数多くのロマネスク聖堂が残るオーヴェルニュにあって、最も美しい聖堂の一つ、クレルモンのノートル=ダム・デュ・ポールのバシリカに安置される黒い聖母のメダイ。ノートル=ダム・デュ・ポールはクルミ材でできた高さ 31センチメートルの聖母子像です。
メダイの片面にはバシリカのクリプト(半地下の礼拝堂)に安置されているノートル=ダム・デュ・ポールが浮き彫りにされています。聖母はゆったりとした衣を身にまとって幼子イエズスを両手で愛しそうに抱き、幼子イエズスは頭から足先までの全身で母に寄り添っています。幼子を慈しむ聖母が上体を傾(かし)げ、母子が頬を寄せ合う微笑ましい姿はたいへん特徴的です。聖母子の周囲には、フランス語で次の言葉が書かれています。
Notre-Dame du Port, priez pour nous. ノートル=ダム・デュ・ポールよ、我らのために祈りたまえ。
もう片面にはノートル=ダム・デュ・ポールを安置するクリプトの祭壇が浮き彫りにされ、周囲にフランス語で次の言葉が書かれています。
chapelle souterraine de Notre-Dame du Port ノートル=ダム・デュ・ポールの地下聖堂
フランスにおいて800シルバー(純度80パーセントの銀)を表す蟹の形のホールマークが、上部の環に刻印されています。
メダイはたいへん良いコンディションです。摩耗がほとんど無いために、浅浮き彫りにもかかわらず、細部まで19世紀の状態のまま綺麗に残っています。表面のパティナ(古色)は銀の硫化によるもので、真正のアンティークならではの趣です。クリーニングしたい場合は、練り歯磨きをブラシに付けて軽くこすれば新品同様になります。