訳)





 ガブリエルの左手には三輪の白百合が見えます。白百合は「純潔」、「神に選ばれた身分」「神の摂理に信頼する無条件の信仰」を表します。この作品でガブリエルが持つ百合は、「三輪」という数によって、神に選ばれて受胎告知を受け容れた処女マリアにこそ最もふさわしいこれらの属性を表すとともに、写実的な百合と等価なアトリビュートとして聖母と共にしばしば描かれるフルール・ド・リスの象徴的意味、すなわち「力」と「智慧」と「愛」、及びこれらの徳性に対応する「父」「子」「聖霊」の三位一体をも表しています。





 聖霊から発する光は神の力の象徴です。神の力、神の智慧、神の愛は不可分にして一体であり、これらを象徴的に表すために光の描写が用いられます。ヘブル語において、「光」と「角」(神の力の象徴)は同じ言葉で表されます。また光は「智慧」の象徴でもありますが、「箴言」8章から9章においてイエズスは「智慧」そのものとして表される故に、光に貫かれるマリアの描写は、「光」すなわち「智慧」を身ごもる「智慧の座」(SEDES SAPIENTIAE) としての聖母を描いたものと言えます。さらに「愛」は眩い光を発する炎として表される故に、マリアを包む光は「神の愛」の表現に他なりません。





 本品の浮き彫り彫刻は、優れた写実性、立体性、大きなサイズが相俟って、あたかも受胎告知の現場に居合わせるかのような臨場感を感じさせます。マリアとガブリエルから上空に遊ぶプッティまで、人物像はすべて人体の正しい比例に基づいて美しく彫刻され、画面全体の均衡もよく考えられています。衣の襞や雲、鳩、書見台等の細部も見事な仕上がりです。ガブリエルの姿勢や劇的な光の表現、プッティが遊ぶ画面構成は、16世紀のバロック絵画、たとえばティントレット (il Tintoretto, 1519 - 94) やパオロ・ヴェロネーゼ (Paolo Veronese, 1528 - 88)、ルドヴィーコ・カラッチ (Ludovico Caracci, 1555 - 1619) らのダイナミックな「受胎告知」を髣髴させますが、内省的なマリアの姿勢は19世紀に制作された本品にふさわしく、現代人の審美眼にも好ましく映ります。







 彫刻の縁に近い2時方向と6時方向に、「フォンタナ」(Fontana) と「ボーセル」(Bausselle) の名前が刻まれています。フォンタナの名前は4時半方向にも黒インクで記されていますが、インクは経年により烏賊墨(セピア)色に変色しています。6時付近の彫刻に亀裂が認められますが、この亀裂は表面的なもので、彫刻の耐久性に問題はありません。







 この群像は19世紀フランスに特有のフレームに額装されています。黒く塗った幅広の枠は木製で、長い年月が経過するうちに木材が乾燥し、下部に亀裂が入っていましたので、補修を行いました。ドーム状ガラスは19世紀のオリジナルで、今日に至るまで一度も割れずに彫刻を保護し続けています。





 石膏あるいは漆喰で作られた19世紀フランスの聖像彫刻にはさまざまな水準のものがありますが、本品は限りなく芸術品に近づいた最高水準の作例です。保存状態も極めて良好で、第二帝政期から第三共和政期にかけてフランスの人々が抱いた信仰心を形象化し、現代に伝える美しいアンティーク品となっています。





168,000円

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