稀少品 真正の銀線細工によるクールとクルシフィクス 真珠母製ビーズ スペインのアンティーク・ロザリオ


ロザリオを吊り下げたときのセンター・メダル上端までの長さ 30 cm

ロザリオの全長 49.5 cm

クルシフィクスのサイズ 61 x 41 mm   最大の厚み 8 mm

クールのサイズ 30 x 30 mm   最大の厚み 4 mm

(以上、いずれも概寸)



 19世紀の銀線細工による聖母のシャプレ(ロザリオ)。このような銀線細工はバイエルンのものが有名ですが、イタリアやスペイン、フランスにも分布しています。本品はスペインの作例です。





 主の祈りのビーズと天使祝詞のビーズの間に挿入されたスペイサー、及びクール(センター・メダル)、及びクロス(クルシフィクスの十字架部分)は、以下の方法で制作されています。


【スペイサーの作り方】

1. 銀の板を、両端に環がある六弁の花形に打ち抜く。六枚の花弁のそれぞれも、内部を涙滴形に打ち抜く。

2. 髪の毛ほどの細さの銀線を捩って、ミル打ち状のパターンを付ける。

3. 2.の銀線を小さく巻き、1.で打ち抜いた花弁形の窓に嵌め込んで鑞付け(ろうづけ 溶接)する。

4. 差し渡し2ミリメートルほどの花形の部品を、スペイサーの両面中央に鑞付けして、銀線の脱落を防止する。


【クールの作り方】

1. 太い針金で作った枠の中に、捩じった針金による渦巻き文様の飾りを嵌め込み、六枚の大きなパーツを作る。

2. 1.のパーツのうち、クールの中心、両横、下部となる四枚を同一平面上に配置して鑞付けし、スペイサーの中央部に使用したものと同様の花形の部品で数か所を補強する。三個の環も取り付ける。

3. 残り二枚のパーツを、クール上部を表裏から挟み込むように、膨らみを持たせて鑞付けする。





【クロスの作り方】

1. 太い銀線を強く蛇行した川のように曲げて、押し潰したバネのようにする。これを焼いて鍛造し、透かしのある板状の部材とする。

2. 細い銀線を捩じったものをS字状に巻き、1.でできた板の透かし部分に、スペイサーやクールの場合と同じ要領で嵌め込む。

3. 1.から.2.の要領で、長い部材を二枚、短い部材を六枚制作する。

4. 3.で作った八枚の部材を、円筒を縦に二分した形に曲げる。

4. 長さが合う部材どうしを一組として組み合わせ、鑞付けして円筒とする。こうして短い円筒が三組、長い円筒が一組できる。

5. 4.でできた四本の円筒形部材を組み合わせて鑞付けし、十字架を作る。

6. 太い銀線の枠に、細い銀線を捩ったものを巻いて嵌め込み、扇形の部材を四枚作る。次にこの四枚を十字架の交差部に鑞付けする。これはキリストの後光を表すとともに、十字架の補強にもなる。

7. 太い銀線の枠に、細い銀線を捩ったものを巻いて嵌め込み、四弁の花形の部材を五枚作る。スペイサーの中央部に使用したものと同様の花形の部品を、これらの部品の中央に鑞付けして補強する。花形の部材のうち、四枚は杯状に湾曲させたうえで十字架の末端四箇所に鑞付けして末端を閉じる。残りの一枚は十字架裏面の交差部に鑞付けし、十字架を補強する。

8. 太い銀線の枠に、細い銀線を捩ったものを巻いて嵌め込み、鰭(ひれ)状の部材を四枚作る。スペイサーの中央部に使用したものと同様の花形の部品を、これらの部品の中央に鑞付けして補強する。これらの鰭状部材四枚を、7.で塞いだ十字架末端部四箇所に鑞付けする。


 なおコルプス(キリスト像)はクロスに溶接されているのではなく、ブロンズあるいは真鍮の針金でクロスに括り付けられています。手と足の釘の傷にあたる三箇所に孔をあけて、この針金を通しています。




 ビーズは天然の真珠母(しんじゅも マザー・オヴ・パール)を使用しています。完全な手作りであるために形がいびつで、サイズにもばらつきがあります。天使祝詞のビーズの直径は6ないし7ミリメートルほど、主の祈りのビーズの直径は8ミリメートルほどです。

 主の祈りのビーズは、花の形のスペイサーによって天使祝詞のビーズから隔てられています。また透かし細工による花の形のキャップが、前後に取り付けられています。

 ビーズは形が少し歪(いびつ)ですが、愛情を込めて作られた物だけが有する温かみがあり、珠を爪繰りながら祈る指先に、しっくりと馴染みます。ビーズ、チェーンともすべて19世紀のオリジナルですが、非常に古いものであるにもかかわらず、美観上、実用上とも何の問題もありません。





 銀線細工のアンティーク工芸品には、真正の銀線細工と、銀線細工のように見える類似品の二通りがあります。真正の銀線細工は針金を曲げて一点ずつ制作されます。これに対して銀線細工の類似品は、板を打ち抜いたり、繊細な透かし彫り風の模様を鋳造したりしたもので、効率的な大量生産が可能です。

 本品は真正の銀線細工による工芸品であり、金銀細工師が一点ずつ手作業で制作したクロス、クール、スペイサーからできています。本品の銀線細工が本物であることは、クールを見ればいちばんよく分かります。


 真珠母からひとつひとつ手作業でカット、研磨したビーズには、生物由来の素材ならではの優しさに、手仕事の温かみが加わっています。このシャプレ(ロザリオ)を爪繰ると、救い主を遣わし、あるいは自ら救い主となって十字架に架かり給うた神の愛、「御こころ通りこの身に成りますように」と答えたマリアの神への愛、キリスト教徒の鑑(かがみ)たるマリアのイエズスへの愛、イエズスが説き給うた隣人への愛が、ひとつひとつのビーズから滲み出て、指先から心に響く思いがいたします。


 本品は十九世紀、すなわち百数十年以上前のスペインで制作された真正のアンティーク品ですが、年代の古さ、細工の繊細さにもかかわらず、特筆すべき問題の無い優れた保存状態です。本品はデザインの美しさ、これ一点の制作に投じられた労力の大きさ、仕上げの丁寧さ、稀少性、および保存状態の良好さにおいて、めったに出会えないレベルのアンティーク・ロザリオです。





95,000円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp にてご注文くださいませ。




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