金、銀、藍色の対比が美しい小品メダイ。小さなサイズながらもたいへん凝った作りの高級品です。
表(おもて)面は、ローズ・ゴールド(ピンク・ゴールド)の楕円形小メダルにグアダルーペの聖母を浮き彫りにし、銀製メダルの中央に嵌め込んでいます。聖母の頭部は直径1ミリメートル、身長は8ミリメートル、足下の天使を合わせても10ミリメートルという小さなサイズですが、たいへん正確・精密なミニアチュール彫刻となっています。
小メダルの表面をルーペと顕微鏡で精査しましたが、突出部分にも金の剥離はまったく見られません。長年貴金属を扱っていると、ある品物が金無垢であるのか、それとも金めっきが剥がれていないだけであるのかは、手に取ったときの質感からだいたい正しく判断できます。本品に嵌め込まれている小メダイはおそらく金無垢であろうと思うのですが、金の純度を示すホールマークは見当たりません。
メダイの周囲には唐草模様を彫り、これをインディゴ・ブルーのエスマルテ・バシアド(esmalte vaciado エマイユ・シャンルヴェ)で浮き出させています。メダイの最下部には、スクロール(渦)状の彫金が施されています。
裏面下部にはメキシコの金銀製品工房「A. トバル」(A. TOVAR) の名前と「メキシコ」(MEXICO) の文字、及び銀の純度を示す "0.950"
のマークが刻印されています。
本品に使用されている三色はたいへん美しい取り合わせですが、それぞれの色にも意味があります。すなわち金色は天国の栄光、あるいは聖母の栄光を表します。銀色(白)は聖母の純潔を表します。藍色(青)は天空の色であり、天国を表すとともに、聖母を象徴する色でもあります。またローズ・ゴールド(ピンク・ゴールド)はスペイン語で「オロ・ロサ」(el
oro rosa) と言いますが、棘だらけの藪から出て美しい花を咲かせる薔薇(ロサ)は、無原罪の御宿りなる聖母を象徴します。さらに白と青の組み合わせは聖母の衣とヴェールの色であり、このメダイは銀の周囲を青いエマイユで囲むことにより、メダイ全体が聖母の姿を連想させるデザインとなっています。
(下・参考画像) Francisco de Zurbarán, La Inmaculada Concepción, 1661, oleo sobre lienzo, 136.5 x 102.5 cm, Szepmuveszeti Muzeum, Budapest
本品はメキシコの金銀細工工房において手作業で制作されたメダイで、真正のヴィンテージ品ですが、たいへん良好な保存状態です。手間をいとわず丁寧に制作された高級品です。