20世紀前半にイタリアで製作された聖母のしもべ会のロザリオ。クラウン(環状の部分)は週(連)と週の間に楕円形のメダイを配し、各メダイの片面にはすべてに共通の聖母の図柄を、もう片面にはメダイごとに異なる聖母の悲しみの場面を、それぞれ浮き彫りにしています。
クルシフィクスに相当する部分のメダイには、聖母の七つの悲しみのうちでも最大の悲しみ、すなわちイエズスの受難の場面が再び取り上げられ、十字架上のイエズスと、為すすべも無く嘆く3人のマリアが浮き彫りにされています。聖母マリアは悲嘆のあまり立っていることも座っていることもできず、サロメとも呼ばれる姉妹マリアに後ろから抱きかかえられ、気を失わんばかりに嘆いています。マグダラのマリアは十字架に取りすがって泣いています。この群像を囲むように、「救いは十字架にあり」(IN
CRUCE SALUS) とラテン語で記されています。
このメダイのもう一方の面には、7本の剣で心臓を刺し貫かれた聖母の姿が立体的な浮き彫りによって表現され、ラテン語で悲しみの聖母 (MATER DOLOROSA) と書かれています。聖母の下には、イタリア (ITALY) の刻印があります。
このロザリオは数十年の祈りを吸い込んで、黒く塗られていたビーズの色は剥げ、メダイの表面も磨耗しています。単なる物としてのコンディションは良いといえませんが、実際に愛用されていたこのようなアンティーク品にこそ、私は魅力を感じます。売れなくとも構わないと思っているいとおしいロザリオです。