主要なロザリオとシャプレ
différentes sortes de chapelets catholiques



 カトリックの数珠をわが国では「ロザリオ」(rosario) と呼んでいますが、ポルトガル語及びイタリア語の「ロザリオ」は、ラテン語で「薔薇の花環(花綱、冠)」を表す「ロサーリウム」(ROSARIUM) に由来します。薔薇は聖母の象徴であり、聖母像に捧げる薔薇の花環あるいは薔薇の花の冠を、「ロサーリウム」(ロザリオ)と呼んだのです。

 ロザリオのことを、フランス語では「ロゼール」(rosaire) または「シャプレ」(chapelet) といいます。「ロゼール」は特に15連のロザリオを指す語で、語形から明らかなように、ラテン語「ロサーリウム」に由来します。「シャプレ」は五連のロザリオを指しますが、この語は本来「被り物」を表す「シャペル」(chapelle) に縮小辞が付いたものであり、やはり花の冠を表します。ラテン語において「コローナ」(CORONA) は「冠」あるいは「花環」を表しますが、これに縮小辞が付いた「コローッラ」(COROLLA) は専ら「花環」を意味するのに似ています。ドイツ語ではロザリオを「ローゼンクランツ」(Rosenkranz) といいますが、これは文字通り「薔薇の花環」という意味です。

 ロザリオの祈りでは、天使祝詞(アヴェ・マリア)、すなわち救い主の生誕を予告するガブリエルの言葉が唱えられます。下の参考画像はルネサンス期の画家ボッティチーニの作品で、生誕した救い主イエズスを礼拝する聖母とともに、薔薇の花綱(ロサーリウム)が描かれています。


(下・参考画像) Francesco Botticini, The Adoration of the Child (details), 1482, tempera on wood, diameter 123 cm, Pitti Palace Gallery, Firenze




 ロザリオは祈りの回数を数える道具であり、機能的には仏教の数珠と同様のものです。神秘的な力を持つ呪物でもなく、ジュエリーでもありません。

 伝承によると、聖ドミニコ(ドミニクス St. Domonicus, ca. 1170 - 1221)に対して出現した聖母マリアが、ドミニコにロザリオを与え、ロザリオの祈りを教えたと言われています。主なロザリオには次のような種類があります。


十五連のロザリオ

 ロザリオという名称は、本来はこの 15連のものを指します。

 十五連のものには聖母の「喜びの神秘」(受胎告知、エリザベト訪問、イエスの降誕、イエスの奉献、幼子イエスを神殿で見出したこと)を瞑想するための五連、「苦しみの神秘」(ゲッセマネの祈り、鞭打ち、茨の冠、十字架の道、イエスの死)のための5連、「栄えの神秘」(イエスの復活、イエスの昇天、聖霊降臨、聖母の被昇天、聖母の戴冠)のための5連、あわせて十五連のビーズがあります。五連のロザリオを三回使っても良いのですが、十五連の長いロザリオが使われることも多くありました。

 15連のロザリオ

 ちなみに、2002年、教皇ヨハネパウロ二世によって「光の神秘」(イエスの洗礼、カナの奇跡、宣教の始め、変容、最後の晩餐における秘蹟の制定)が付け加えられたため、聖母マリアの神秘(奥義、玄義)の数は現在で二十になっています。


ドミニコ会 (ORDO PRAEDICATORUM, the Dominican Order)  聖母のロザリオ
 (ドミニカン・ロザリー)


 英語でドミニカン・ロザリーと呼ばれる5連のロザリオはもっとも普通に見かける種類で、十五連のロザリオを三分の一に小型化したものと考えることができます。

 五連のロザリオではクルシフィクス(磔刑像)の後に5つのビーズとセンター・メダルが続き、その次に十個で一連のビーズ5連が環状に連なります。五連を隔てるために、連と連の間にも一個ずつ、スペイサーが配置されます。このスペイサーは他のビーズとは大きさや材質が異なるビーズであることが多く、ビーズの代わりにメダルを使う場合もあります。ドミニカン・ロザリーにおいては五十九個のビーズが使われることになります。



 ロザリオの各部分と祈りの対応を説明すると、クルシフィクスにおいて使徒信経、それに続く五つのビーズにおいて主の祈り一回、天使祝詞三回、栄唱一回を唱えて、センター・メダルに移ります。センター・メダルと四つのスペイサーは主の祈り、それらに挟まれる十個の小さなビーズは天使祝詞のためのものです。環状の部分を一周してもういちどセンター・メダルに戻り、栄唱を唱えて終わります。


アイルランド式ロザリオ

 ひそかに祈るために作られた小さなロザリオで、環状になっていません。クルシフィクスに続いて一個のビーズ、センター・メダル、十個のビーズを配します。最初のビーズが主の祈り一回、天使祝詞三回、栄唱一回のために使われ、センター・メダルが通常のロザリオにおけるセンター・メダルと主の祈りのビーズを兼ね、1連のビーズで天使祝詞を繰り返します。

 非常に古いタイプのミニ・ロザリオ。クレド・クロスが付いています。


バスク式ロザリオ

 リング型のロザリオで、周囲に十個のビーズがあり、十字架型の突出部分が一箇所あります。この突出部分がクルシフィクスと最初の5つのビーズ、主の祈りのビーズを兼ねています。持ち運びに便利で、ポケットに入れたロザリオに触れながら周りの人に気付かれずに祈ることもできます。




フランシスコ会 (ORDO FRATUM MINORUM, the Orders of Friars Minor)  聖母の七つの喜びのロザリオ
 (フランシスカン・クラウン)


 七連のものは「フランシスカン・クラウン」と呼ばれ、聖母の七つの喜び(受胎告知、エリザベト訪問、イエスの降誕、マギの礼拝、行方がわからなくなった幼子イエスを神殿で見出したこと、イエスの復活、聖母被昇天と戴冠)を瞑想しながら祈るために使われます。クラウンとはロザリオの環状部分のことです。

 フランシスカン・クラウン

 なおラテン十字ではなくタウ (T) 形のクルシフィクスが付いた五連のロザリオをフランシスカン・ロザリーと呼ぶ場合があります。


聖母のしもべ会 (ORDO SERVORUM BEATAE MARIAE VIRGINIS, the Servite Order)  七つの悲しみの聖母のロザリオ

 聖母のしもべ会は 1240年頃にフィレンツェで設立された修道会です。通常のロザリオでは十個のビーズが一連になっていますが、聖母のしもべ会のロザリオにおいては七個のビーズが「週」と呼ばれる連となり、これが七連(七週)連続して環をなします。

 フランシスカン・クラウンが聖母の七つの喜びを瞑想するのに対して、聖母のしもべ会では聖母の七つの苦しみ(シメオンの預言、エジプトへの逃避、神殿でイエスとはぐれたこと、カルヴァリの丘に向かうイエスに会ったこと、イエスの磔刑、イエスの降架、イエスの埋葬)を瞑想します。




その他の各種ロザリオ

 イエズスや聖母、特定の天使や聖人に対して特別な助けや執り成しを祈る際のロザリオで、ビーズの数と配列は種類によってさまざまです。

 リジューの聖テレーズのロザリオ




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