およそ100年前のフランスで制作された「宣教のロザリオ」。五色の木製ビーズが五つの大陸を表しています。「宣教のロザリオ」は珍しい種類ですが、本品のように古い年代の物はとりわけ稀少です。
本品のクルシフィクスは、黒色の素材を象眼したラテン十字に、別作のコルプス(キリスト像)を鋲留めしています。茨の冠と一体化してキリストの頭部から発出する後光は三角形を象(かたど)り、三位一体の神から発する人智を絶した愛を象徴的に表しています。フランス語で「クール」(cœur 心臓、ハート)と呼ばれるセンター・メダルは「不思議のメダイ」(médaille miraculeuse) となっています。
カトリーヌ・ラブレが「不思議のメダイ」の聖母を幻視した愛徳姉妹会修道院はパリのバック通にありますが、その近所にはパリ外国宣教会の本部がありました。五色のビーズで五大陸を表す「宣教のロザリオ」のクールに、バック通の聖母があしらわれているのは、たいへん相応しい図柄と思われます。
(上) Charles de Coubertin (1822 - 1908), Le Départ des Missionaires, 1868
(Salon de 1869), chapelle des Missions étrangères, rue du Bac, Paris
特徴的な五色のビーズは直径約 11ミリメ-トルで、すべて揃っています。「宣教のロザリオ」はガラス製ビーズを使用したものが多いですが、本品は木製ビーズを使用し、真正のアンティーク品に相応しい落ち着いた趣(おもむき)が魅力です。
1689年、マルグリット=マリが受けた啓示において、キリストはフランス国王ルイ14世を「わが聖心の長子」(le fils aîné de mon sacré Cœur) と呼びました。これはフランスが「カトリック教会の長姉」(fille
aînée de l'Église)、すなわちカトリック教会の守護者であるということです。1864年にマルグリット=マリが列福され、その三年後に公開された聖女の第98書簡によって、上記の啓示が広く知られるようになると、フランスには「悔悛のガリア」の運動が起こりました。19世紀後半から20世紀初頭にかけてのフランス社会では、さまざまな立場や階層の人々が福音宣教のためにあるいは自ら働き、あるいは献金を捧げました。当時のフランスの精神状況は、グレゴリウス改革が行われ、使徒的生活を実践する市井の人々が現れ、托鉢修道会が誕生した11
- 12世紀頃の西ヨーロッパにも似ています。
(下) 「子供宣教会」の小聖画。左は 1869年、右は 1901年のもの。当店の商品です。
この「宣教のロザリオ」は、以上に述べたような精神状況の下(もと)、およそ百年前のフランスで制作された信心具です。古い年代に関わらず保存状態は良好で、特筆すべき問題は何もありません。わが国をはじめ世界各地で働く宣教師や修道者のための祈りにも、通常の「シャプレ・ド・ラ・ヴィエルジュ」と同様にロザリオの祈りにも、お使いいただけます。