フランボワーズ色の金赤ガラス 「マリアの庇護の下に、イエスの愛に留まりなさい」 透かし細工の美麗シャプレ 全長 44センチメートル


全長 44 cm

クルシフィクスを下にしてロザリオを吊り下げたときの、ロザリオ上端からセンター・メダル上端までの長さ  39 cm


ビーズの直径 約 6 ~ 7 mm

クルシフィクスのサイズ 36.2 x 22.2 mm (突出部分を含む)

重量 23.6 g


フランス  19世紀後半



 59個のビーズを有するシャプレ・ド・ラ・ヴィエルジュ(chapelet de la Vierge 聖母のロザリオ)。19世紀のフランスで制作されたもので、華やかなフランボワーズ(木苺、ラズベリー)色の金赤ガラスを使っています。





 クルシフィクスは銀色の金属製クロスに別作のコルプス(キリストの小像)を鑞付け(ろうづけ 溶接)しています。十字架交差部に彫られた後光はカドリロブ(quadrilobe 四つ葉)を模(かたど)り、四方に伸びる蔓(つる)状装飾の先端はロブ(lobe 三つ葉)になっています。縦木と横木の先端は透かし彫りの唐草(アカンサス)模様となっています。

 クロスの裏面は表(おもて)面と同一の意匠です。こちらの面にはコルプスが取り付けられていないために、浮き彫りによる文様がよく見えます。縦木の中ほどに葡萄が実っているので、クロスの表裏に彫られた蔓草状の植物は葡萄であることがわかります。





 葡萄酒の原料である葡萄は、ミサのたびに受難し給うイエス・キリストの象徴です。旧約聖書において、葡萄はメシアの到来、神の平和を象徴する樹木です。新約聖書では、「ヨハネによる福音書」 15章 1 - 10節において、イエスは弟子たちに対して語り給うた「葡萄の木」のたとえ話が有名です。新共同訳により、該当箇所を引用します。

 「わたしはまことのぶどうの木、わたしの父は農夫である。わたしにつながっていながら、実を結ばない枝はみな、父が取り除かれる。しかし、実を結ぶものはみな、いよいよ豊かに実を結ぶように手入れをなさる。わたしの話した言葉によって、あなたがたは既に清くなっている。わたしにつながっていなさい。わたしもあなたがたにつながっている。ぶどうの枝が、木につながっていなければ、自分では実を結ぶことができないように、あなたがたも、わたしにつながっていなければ、実を結ぶことができない。わたしはぶどうの木、あなたがたはその枝である。人がわたしにつながっており、わたしもその人につながっていれば、その人は豊かに実を結ぶ。わたしを離れては、あなたがたは何もできないからである。わたしにつながっていない人がいれば、枝のように外に投げ捨てられて枯れる。そして、集められ、火に投げ入れられて焼かれてしまう。あなたがたがわたしにつながっており、わたしの言葉があなたがたの内にいつもあるならば、望むものを何でも願いなさい。そうすればかなえられる。あなたがたが豊かに実を結び、わたしの弟子となるなら、それによって、わたしの父は栄光をお受けになる。父がわたしを愛されたように、わたしもあなたがたを愛してきた。わたしの愛にとどまりなさい。わたしが父の掟を守り、その愛にとどまっているように、あなたがたも、わたしの掟を守るなら、わたしの愛にとどまっていることになる。 (「ヨハネによる福音書」 15章 1 - 10節 新共同訳)

 15章 9節の後半にある「わたしの愛にとどまりなさい」(μείνατε ἐν τῇ ἀγάπῃ τῇ ἐμῇ. ) という言葉は、「わたし(イエス)を常に愛しなさい」という意味にも、「私の愛を受けるにふさわしい者であり続けなさい」という意味にも取れますが、いずれにせよ、このたとえ話でイエスは「わたしの愛にとどまりなさい」と命じて、キリスト者がキリストに倣い、キリストに一致することの必要性を語っておられます。





 フランス語で「クール」(cœur 心臓、ハート)と呼ばれるセンター・メダルは、透かし彫りの唐草模様により、マリアのモノグラム(組み合わせ文字)である "AM" を模(かたど)っています。"AM" は「アウスピケ・マリアエ」(AUSPICE MARIAE ラテン語で「マリアの庇護の下(もと)に」の意)を表します。クルシフィクスとクールが伝えるメッセージを合わせると、「マリアの庇護の下に、イエスの愛に留まりなさい」という意味になります。





 ビーズは直径およそ6ないし7ミリメートルで、多数のファセットを有し、「主の祈り」のビーズ両端には金属製のキャップを被せてあります。ビーズは融解したガラスを型に流して制作し、鋳型の接合部分に生じるバリ(余計な突出)を手作業で磨き落としています。特筆すべき破損や欠損はいっさい無く、どのビーズもキラキラと美しく輝いています。

 19世紀に制作されたフランス製シャプレ(ロザリオ)のガラスビーズに多い色は、赤、白、紫、無色で、稀に緑があります。しかしながら本品のような色はたいへん珍しく、筆者(広川)は初めて目にしました。本品のガラスは真っ赤ではなくわずかに青味がかり、フランボワーズ(木苺、ラズベリー)あるいはスリーズ(さくらんぼ)のような、華やかでありながらも上品な色をしています。

 本品のビーズを当店の分光器で検査したところ、510ナノメートルから560ナノメートル付近の周波数帯にバンド(吸収帯)を検出しました。これは本品のビーズが、よく見られるセレン(Se)ではなく、金(きん Au)のコロイドにより着色されていることを示します。このように金で赤く発色したガラスを「金赤(きんあか)ガラス」と呼びます。現代の赤色ガラスはセレンまたは銅で発色させていますが、アンティーク品の時代にはこのように贅沢な「金赤ガラス」が作られていました。





 本品は百数十年前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、古い品物であるにもかかわらず、きわめて良好な保存状態です。特筆すべき問題は何もありません。19世紀の古き良き時代、わが国で言えば神戸や横浜が開港した頃から、ベルエポック期、アール・ヌーヴォー期の頃に、フランス人女性が大切に身に着けた美しい品物です。





本体価格 32,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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