ロレーヌ十字と並んでフランスの愛国心の象徴といえるポンマンの聖母の十字架を採用した稀少なロザリオ。センター・メダルの環のひとつにホールマークを確認することができ、クルシフィクス、センター・メダルとも銀製と思われます。ビーズは青いクリスタル(ガラス)製で、通常の使用に伴う小瑕(きず)はありますが、良好なコンディションです。
このロザリオは 1871年にフランス北西部、ペイ・ド・ラ・ロワール地域圏の小村ポンマンに出現した聖母のロザリオで、二本の横木がある特徴的な十字架も、ポンマンの聖母が手にしていたものです。このロザリオのクルシフィクスには、裏面にフランス語で次のように刻まれています。
APPARITION DE LA SAINTE VIERGE A PONT-MAIN, 17, JANVIER, 1871 1871年1月17日 ポンマンにおける聖母の出現
センター・メダルは直径 13.0 mm (突出部分を除く)の円形で、磨耗も少なく良いコンディションです。表(おもて)面に聖母子、裏面に天使を浮き彫りにし、両面にメダイ彫刻家のサイン
M.E. あるいは M. F. が刻まれています。両面とも質感にすぐれた精緻な作品で、これだけでも独立の工芸品としての価値があります。
聖母の光輪にはラテン語で「神の恩寵の聖母」(MATER DIVINAE GRATIAE) と刻まれています。これはルカによる福音書 1:26
- 38 の受胎告知の場面で、ナザレに遣わされた天使ガブリエルがマリアに言った言葉、「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる。」(AVE
GRATIA PLENA. DOMINUS TECUM) によります。したがってセンター・メダル裏面の天使はガブリエルでしょう。また聖母子の背景に見えるのは、あらゆる恵みをもたらす聖母の象徴、生命の樹ではないでしょうか。