聖心を示すイエス・キリスト 手描アグヌス・デイ、ウジェーヌ・アンドレ・ウディネ作メダイユ、主の五つの御傷のシャプレによるルリケール 34 x 28 cm 奥行 97 mm


彫刻のサイズ 縦 185 x 横 153 mm  最大の厚さ 72 mm

ルリケール全体のサイズ 縦 342 x 横 281 mm  奥行 97 mm


フランス  19世紀半ばから後半



 19世紀半ばから後半にかけてのフランスで制作された彫刻、「聖心を示すキリスト」。キリスト像は手描きのアグヌス・デイ、ウジェーヌ・アンドレ・ウディネによるメダイユ、主の五つの御傷のシャプレとともにルリケールを構成します。





 キリスト像は大人が指を伸ばして手を開いたぐらいの大きさ、縦 185ミリメートル、横 153ミリメートルの楕円形に収まる高浮き彫りで、72ミリメートルの厚みがあります。穏やかな慈愛の表情で罪びとに視線を注ぐイエスは、左手で衣を開き、右手で胸の聖心を指さしています。上部に十字架を突き立てられ、茨の冠に取り巻かれたイエスの聖心は、人知を絶する激しい愛ゆえに炎を噴き上げ、眩い光を放って愛に燃えています。





 聖心は神の愛の象徴であり、神の愛は価値なき罪びとに向かう「アガペー」(希 ἀγάπη)です。その強さの実感に少しでも近づくための説明として、「あなたが一生のうちに人や物事を好きだと思う気持ちをすべて足し合わせて、ある一瞬に凝縮してみなさい。それよりもはるかに強いのが、神の愛です」という譬えを聞いたことがあります。神はご自身を裏切り続ける罪びとにその愛を向けられ、独り子を十字架に架け給いました。イエスが十字架に架かり給うたとき、ローマ兵たちはくじを引いてイエスの衣を分けていましたが、イエスは「父よ、彼らをお赦しください。自分が何をしているのか知らないのです」と祈り給いました(「ルカによる福音書」 23章34節)。本品においても、イエスは慈愛に満ちた表情で聖心を示しつつ、彫刻を観る者に語りかけておられます。





 彫刻は石膏製で、極めて立体的に作られています。作品を保護するため、専門の額装職人に依頼して箱を制作し、キリスト像と共にアグヌス・デイ、ウジェーヌ・アンドレ・ウディネによるメダイユ、主の五つの御傷のシャプレを封入して、ルリケールとしました。本品に封入されたアグヌス・デイ、メダイユ、シャプレは、キリスト像と同様に、いずれもフランスのアンティーク品です。箱の前面はガラスで、箱の概寸は縦 34センチメートル、横 28センチメートル、奥行 10センチメートルです。箱の内側には落ち着いた赤のヴェルヴェットを張りました。赤は愛を象徴する色です。わずかに紫色がかった本品の赤(カーミンあるいはクリムゾン)はイエスが十字架に付けられる前に着せられた外套の色(「マタイによる福音書」27章29節)でもあります。アントウェルペン司教座聖堂翼廊の三翼祭壇画において、ルーベンスはイエスの体を受け止めるヨハネにこの色の衣を着せ、イエスを受け容れる信仰を形象化しています。ルリケールの箱はイエスを受け容れるキリスト者の心であり、その中心にイエスの聖心を置くことで、心が神と隣人への愛に満たされることを願っています。





 本品に封入したアグヌス・デイは修道女が手作りしたものです。イエスの聖心から血が滴り、地上に薔薇を咲かせています。薔薇は愛の象徴です。フランス語の祈りが記されています。

  Cœur de Jésus, bénissez-nous.  イエスの聖心よ、我らを祝福したまえ。

 祈りを記した黒いインクはセーピア(烏賊墨)の色に褪色しています。





 主の五つの御傷のシャプレ「悔悛のガリア」時代のフランスで使われたもので、小さなビーズで栄唱を唱え、メダイの部分で七つの悲しみの聖母のために天使祝詞を唱えます。本品は19世紀のフランスで制作されたシャプレで、ビーズはおそらくボワ・デュルシ製です。環状部分のメダイ一枚が欠損しています。上の写真は最初のメダイで、聖母に執り成しを願うラテン語の祈りが刻まれています。

  MATER DOLOROSA, ORA PRO NOBIS.  マーテル・ドローロサ(悲しみの聖母)、我らのために祈りたまえ。







 ルリケールの右下に嵌め込んだ大型メダイユは、フランスのメダイユ彫刻史において最も偉大な彫刻家のひとり、ウジェーヌ・アンドレ・ウディネ (Eugene André Oudiné, 1810 - 1887) による作品です。このメダイユは直径 69ミリメートル、厚さ 6ミリメートル、重量 137グラムというたいへん立派なサイズで、手に取るとずしりとした重みを感じます。 メダイユが永久的に良好な状態で保存できるように配慮して、ルリケールへの固定には樹脂製の支持体を使用しています。メダイユの意匠に関する詳しい説明を読むには、このリンクをクリックしてください。

 メダイユにはマリー=アントワネット・フォーレ (Marie-Antoinette Faure) という女の子の名前と、洗礼の日付(1851年10月28日)、及び初聖体の日付(1862年6月15日)が刻まれています。「十月」(octobre) を "8bre" と表記しているのは、古代ローマの暦において、この月が本来第八の月 (OCTOBER MENSIS) であったからです。"OCTO" はラテン語で「八」を表します。古代ローマで最初に使われたロムルス暦では、一年のうち日付があるのは三月(MARTIUS マルスの月)から十二月(DECEMBER 第十の月)までの十か月、304日で、後代の一月と二月に当たる61日には日付がありませんでした。フランス語や英語において、九月以降の月名は本来の意味よりも二か月分後ろにずれていますが、これは暦の最初に一月と二月が加わったためです。





 本品は百数十年前のフランスで制作された真正のアンティーク美術品ですが、古い年代にもかかわらず、保存状態は良好です。イエス像の突出部分二か所に欠損がありましたので、当店にて補修を行いました。ルリケールの背面は開閉可能ですので、ご自身やご家族の記念物を納めて飾ることができます。





148,000円

電話 (078-855-2502) またはメールにてご注文くださいませ。




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