「絶えざる御助けの聖母」と「ルルドの聖母」 重厚な小メダイ 直径 16.6 mm


突出部分を除く直径 16.6 mm   厚さ 2.3 mm

フランス  1900 - 1920年代頃



 

 一方の面に「絶えざる御助けの聖母」を、もう一方の面に「ルルドの聖母」を、いずれも細密な浮き彫りで表したメダイ。およそ百年前のフランスで制作された作品です。直径 16ミリメートルと小さなサイズですが、2ミリメートルを超える厚みがあり、重厚な美を備えます。手に取ると心地よい重みを感じます。





 大天使ミカエルとガブリエルが聖母子のもとに受難の道具を運んでくるビザンティン美術の図像は、「受難のテオトコス」と呼ばれています。「テオトコス」(Θεοτόκος ギリシア語で「神を産んだ人」の意)は「神の母」と訳されますが、聖母を指します。西ヨーロッパで最もよく知られている「受難のテオトコス」は、ローマの聖アルフォンソ・デ・リゴリ教会 (Chiesa di Sant'Alfonso all'Esquilino) に安置されているイコン「絶えざる御助けの聖母」(Notre-Dame de Perpétuel Secours) です。

 本品の表(おもて)面には、ローマの「絶えざる御助けの聖母」を浮き彫りにしています。ふたりの天使は、聖母子の左上方が大天使ミカエル、右上方が大天使ガブリエルで、受難の道具を運んでいます。それを目にして恐怖に駆られた幼子イエスは、母に駆け寄って胸にしがみつき、目を大きく見開いてガブリエルを凝視しています。




(上) Simone Martini e Lippo Memmi, "L'Annunciazione tra i santi Ansano e Margherita", 1333, tempera e oro su tavola, 305 x 265 cm, La Galleria degli Uffizi, Firenze


 ガブリエルは受胎を告知した天使です。受胎の告知は「ルカによる福音書」1章26節から38節に記録されています。ガブリエルがマリアの許を訪れて最初に発した言葉が「アヴェ」(羅 AVE)であることは、よく知られています。この「アヴェ」、ギリシア語で言えば「カイレ」(Χαῖρε) という天使の言葉を記録する際、ルカは七十人訳の預言書を強く意識しています。新共同訳聖書は旧約預言書の該当箇所を「喜び叫べ」(「ゼファニア書」3章14節)、「大いに踊れ」(「ゼカリア書」9章9節)と訳しています。「アヴェ」(「カイレ」)が如何に喜ばしい知らせの言葉であるかがよくわかります。

 それにもかかわらず、「受難のテオトコス」の図像においては、同じガブリエルが十字架を示して幼子をおびえさせています。知情意と肉体に関して、イエス・キリストは普通の人間の幼児と同様に少しずつ成長されました。したがって稚(いとけな)い子供であったイエスが、恐ろしい十字架や槍を見たときに感じた恐怖は、普通の人間の幼児の場合と何ら違いがありません。母の胸にしがみついた幼子イエスの、右足のサンダルの紐が切れているのが幼子の恐怖心を表していて、何と痛々しいことでしょうか。私はこの図像を見るたびに、心が痛んで涙が出ます。

 幼子イエスが全身で恐怖を表しているのに対し、慈愛深い母マリアはわが子を掻き抱いて守ろうともせず、穏やかな表情で正面を向いています。この不思議な描写はヨブにも勝る聖母の信仰を象徴的に表しています。イエスが少しずつ成長されたのであれば、イエスが幼児であった時点においては、母である年長のマリアの方が、当然のことながらしっかりしていたでしょう。しかしながらわが子が十字架に架けられても平然としていられる母親は存在しません。「受難のテオトコス」像は、幼子として地上に生きるイエスが抱いた恐怖を自然主義的に描写する一方で、マリアの信仰に関しては現世を超越した宗教の立場から描写しているのです。このような特性を有する「受難のテオトコス」像は、この図像を観る者に対し、身の回りに生起する物事を常に永遠の相の下に見るように諭(さと)し、聖母は信仰ある者を常に助け給うと語り掛けています。





 上の写真に写っている定規のひと目盛は 1ミリメートルです。この写真から、本品の浮き彫りが極めて細密であることがお分かりいただけるでしょう。人物の顔はもちろんのこと、王冠の宝石や彫金、聖母の衣から下がる小さな星等の細部まで正確に再現され、生身の聖母子を眼前に見るかのような臨場感に溢れています。商品写真は実物の面積を数十倍から百倍以上に拡大しているので、突出部分の磨滅が判別できますが、肉眼で実物を見るとたいへん美しい保存状態です。





 メダイのもう一方の面にはルルドにおける聖母の出現が浮き彫りで再現されています。右腕にロザリオを掛け、茨の繁みに裸足で立つロサ・ミスティカは、胸の前に手を合わせ、天を仰いで「われは無原罪の御宿りなり」と名乗っています。ベルナデットはヴェールを被り、右手にシエルジュ(大蝋燭)、左手にシャプレを持って、聖母の前に跪いています。





 この面の彫刻も非常に細密です。聖母は頭部が磨滅していますが、衣を通して女性らしい体つきがわかりますし、左脚を軽く曲げて前に出している様子が見て取れます。ベルナデットの顔のサイズは 1ミリメートルに満ちませんが、目鼻立ちは整っており、聖母に視線を注いでいる様子が良く表現されています。





 本品はおよそ百年前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、保存状態は良好です。突出部分に軽度の磨滅があります。特筆すべき問題は何もありません。歳月を経たものだけが獲得する古色により、現代のメダイに真似ができない重厚な美しさを備えています。肉眼で見る実物は、商品写真よりもずっと綺麗です。





本体価格 8,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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