グアダルペ修道院史 el monasterio franciscano de Guadalupe

 III 聖フランスシコ会修道院の時代 1908年から現在  capítulo III. desde 1908



(上) サンタ・マリア・デ・グアダルペ王立修道院 施療院のゴシック式廻廊 修復前の状態 二十世紀初頭に撮影された写真


 1908年11月7日、フランシスコ会の修道士たちがグアダルペ修道院に到着すると、グアダルペ修道院はアルフォンソ十三世(Alfonso XIII, 1886 - 1841)の勅令によってフランシスコ会に引き渡され、フランシスコ会修道院となりました。フランスシコ会はグアダルペ修道院の修復作業を八十五年に亙って忍耐強く継続し、栄光に満ちたかつての姿を復元しただけでなく、ヘロニモ会が手を付けずにいた箇所をも整備しました。フランシスコ会はグアダルペ修道院の建築と美術を全面的に修復するとともに、グアダルペの聖母への崇敬を再興し、宣教と社会奉仕にも励みました。1939年から 1975年まで続いたフランコ独裁体制下において、グアダルペ修道院には補助金が毎年支出されました。修道院が大規模な修復によって昔日の栄光を取り戻したのは、この補助金のお蔭です。フランコ将軍はグアダルペ修道院を数度に亙って訪れています。

 1928年10月12日、国王アルフォンソ十三世、政府高官、聖職者及び国民列席のもと、トレド大司教ペドロ・セグラ師(Pedro Segura y Sáez, 1880 - 1957)の手により、グアダルペの聖母は戴冠されました。聖母を安置するグアダルペ修道院付属聖堂は 1955年にバシリカとされ、1982年11月4日には教皇ヨハネ・パウロ二世(Ioannes Paulus II, 1920 - 2005)の訪問を受けました。グアダルペ修道院は 1992年7月28日に「メダジャ・デ・エストレマドゥラ」(la Medalla de Extremadura エストレマドゥラ章)を受賞し、1993年にはユネスコの世界遺産(Patrimonio de la Humanidad)に登録されました。

 グアダルペは 1340年以来王立修道院であり、長きに亙る歴史のなかで、たびたび王による巡礼を受け容れてきました。グアダルペ修道院付属聖堂の主祭壇横には、アルフォンソ十一世(Alfonso XI, 1311 - 1350)、ペドロ一世(Pedro I, 1334 - 1369)、エンリケ二世(Enrique II, 1333 - 1379)、フアン一世(Juan I, 1358 - 1390)、エンリケ三世(Enrique III, 1379 - 1406)、フアン二世(Juan II, 1405 - 1454)、エンリケ四世(Enrique IV, 1425 - 1474)、マリア・デ・アラゴン(María de Aragón, 1396 - 1445 エンリケ四世の母后)が眠っています。これらの王族はいずれも修道院に寄進をしたり特権を与えたりした君主たちですが、グアダルペの聖母をとりわけ熱心に崇敬したのはロス・レジェス・カトリコス(Los Reyes Católicos カトリック両王)、すなわちフェルナンド二世(Fernando el Católico, 1452 - 1516)とイサベル一世(Isabel la Católica, 1451 - 1504)で、グアダルペ修道院を二十二回に亙って訪れています。スペイン王国は両王の婚姻を通して成立しました。それゆえスペイン王国とその文明は、グアダルペの聖母の足下で形作られたと言うことができるでしょう。

 カトリック両王は 1486年、グアダルペ修道院においてクリストバル・コロン(Cristóbal Colón, c. 1451 - 1506 コロンブス)を謁見しました。コロンはインド航路を開く航海に必要な資金援助を両王に求め、イサベル一世はコロンの話に関心を持ちました。両王は 1492年にコロンの提案を受け容れ、これによって新大陸への航路が開かれました。コロンは新大陸発見の船旅から帰還した後、聖母に感謝を捧げるためにグアダルペ修道院を再訪しています。

 ミゲル・デ・セルバンテス(Miguel de Cervantes, 1547 - 1616)は 1571年のレパントの海戦に参加した後、グアダルペ修道院への巡礼を行っています。「グアダルペの聖母」発見を記録した「いとも尊きグアダルペの聖母伝」("Auto de la soberana Virgen de Guadalupe")は、セルバンテスの作品とされています。

 最盛期のスペイン帝国を支配したオーストリア・ハプスブルク家の諸王も、グアダルペ修道院を訪れました。これに対してブルボン家の諸王は、グアダルペ修道院に対して特権を与える等の優遇を行いつつも現地を訪れることはありませんでしたが、同家出身のアルフォンソ十三世は、1928年にグアダルペの聖母像が「スペインの女王」(Reina de las Españas)として戴冠した際、式典に出席しました。さらにフアン・カルロス、後の国王フアン・カルロス一世(Juan Carlos I, 1938 - )は 1961年と1965年にグアダルペ修道院を訪れ、国王として即位後の 1978年にも王妃と共に同修道院を再訪しています。



註1 トレド大司教はイベリア半島全体の首座大司教(el cardenal primado de España)です。




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