稀少品 免償のある十字架型護符付き 《プラハの幼子イエスの小ロザリオ》 メダイが表す位格的結合 ガラリト製ビーズによる美しい作例 全長 21.5 cm イタリア 1930年代


突出部分を含むメダイのサイズ 縦 17.7 x 横 15.3 mm

メダイの厚さ 2.4 mm


ガラリト製ビーズの長径と短径 およそ 6 x 5 mm


クーロンヌの全長 21.5 cm




 チェコ共和国の首都プラハに、跣足カルメル会に属する勝利の聖母教会があり、奇蹟の聖像として知られる幼子イエス像が安置されています。本品はこの幼子イエス像に関する数珠(クーロンヌ、ロザリオ)で、フランス語ではプチット・クーロンヌ・ド・ランファン・ジェジュ・ド・プラグ(仏 petites couronnes de l'Enfant Jésus de Prague プラハの幼子イエスの小ロザリオ)と呼ばれています。フランス語クーロンヌ(仏 couronne)の原意は冠ですが、環状の数珠(ロザリオ)をこのように呼んでいます。





 プチット・クーロンヌ・ド・ランファン・ジェジュ・ド・プラグ(プラハの幼子イエスの小ロザリオ)は、幼子のメダイに続けて三個のビーズ、次の環状部分に十二個のビーズを使います。祈り方は、メダイの部分で「聖なる幼子イエスよ、我らを祝福したまえ」(仏 Saint enfant Jésus, benissez-nous.)、または「崇むべき三位一体よ、聖なる幼子イエスの聖心を、我ら心より崇め奉る」(仏 Adorable Trinité, nous vous offrons toutes les adorations du cœur du Saint Enfant Jésus)と祈り、次の三個のビーズで主の祈りを唱え、環状部分の各ビーズにおいては「言葉は肉となりて、我らのうちに宿りたまえり」(仏 Le Verbe s'est fait chair et il a habité parmi nous.)という言葉の後で天使祝詞を唱えます。


 本品のメダイは一見したところ円形に見えますが、マルタ十字の意匠に合わせて上下左右がわずかに突出しています。メダイは銀色で、マユショル(ジャーマン・シルバー)のような変色しない合金でできています。メダイにめっきはかかっておらず、素材の変色も無いので、古色らしい古色はそれほど感じられません。しかしながら同じような直径の一般的なメダイに比べると、本品は二倍近い厚みがあり、象徴性に満ちた意匠と相俟って、たいへん重厚な雰囲気を有します。





 プチット・クーロンヌ・ド・ランファン・ジェジュ・ド・プラグ(仏 petites couronnes de l'Enfant Jésus de Prague プラハの幼子イエスの小ロザリオ)は、ビーズの数と配置は共通しつつも、メダイとビーズの材質と意匠、全体のサイズはさまざまなものがあります。本品は一般のメダイを採用せず、クロワ・ソヴガルド・デュ・サン・タンファン・ジェジュ・ド・プラーグと呼ばれる特別なメダイを取り付けています。

 クロワ・ソヴガルド・デュ・サン・タンファン・ジェジュ・ド・プラーグ(仏 croix sauvegarde du Saint Enfant Jesus de Prague)とは「プラハの聖なる幼子イエスの十字架型護符」という意味で、十九世紀末に考案されました。本品が神の恩寵の通路となる特別な品物であることは、クロワ・ソヴガルド(十字架形護符)という名称からもわかりますが、実際に本品は、考案の数年後、教皇ピウス十世(Pius X, 1835 - 1903 - 1914)から免償の特典を受けています。


 クロワ・ソヴガルド(十字架型護符)には、各国に共通するラテン語の祈りに加え、近代諸語で文言が記されます。本品にはラテン語とイタリア語が使用されています。本品の一方の面には、中央の円形部分にプラハの幼子イエスを浮き彫りにし、周囲の環状部分にラテン語で次の言葉を刻んでいます。

  JESUS  イエス

  V. R. S. (VADE RETRO SATANAS.)   悪魔よ、退け。

  A. R. T. (ADVENIAT REGNUM TUUM.)  御国の来たらんことを。

  R. S. E. (REX SUM EGO.)  我は王なり。



 「悪魔よ、退け」(VADE RETRO SATANAS.)は、エクソルキスムス(羅 EXORCISMUS 祓魔(ふつま)、悪魔祓い)の際に唱えられる祈りの一部で、聖ベネディクトゥスのメダイにも同じ言葉が刻まれています。エクソルキスムス(祓魔)の祈りのラテン語全文は次の通りです。和訳は筆者(広川)によります。

    Crux Sancta Sit Mihi Lux    聖なる十字架が我が光であるように。
     Non Draco Sit Mihi Dux    竜が我が導き手とならざるように。
     Vade Retro Satana    悪魔よ、退け。
     Numquam Suade Mihi Vana    虚しき事どもを我に説くな。
     Sunt Mala Quae Libas    悪しき事どもこそ汝が愉しみなり。
     Ipse Venena Bibas    その毒は、汝自身が飲め。


(上) 本品と同様の略語によって、エクソルキスムスの祈りが記された聖ベネディクトゥスのメダイ 直径 25.7ミリメートル 当店の商品です。





 「御国の来たらんことを」(あなたの国が到来しますように)は、主の祈りの一部です。主の祈りはイエス・キリストが弟子たちに教え給うた祈りで、「マタイによる福音書」六章九節後半から十三節、及び「ルカによる福音書」十一章二節後半から四節に記録されています。「マタイによる福音書」はキリスト教に改宗するユダヤ人に向けて、「ルカによる福音書」は異邦人(非ユダヤ教徒)に向けて書かれており、同じ出来事を記録する場合でも、二つの福音書はしばしば異なった視点に立っています。主の祈りに関しては、ユダヤ教的色彩の強い「マタイによる福音書」の方が少し長く、次のようになっています。ギリシア語原文は ドイツ聖書協会のネストレ=アーラント二十六版、日本語は新共同訳によります。

  9.    Πάτερ ἡμῶν ὁ ἐν τοῖς οὐρανοῖς, ἁγιασθήτω τὸ ὄνομά σου,    天におられるわたしたちの父よ、御名が崇められますように。
  10.    ἐλθέτω ἡ βασιλεία σου, γενηθήτω τὸ θέλημά σου, ὡς ἐν οὐρανῷ καὶ ἐπὶ γῆς.    御国が来ますように。御心が行われますように、天におけるように地の上にも。
  11.    Τὸν ἄρτον ἡμῶν τὸν ἐπιούσιον δὸς ἡμῖν σήμερον:    わたしたちに必要な糧を今日与えてください。
  12.    καὶ ἄφες ἡμῖν τὰ ὀφειλήματα ἡμῶν, ὡς καὶ ἡμεῖς ἀφήκαμεν τοῖς ὀφειλέταις ἡμῶν:    わたしたちの負い目を赦してください。わたしたちも自分に負い目のある人を赦しましたように。
  13.    καὶ μὴ εἰσενέγκῃς ἡμᾶς εἰς πειρασμόν, ἀλλὰ ῥῦσαι ἡμᾶς ἀπὸ τοῦ πονηροῦ.    わたしたちを誘惑に遭わせず、悪い者から救ってください。


 引用文末尾の「アポ・トゥー・ポネールゥ」(希 ἀπὸ τοῦ πονηροῦ)を、新共同訳は「悪い者から」と訳しています。「トゥー・ポネールゥ」を男性形「ホ・ポネーロス」(希 ὁ πονηρός 憐れむべき者)の属格と取れば、新共同訳のように訳せます。その一方でこの語を中性形「ト・ポネーロン」(希 τὸ πονηρόν 惨めなること)の属格と取ることもでき、その場合は「わたしたちを…惨めな状態から救ってください」と訳すことができます。





 「我は王なり」は、「ヨハネによる福音書」十八章三十七節から形を変えて引用した句です。同所において、イエスはピラトから「お前がユダヤ人の王なのか」と問われ、次のように答えておられます。

     ἀπεκρίθη ὁ Ἰησοῦς, Σὺ λέγεις ὅτι βασιλεύς εἰμι. (N-A 26. Auflage)    

 この箇所のギリシア語原文において、繋辞エイミ(希 εἰμι …である)は直説法に置かれています。したがって上の引用箇所を詳しく訳せば、「わたしは確かに王である。だからお前も、現にそう言っているではないか」という意味になります。ちなみにイエスのこの言葉は、ヴルガタでは次のようになっています。

     Tu dicis quia rex sum.    わたしは確かに王である。だからお前も現にそう言っているのだ。(広川訳)

 ギリシア語の接続詞ホティ(ὅτι)を、ヒエロニムスはクイア(quia)とラテン訳しています。クイアは元々「…だから」と理由を表す接続詞です。古典期以後には単に「…ということ」と動詞の目的節を導く用法が生じますが、その場合にも「理由」を表す本来の意味合いは残存していると考えられます。イエスのこの言葉を、新共同訳は「わたしが王だとは、あなたが言っていることだ」とあっさりと訳していますが、動詞エイミが直説法に置かれていることを考えても、新共同訳の訳文には「理由」のニュアンスが希薄過ぎるように思います。




(上) テトラモルフのメダイ 直径 33.2ミリメートル 当店の商品です。


 マルタ十字の扇面状のスペースには、次の言葉がイタリア語で記されています。

     Santo Bambino Gesù di Praga Benediteci.    聖なる幼子イエスは讃えられよ。


 本品メダイに独自の特徴的意匠として、マルタ十字の腕木のあいだ四か所に、テトラモルフが配されています。すなわち向かって左上に人、右上にライオン、左下に牛、右下に鷲が浮き彫りにされています。「エゼキエル書」一章と三章において、テトラモルフはケルビムの顔とされています。新約聖書において四つの生き物を同様に組み合わせた記述は、「ヨハネの黙示録」四章六節から八節に見出せます。

 ケルビムは地上における神の座であるゆえに、テトラモルフすなわちケルビムがキリストを取り巻き支える図柄は、地上に受肉し給うたイエス・キリストが神であることを示しています。キリストの周囲にテトラモルフを配した図柄は、ロマネスク聖堂やゴシック聖堂の壁面彫刻にもたびたび見られます。





 もう一方の面には、中央の円形画面に二種類のクリストグラムが刻まれています。クリストグラム(仏 christogrammes)とはキリストを象徴する記号のことで、本品にはイエースース(希 Ἰησοῦς イエス)の最初の三文字であるイオタ・エータ・シグマに十字架を組み合わせたモノグラム、及びクリストス(希 χριστός)の最初の二文字であるキー・ローを組み合わせたモノグラムが記されています。

 十字架縦木の上下に分かれて、次の言葉が架かれています。

     VERBUM CARO FACTUM EST.    言葉は肉となった。

 これは「ヨハネによる福音書」一章十四節のヴルガタ訳による引用です。ここで言う言葉(羅 VERBUM)とは、ギリシア語ロゴス(希 λόγος)の訳語です。ロゴスは動詞レゴー(希 λέγω 言う)の名詞形で、「言葉」が原意です。しかしながらこの語はギリシア哲学では「万物の理法」を指しており、ヨハネはロゴス(言葉)という語をこの意味で使っています。

 この面の十字架は、腕木の向かって左側に聖母マリア、右側に聖ヨセフが浮き彫りにされています。「言葉は肉となった」と書かれているように、本品メダイのこの面はキリストの人性を主題にしています。クリストグラムを刻んだ中央部分が円形であるのに対して、そこから放射する光が方形を為す意匠にも意味があります。無窮の図形である円が神のまします天を表す一方で、方形は地を表します。したがって中央の円から発出して方形に広がる光は、救い主の受肉により、神の愛と恩寵が世界に遍(あまね)く広がったことを表しています。


 本品メダイは一方の面で「ケルビムの座に座し給う神なるキリスト」を、もう一方の面で「人となり給うたキリスト」を表しています。一枚の金属の両面にキリストの神性と人性を表した本品メダイは、深遠な神学的概念であるウニオー・ヒュポスタティカ(羅 UNIO HYPOSTATICA キリストにおける神性・人性の位格的結合)を巧みに可視化しており、幼子イエスのメダイとして深い意味のある作例となっています。




 本品の黒いビーズは、黄楊(つげ)材を模しています。黄楊は枝の主日に飾られる木であり、救世主を迎える喜び、すなわちイエスこそがメシア(キリスト、救世主)であるという信仰告白を表すとともに、ナツメヤシやオリーヴと同様、「勝利と栄光」「神との平和」を象徴します。

 本品のビーズは長径六ミリメートル、短径五ミリメートルと小さめで、これを黄楊で作ると長年の使用に耐えられずに割れる心配があります。しかしながら本品のビーズはガラリト(仏 galalithe)というオールド・プラスティクスで、美しい光沢がある上に、黄楊よりもずっと丈夫で、割れる心配がありません。ガラリトはアンティーク品にときおり見られる古い時代のカゼイン樹脂で、石油からではなく牛乳から作られます。現代のプラスティスに比べると、ガラリト製品の制作は非常に手間がかかりますが、現代の品物には無い重厚さと高級感を有します。





 上の写真は本品を男性店主の手に乗せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真で見るよりもひと回り大きなサイズに感じられます。

 本品はプラハが鉄のカーテンに閉ざされる以前、1930年代のイタリアで制作された真正のアンティーク品です。古い時代の品物であるにもかかわらず、各部の破損や逸失、チェーンの摩耗などの特筆すべき問題は何もありません。本品メダイは免償付きの特別な種類である上に、キリストにおける神性と人性の位格的結合を巧みに可視化しています。ビーズのガラリトはアンティーク品特有の素材であり、現代のロザリオには望むべくもない重厚さを有します。八十年以上前のファシスト党時代に作られ、第二次世界大戦を経て現代まで大切に伝えられてきた美しい品物です。





18,900円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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