極稀少品 嵐のときの守り手 ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド バシリカ内陣の聖母 ミニアチュール彫刻の名品メダイ 直径 15.2 mm


突出部分を除く直径 15.2 mm

フランス   1910 - 30年代



 およそ八十年ないし百年前のフランスで制作されたマルセイユの聖母「ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド」のメダイユ。直径 15ミリメートルの小さなサイズで、精緻なミニアチュール彫刻が魅力です。

 「ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド」のメダイは、ほとんど常に、鐘楼頂上の巨像を浮き彫りにしています。しかるに本品には内陣に安置された本来の「ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド」像が彫られています。これは非常に珍しいことで、本品は私がこれまで目にした唯一の作例です。





 本品において、マルセイユの守護聖母「ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド」は、あたかも天地を繋ぐように、縦いっぱいのサイズで浮き彫りにされています。鐘楼上の像では幼子は腕を上向きに伸ばしていますが、内陣の聖母子像を写した本品の浮き彫りにおいて、幼子は世の罪びとたちを抱き留めるかのように、両腕を斜め下に広げています。

 聖母は天上にて戴冠し、栄光の姿で表されています。聖母子は対面せずにふたりとも前を向き、聖母は左腕に抱いた幼子が救いに至る道であることを世の人々に示しています。幼子イエズスが聖母の左腕に抱かれているのは、天上の聖母がイエズスの右の座にあることを表しています。

 世界を表す球体の上に立つ聖母は、左脚に体重を掛け、右ひざを軽く曲げたコントラポストの姿勢で表されています。流れるような襞が付いた衣の下に、女性らしく優しい丸みを帯びた体つきが見て取れます。戴冠し、女王の威厳を備える聖母の顔立ちは美しく整い、いかにも幼子らしくふっくらとしたイエズスの体はたいへん愛らしく表現されています。


 マルセイユの聖母に執り成しを求めるフランス語の祈りが、ルネサンス風の書体で書かれています、。

 Notre-Dame de la Garde, priez pour nous.  ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド(守護の聖母)よ。我らのために祈り給え。


 バシリカ内陣の柱上に安置された銀製の聖母子像「ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド」


 「ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド」はマルセイユの象徴、バジリク・ノートル=ダム=ド=ラ=ガルドに安置された聖母子像で、「ラ・ボンヌ・メール」(優しい聖母さま)として市民に親しまれています。バシリカの鐘楼頂上にはパリの工房クリストフルが制作し、1870年9月24日に祝別された高さ 11.2メートルの聖母子像が据え付けられています。「ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド」というとこの巨像が有名で、メダイに彫られる「ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド」も大抵はこちらの像です。

 バシリカの内陣主祭壇後方の柱上には、1837年7月2日に祝別された銀製の聖母子像があります。この聖母子像はフランス革命の際に融かされた古い聖母子像に代わるものとして、パリの彫刻家ジャン=ピエール・コルト (Jean-Pierre Cortot, 1787 - 1843) がデザインし、マルセイユの銀細工職人シャニュエル (Jean-Baptiste Chanuel) の工房において5年がかりで制作されたものです。「ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド」像といえば鐘楼頂上の巨像が有名ですが、本来は内陣に安置されたこちらの像こそが、「ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド」です。





 聖母子像の向かって左の背景にはバジリク・ノートル=ダム=ド=ラ=ガルドが、右の背景にはマルセイユ港の東大と沖合に浮かぶ船が彫られています。このメダイにおいてバシリカだけを彫らずに、港からバシリカへと登ってゆく階段を手前に大きく彫っているのは一見したところ意表を突く構図ですが、メダイユ彫刻家はこの構図によって、聖母がマルセイユを守り給うことを表すとともに、丘を登ってバシリカを訪れるマルセイユ市民の、聖母に対する愛と信仰を強調的に表現しているのです。


 以上のように工夫を凝らした構図が魅力的な本品ですが、その彫刻技術にも驚くべきものがあります。上の写真は実物の面積を九十倍に拡大しています。定規のひと目盛は 1ミリメートルです。聖母子の顔立ちは整っていますが、いずれも直径 1ミリメートルほどの範囲内に収まることがわかります。写実的に再現されたバシリカの高さが約 4ミリメートル、右下の灯台が 2ミリメートル、帆船が 1ミリメートルです。これらの細部のみならず、聖母子の体は大型の浮き彫り作品と同様の写実性を以て表現され、丘の岩肌と波立つ海面も明らかに区別されています。

 メダイの下部左側に彫刻家のサインが彫られていますが、判読が困難です。





 裏面には突風に翻弄される小さな舟が彫られています。帆を張ったままなのは、風の変化があまりにも急だったせいでしょう。舟には三人の人が乗っていて、ふたりはたいへん慌てていますが、一人は横になって眠っているようです。この人の頭には後光があります。共観福音書(マタイ 8: 23 - 27、マルコ 4: 35 - 41、ルカ 8: 22 - 25)にはイエズスが弟子たちと舟に乗ってガリラヤ湖を渡られた時の出来事が記録されています。「マタイによる福音書」 8章 23 - 27節を、新共同訳により引用いたします。

 イエスが舟に乗り込まれると、弟子たちも従った。そのとき、湖に激しい嵐が起こり、舟は波にのまれそうになった。イエスは眠っておられた。弟子たちは近寄って起こし、「主よ、助けてください。おぼれそうです」と言った。イエスは言われた。「なぜ怖がるのか。信仰の薄い者たちよ。」そして、起き上がって風と湖とをお叱りになると、すっかり凪になった。人々は驚いて、「いったい、この方はどういう方なのだろう。風や湖さえも従うではないか」と言った。 (「マタイによる福音書」 8章 23 - 27節 新共同訳)


 本品では浮き彫りを囲むようにラテン語で「イン・テンペスターテ・セークーリタース」(IN TEMPESTATE SECURITAS) と書かれていますが、これは "IN TEMPESTATE SECURITAS SIT" の意味でしょう。ラテン語で「嵐のときも(信仰を以て)落ち着きなさい」、あるいは「嵐の中でも(神の)加護がありますように」という意味です。







 マルセイユのノートル=ダム・ド・ラ・ガルドは船乗りの守護聖女であり、バジリク・ノートル=ダム=ド=ラ=ガルドには数多くの船の模型が奉献され、吊るされています。また主祭壇の上方、後陣半円蓋には船のモザイク画が制作されています。

 福音書に記録された上記の出来事に聖母は登場しませんが、本品はノートル=ダム・ド・ラ・ガルドのメダイであるゆえに、裏面に彫られた「嵐の中の舟」は、困難に出会う人々を守り給う守護の聖母の愛、聖母を通して信仰深き者に与えられる神の恩寵をも、重層的に表しています。





 本品はおよそ八十年から百年前にフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、古い年代にもかかわらず、制作当時のままの良好な保存状態です。突出部分にも摩耗はほとんどありません。工芸品としても優れた水準の作品であり、お買い上げいただいた方には末長くご満足いただけます。





本体価格 14,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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