最高級品 精密な銀細工と真珠母によるシャプレ・ド・ラ・ヴィエルジュ 最大サイズの美麗ロザリオ マリアの銀無垢メダイユ付 全長 58センチメートル


クルシフィクスを下にしてロザリオを吊り下げたときの、環状部分上端からセンター・メダル上端までの長さ 36 cm

ロザリオの全長 58 cm
(クルシフィクスからセンター・メダルまでの長さを、上記の長さに加えたもの)


突出部分を含むクルシフィクスのサイズ 縦 84.6 x 横 53.0 mm  コルプスを含む最大の厚さ 9.7 mm

突出部分を含むクールのサイズ 縦 20.9 x 横 14.6 mm  最大の厚さ 8.0 mm


天使祝詞の珠の直径 8 mm前後

主の祈りと栄唱の珠の直径 9 mm前後



 クロス本体、クール(センター・メダル)、ビーズを真珠母(しんじゅも マザー・オヴ・パール)で、金属部分を800シルバー(純度 800/1000の銀)で作ったシャプレ・ド・ラ・ヴィエルジュ(chapelet de la Vierge 聖母のロザリオ)。全長は 58センチメートル、クルシフィクスのサイズは縦 84ミリメートル、横 53ミリメートルに達する非常に大きな作例で、19世紀末から20世紀初頭頃にフランスで制作されたものです。すべてのパーツは手作業により丁寧に仕上げられています。

 クルシフィクスの隣には、歳若いマリアの横顔を刻んだ美しい銀製メダイが取り付けられています。



 クルシフィクスは、真珠母を削り出して円形の断面を持つクロス(十字架)を作り、先端部四箇所に銀製のキャップを被せています。「真珠母」とは真珠貝の貝殻から削り出した装飾材料のことです。写真では分かりませんが、実物は真珠貝の殻に特有の深い輝きがあって、たいへん美しい素材です。

 本品の十字架はひとつの真珠母から削り出されたもので、継ぎ目はありません。真珠母の原料である貝のサイズには限界があることに加え、貝殻は曲面であるゆえに、継ぎ目のない真珠母のサイズには自ずから限りがあります。本品は私がこれまでに目にした真珠母製十字架のなかで最も大きな部類に属する作例です。

 また数多くの作例を手に取って比較すると分かることですが、一見して同じように見える真珠母製十字架にも、作りが最高度に丁寧なもの、比較的丁寧なもの、まずまずのもの、あまり丁寧でないものと、さまざまな段階があります。本品は真珠母製十字架の作りも、銀製部品の作りも、非の打ちどころがありません。





 コルプス(キリスト)と "INRI"(Iesus Nazarenus Rex Iudaeorum ラテン語で「ユダヤ人の王、ナザレのイエス」の意)の札は、クロスに鋲留めされています。クルシフィクスのコルプスは金属の薄板を曲げて凹凸を付け、彫刻のように見せる「打ち出し細工」による場合が多いですが、本品のコルプスは手間をかけて鋳造されており、たいへん精巧で立体的です。コルプスにも "INRI" の札にも破損は無く、十字架にしっかりと鋲留めされています。鋲に緩みはありません。





 十字架の先端四か所に被せたキャップは銀製で、十字架にしっかりと接着されています。キャップのうち一つの先端部分に、フランスにおいて800シルバーを示す「蟹」のポワンソン(ホールマーク、貴金属の純度を保証する刻印)があります。同じポワンソンはメダイ上部の環にも刻印されています。コルプス、"INRI" の札、チェーンにポワンソンはありませんが、いずれもキャップ、メダイと同じ銀無垢製です。





 キャップは真珠母製十字架の先端に深い容器状の部品を被せ、透かし細工の大きな球と小球一個を鑞(ろう)付けしています。透かし細工の大きな球は、厚く鋳造した銀線細工の四つ葉形をボウル(椀)状に凹ませ、この部品四個を立体的に鑞付けして球にしています。このような部品は一回の鋳造で作ることができず、手作業で一つ一つ丁寧に制作されています。本品の銀細工は類品と比べても格段に素晴らしい出来栄えです。


 ロザリオのセンター・メダルをフランス語で「クール」(cœur フランス語で「心臓」「ハート」の意)と呼びますが、本品のクールは文字通り心臓形(ハート形)をしており、厚さ 8.0ミリメートルとたいへん立体的です。

 本品のように59個のビーズを有する五連のロザリオを「シャプレ・ド・ラ・ヴィエルジュ」(chapelet de la Vierge) と呼びます。「シャプレ・ド・ラ・ヴィエルジュ」はフランス語で「聖母の数珠(ロザリオ)」という意味で、天使祝詞を唱えるために使われます。本品のクールは神とイエズスを愛する「マリアの汚れなき御心」を象徴するとともに、マリアに倣うキリスト者の心、すなわち神とキリストと聖母への愛をも重層的に表しています。





 写真では分かりませんが、実物のクロスとクールはいずれも真珠貝特有の内部構造によって七色の干渉色(イリディセンス iridescence)を見せています。

 ビーズにも天然の真珠母が使用されています。本品のビーズは一個一個を手作業でカットし研磨した完全な手作り品で、丸みを帯びた樽形をしており、サイズと形にばらつきがあります。天使祝詞のビーズの直径は 8ミリメートルほど、栄唱と主の祈りのビーズの直径は 9ミリメートルほどです。本品は百年あるいはそれ以上前に制作されたアンティーク品ですが、非常に古いものであるにもかかわらず、十分に実用可能な状態です。ビーズに逸失や破損は無く、チェーンの強度にも問題はありません。



 古典期及びヘレニズム期のギリシア語で、「真珠」は「マルガリーテース」(μαργαρίτης 単数主格形) といいます。イエズス・キリストが語られたたとえ話にはこの「マルガリーテース」が登場します。「マタイによる福音書」13章45節から46節を、ギリシア語原文と新共同訳によって引用します。ギリシア語原文はネストレ=アーラント26版によります。


マタイ 13:45 - 46  45 Πάλιν ὁμοία ἐστὶν ἡ βασιλεία τῶν οὐρανῶν ἀνθρώπῳ ἐμπόρῳ ζητοῦντι καλοὺς μαργαρίτας: 46 εὑρὼν δὲ ἕνα πολύτιμον μαργαρίτην ἀπελθὼν πέπρακεν πάντα ὅσα εἶχεν καὶ ἠγόρασεν αὐτόν.  また、天の国は次のようにたとえられる。商人が良い真珠を探している。高価な真珠を一つ見つけると、出かけて行って持ち物をすっかり売り払い、それを買う。



 このたとえ話において、商人が全財産を売り払って一個の真珠(「マルガリーテーン」 μαργαρίτην 単数対格形)を仕入れていることから、当時の「良い真珠」一個の値段は、現在の貨幣価値に換算すれば数千万円から数億円に相当したことが分かります。現在、真珠は養殖によっていくらでも手に入りますが、古代の良い真珠は最高度の価値を有する宝物でした。アレクサンドリアのオリゲネス (Ὠριγένης, c. 184 – c. 253) は、このたとえ話の「真珠」がキリストを意味すると解釈しています(「マタイ福音書注解」 10巻9節)。





 本品は真珠母(マザー・オヴ・パール)でできていますが、真珠がイエズスであるならば、その母である真珠母はマリアに他ならず、本品はその素材によって、まさに聖母マリア自身を象徴していることになります。

 本品は59個のビーズを持つ「シャプレ・ド・ラ・ヴィエルジュ」(chapelet de la Vierge 聖母のロザリオ)で、イエズスの受胎を告知したガブリエルの言葉「アヴェ」から始まる「天使祝詞」が唱えられます。したがってマリアの象徴である真珠母は、本品のビーズにふさわしいと言えます。また十字架が真珠母でできているのは、「ピエタ」の図像と同様に、真珠母に象徴される聖母が受難のキリストをいわば抱いている姿と解釈できます。真珠母でできた十字架は、イエズスへの愛ゆえにともに受難する聖母の悲しみを表すとともに、十字架上のわが子を抱きしめる聖母の愛をも表しています。

 聖母はキリスト者の鑑(かがみ 手本)でもあります。したがって十字架に真珠母を使用したクルシフィクスは、これも「ピエタ」の図像や、ルーベンスがアントウェルペン司教座聖堂の三翼祭壇画中央パネルに描いた「十字架降架」の板絵と同様に、キリストを心に受け容れる「信仰」をも象徴的に表しています。

 19世紀のフランスでは、洗礼式や初聖体のように人生の節目となる重要な機会に、真珠母を使用した美しい「シャプレ・ド・ラ・ヴィエルジュ」(ロザリオ)が購入されました。洗礼式も初聖体もキリストを受け容れて信仰を持つ儀式であり、「キリストの受容」を象徴する真珠母製シャプレがこのような機会に入手されたことは偶然ではありません。


(下) E. カシエ作石膏彫刻 ルーベンスによる「十字架降架」 縦 405 x 横 325 x 厚み 65ミリメートル フランス 1850 - 80年代 当店の商品




 真珠母からひとつひとつ手作業でカット、研磨したビーズには、生物由来の素材ならではの優しさに、手仕事の温かみが加わり、珠を爪繰りながら祈る指先にしっくりと馴染みます。救い主を遣わし、あるいは自ら救い主となって十字架に架かり給うた神の愛、「御こころ通りこの身に成りますように」と答えたマリアの信仰と神への愛、イエズスへの母の愛が、ひとつひとつのビーズから滲み出て心に入り、自然と救い主を心に迎え入れる気持ちになります。





 本品には直径 11.9ミリメートルの銀無垢メダイが後付けされています。このメダイは20世紀初頭から 1920年代頃にかけてフランスで活躍したメダイユ彫刻家テラック (Tairac) の作品で、歳若きマリアの上半身をたいへん美しい浮き彫りで表しています。

 テラックのマリアは十四、五歳の少女の姿で、簡素な衣を身に着け、若々しく豊かな髪をヴェールで隠すこともせず、ごく自然な姿で描かれています。胸の前に手を合わせて祈りの姿勢を執っていますが、目はまっすぐに前を向き、唇に優しい微笑みを浮かべる姿は、ごく親しい人と語り合っているように見え、神に選ばれたマリアの信仰を見事に形象化しています。

 上の写真は実物の面積を百倍に拡大しています。実物のメダイにおいて、マリアの目からあごの先端までは 2.5ミリメートルしかありません。このような極小のミニアチュール彫刻において、目鼻立ちが整っているばかりか、少女の肌の若々しい肌理(きめ)、一本一本の髪、柔らかい衣の質感、ほっそりとした指と温かな手を、大型の彫刻作品に勝るとも劣らずに再現し、さらには本来不可視であるはずの感情や信仰さえもまざまざと感じさせるメダイユ彫刻家の腕前は、まさに驚嘆に値します。この小メダイの見事さはひとえに作者テラックの才能によりますが、このように優秀なメダイユ彫刻家が育つ背景には、フランスにおけるメダイユ彫刻の優れた伝統があります。





 本品は19世紀、すなわち百数十年以上前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、特筆すべき問題は一切無く、稀に見る良好な保存状態です。真珠貝特有のイリディセンスは写真に写っていませんが、肉眼では深みがある美しい輝きを見せてくれます。制作に投じられた労力の大きさ、仕上げの丁寧さ、保存状態の良好さのいずれにおいても、最高水準のアンティーク・ロザリオです。





本体価格 73,500円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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