大能の御父イエズスのバシリカ
Basílica de Nuestro Padre Jesús del Gran Poder, Sevilla





【大能の御父イエズスのバシリカ】

 大能(たいのう)の御父(おんちち)イエズスのバシリカ (la Basílica de Nuestro Padre Jesús del Gran Poder) は、スペイン本土の南西端に近いセビジャ(セビリャ、セビリア Sevilla アンダルシア自治州セビジャ県)のサン・ロレンソ広場に、教区教会サン・ロレンソ (la Parroquia de San Lorenzo) に接して建つネオバロック様式の聖堂です。サン・ロレンソは13世紀に建てられ、16世紀にバロック=ムデハル様式に改築された古い聖堂ですが、大能の御父イエズスのバシリカは 1965年に建てられた新しい聖堂で、いずれもセビジャの建築家であるアルベルト・バルボンティン・デ・オルタ (Alberto Balbontin de Orta, 1903 - 1972) とアントニオ・デルガド・イ・ロイグ (Antonio Delgado y Roig, 1902 - 2002) の設計に基づきます。バシリカ内部の構造はローマに現存するハドリアヌスのパンテオンを参考にしています。


【バシリカに安置されるバロック彫刻と祭壇画】

 バシリカ内部には「セビジャの主」(Señor de Sevilla) とも呼ばれて市民の崇敬を集める聖像、「大能の御父イエズス」(Nuestro Padre Jesús del Gran Poder) があります。これは受難のイエズス・キリストが十字架を肩に担いで歩む様子を、生々しいまでに写実的に表したバロック彫刻で、フアン・デ・メサ (Juan de Mesa y Velasco, 1583 - 1627) が1620年に製作したものです。「大能の御父イエズス」の像は、写実的な絵画や彫刻を文盲の民衆への宗教教育に役立てるというトリエント公会議(1545 - 1563年)の考え方に沿って製作されています。この像は聖金曜日の朝に行われる行列「ラ・マドルガ」(La Madruga) に加わります。


(下) 「大能の御父イエズス」(Nuestro Padre Jesús del Gran Poder) 像




 バシリカに安置されているその他の聖像、聖画には、上記のイエズス像と同様に写実的な使徒ヨハネ像 (San Juan Evangelista)と悲しみの聖母像 (Nuestra Señora María Santísima del Mayor Dolor y Traspaso) 、フアン・マルティネス・モンタニェス (Juan Martínez Montanes, 1568 - 1649) の手になるレタブロ(祭壇画)、及びロカマドゥールの聖母とされる像も安置されています。

 このうち使徒ヨハネ像はフアン・デ・メサが「大能の御父イエズス」像と同じ 1620年に製作した作品で、近年になって6回の修復(1910, 1962, 1976, 1977, 1983, 2008年)が行われています。ちなみにセビジャにはフアン・デ・メサが同じ年に製作したキリスト像があと二体("el Cristo de la Buena Muerte de los Estudiantes" 及び "el Cristo del Amor")あり、いずれもこの彫刻家の代表作とされています。

 聖母像は18世紀の作品で、作者は不詳です。胸に十字架を抱いているように見えるのは、聖母の汚れ無き御心を刺し貫く剣の柄です。大粒の涙を止めどなく流す悲しみの聖母の姿は、なんといたわしいことでしょうか。この聖母像は 1955年に補修が行われています。





【聖金曜日の行列「ラ・マドルガ」】

 聖週間(復活祭直前の一週間)、セビジャでは盛大な宗教行列が毎日行われます。日ごとの宗教行列は5つから9つの信心会(信徒団体)によるもので、それぞれの信心会が一基ないし数基の「パソ」(paso) と呼ばれる輿(こし)を動員します。パソは上部に聖像を乗せた重量1トン以上もある木製の輿で、24人から54人の屈強な男性によって担がれ、通りをゆっくりと移動します。

 聖金曜日(イエズス・キリストが十字架に架かり給うた日)に宗教行列を行う信心会のひとつが、1965年以来サン・ロレンソのバシリカに本拠を置く兄弟団 (Pontificia y Real Hermandad y Cofradía de Nazarenos de Nuestro Padre Jesús del Gran Poder y Maria Santísima del Mayor Dolor y Traspaso) です。この兄弟団はメディナ=シドニア(Medina-Sidonia アンダルシア州カディス県)の公爵夫妻により、1431年に設立された信徒団体で、もともとはセビジャのラ・クルス・デル・カンポ通り (la Calzada de la Cruz del Campo 現在のルイス・モントト通り calle de Luis Montoto)のサント・ドミンゴ・デ・シロス修道院(el monasterio de Santo Domingo de Silos 現在の教区教会サン・ベニト la parroquia San Benito)において設立された団体です。

 この兄弟団は二基のパソを有しており、最初のパソには「大能の御父イエズス」像が乗せられます。このパソは金箔を施されたバロック様式で、金箔を施した銀細工で飾られています。またランプが灯されていますが、これらのランプはエシハ(Ecija アンダルシア州セビジャ県)の「イエズスの御埋葬兄弟団」(La Real, Muy Ilustre, antigua y Noble Cofradía de Nazarenos de Nuestra Señora en la Consideración de sus Angustias y Soledad, Santo Entierro de Nuestro Señor Jesucristo y del Dulce Nombre de Jesús) が所有するランプを写したもので、1908年に製作されました。「イエズスの御埋葬兄弟団」が所有するオリジナルのランプは、高名な金銀細工師ダミアン・デ・カストロ (Damian de Castro, 1716 - 1793) の作品です。

 「大能の御父イエズス」像は暗紫の無地のチュニック(外衣)を着用し、金と宝石で製作された後光を着けています。肩に担ぐ十字架の各先端部には、金めっきを施したキャップが取り付けられています。

 二番目のパソには聖母像 (Nuestra Señora María Santísima del Mayor Dolor y Traspaso) と使徒ヨハネ像が乗せられます。聖母像は銀の台に立ち、金めっきを施した銀製の冠を被っています。聖母のパソの天蓋はワイン・レッドのビロード製で、金糸の縁取りがあります。


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