聖ベネディクトとメダイ
ヌルシアの聖ベネディクト (c. 480 - c. 547) は 1220年に列聖されたイタリアの聖人で、モンテ・カッシーノをはじめとする12の男子修道院を創設しました。聖ベネディクトの規則と呼ばれる戒律を定め、これが西ヨーロッパにおいて広く受け入れられたので、聖ベネディクトは西方教会における修道制度の祖と呼ばれています。
聖ベネディクトのメダイの起源は非常に古く、いつまでさかのぼれるか定かではありません。
メダイの表(おもて)面は、中心に聖ベネディクトが描かれ、右手に十字架、左手に聖ベネディクトの規則を持っています。「聖なる師父ベネディクトの十字架」
(CRUX SANCTI PATRIS BENEDICTI) というラテン語が周囲に刻まれています。
十字架の下には割れたカップがあり、毒蛇が這い出そうとしています。聖人を妬んだ敵が聖人の飲み物に毒を入れたのですが、聖人が十字を切ると、カップが粉々に砕けたと伝えられています。
反対側にはカラスがいます。敵が聖人のパンに毒を入れたのですが、これをカラスが運び去ったといわれています。
聖ベネディクトは安らかな死の守護聖人であると考えられていて、メダイの周囲には、「彼の臨在により、臨終に際して我らが強められんことを」 (EIUS
IN OBITU PRAESENTIA MUNIAMUR.)と刻まれています。
聖人の足許には「聖なるカシヌスの山より 1880年」(EX SANCTO MONTE CASINO MDCCCLXXX) の刻印があります。ラテン語
MONS CASINUS (カシヌスの山)は、イタリア語 Monte Cassino (モンテ・カッシーノ)のことです。1880年はモンテ・カッシーノのベネディクト会修道院がこのメダイの鋳造権を得た年です。
裏面の文字が何を表すのか謎でしたが、1415年に書かれた写本が1647年にバイエルンのメッテン修道院で発見され、その意味が明らかになりました。
十字架上のイニシアル9文字は「聖なる十字架が我が光であるように。竜(悪魔)が我が導き手となることが決して無きように。」 (CRUX SACRA
SIT MIHI LUX. NUNQUAM DRACO SIT MIHI DUX.) を表し、メダイの上部にラテン語で PAX(平和)と書かれています。
周囲のイニシアルは「退けサタン。虚しき事で我を誘うな。汝が我に与うるは悪しき物なり。汝自身が毒を飲め。」 (VADE RETRO SATANA.
NUNQUAM SUADE MIHI VANA. SUNT MALA QUAE LIBAS. IPSE VENENA BIBAS.) を表します。
4文字のイニシアル C. S. P. B. は「聖なる師父ベネディクトの十字架」 (CRUX SANCTI PATRIS BENEDICTI)
です。
聖ベネディクトの祝日は3月14日です。