一点もの すべての大人と子供のための作品 《恩寵の光に照らされる銀の聖母子》 ミニマリズムによる愛のメダイ 48.4 x 39.0 mm


メダイ本体の最大の厚み 3.8 mm

外付けの吊り環を除く縦横のサイズ 48.4 x 39.0 mm


重量 12.7 g


スペイン  1960年代



 大きなサイズの聖母子のメダイ。六十年近く前のスペインで、良質の銀を使って制作された美しい品物です。





 ほとんどのメダイはコインのように一体成型された物で、上部に突出する環もメダイ本体と最初から一体を為しています。しかしながら本品は四つの部品を組み合わせ、溶接して制作しています。

 すなわち聖母子は厚い銀の板を打ち抜き、聖母と、聖母に抱かれる幼子イエスの姿を、極めて単純化された線刻により表現しています。銀板の表面は研磨され、金属鏡のように光を反射します。聖母子の輪郭は丁寧なやすり掛けを施し、滑らかに仕上げられています。

 聖母子の背景は、角を落とした五角形の大きな銀板を、緩やかな曲面を為すようにプレスしています。背景の銀板の輪郭も、丁寧なやすり掛けで滑らかに仕上げられています。

 銀は可視光の全波長を良く反射する金属で、射るように鋭い光を跳ね返します。それゆえ凹面鏡のように窪んだ銀板に光が当たれば、非常に強く輝くはずです。しかしながら本品では、聖母子の背景となる銀板に、無数のヘアライン(毛彫りの溝)が彫られています。ヘアラインは背景の銀板に当たった光を多方向に散乱するとともに、溝の内部が硫化して黒ずむことで反射を和らげ、聖性の微光を思わせる柔らかな光で聖母子を包んでいます。





 聖母子の背景となる銀板の上部には、銀の小さな円環が丁寧な手作業で溶接されています。小さな円環に取り付けた大きな撥環(ばちかん)も銀製で、やはり丁寧な溶接で閉じられています。本品の撥環は内側のサイズがおよそ 5 x 8ミリメートルと大きいので、大きめの留め金が付いたチェーンや、太めの革紐を通すことができます。





 上で述べたように、本品の聖母子は極力単純化した線で輪郭のみを描きます。これは 1960年代頃に最盛期を迎えたミニマリズム(英 minimalism)のデザインです。ミニマリズムの思想は、「レス・イズ・モア」(英 Less is more.)、すなわち「最小限に切り詰めた表現によってこそ、より豊かな内容をあらわすことができる」というルートヴィヒ・ミース・ファン・デア・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe, 1886 - 1969)の言葉に集約されます。


 ミニマリズムは神学と無関係に生まれた美学上の思想ですが、「レス・イズ・モア」という考え方は、キリスト教における神の観念と見事に一致します。

 すなわちキリスト教の考え方では、神がどのような方であるかということを、人間の知性が知ることは全くできません。たとえば神は「義」であり、「愛」であると言われます。しかしながら人間の知性が理解する「義」は、「レ・ミセラブル」でジャン・ヴァルジャンを追い詰めるジャヴェール警部のように、罪を赦さず徹底的に追及して罰します。これに対して「愛」は罪を赦し、罪びとをマントに包んで匿います。人間の知性にとって「義」と「愛」は尖鋭に対立する概念であり、両者は決して相容れません。しかるに神において「義」と「愛」は矛盾せず、単一の属性として融合しています。このような義や愛を、人間の知性は全く理解できません。

 それゆえ人間の知性は、神が「どのような方であるか」を知ることができません。人間に知ることができるのは、神が「どのような方でないか」ということだけです。たとえば神は愛ですが、人間が理解できるような愛ではありません。また神は義ですが、人間が理解できるような義ではありません。

 このように考えると、「神はこのような方である」という具体的描写を可能な限り捨象し、できるだけ単純な表現に拠ることが、宗教美術のあるべき姿と考えられます。これはミニマリズムの方向性と一致する考え方です。そのためカトリック芸術においても、大は聖堂建築から小は信心具や小聖画まで、ミニマリズムの影響を受けた美しい作品群が制作されました。ミニマリズムに基づくキリスト教関係の作品は、1960年代の教会が流行に便乗したという以上に、思想の本質的な部分における一致ゆえに生み出されたものです。





 本品の聖母子像において、聖母に抱かれる幼子イエスは直立しているように見えます。赤ん坊を横向きに寝かせるように抱くと、抱かれる赤ん坊は快適ですぐに眠ってしまい、乳を飲みません。それゆえ授乳するときは赤ん坊を立たせるように抱く必要があります。本品の聖母子像は、聖母が幼子に視線を注いでいるのに対し、幼子は聖母の胸に顔を押し付けているように見えます。幼子イエスはきっと乳を飲んでいるのでしょう。

 キリスト教の考えによると、救世主イエスは三位一体の第二位格「子なる神」である一方、全くの人間でもあります。かといってイエスは半神ではありません。これもまた人間の知性では理解しがたいことですが、イエスは神でもあり、同時に全くの人(ふつうの人間)でもあるのです。イエス・キリストにおいて、神性と人性は混合せず、分離せず、ひとつの実体を為します。神学では、これをキリストにおける神人二性の「ウニオー・ヒュポスタティカ」(羅 UNIO HYPOSTATICA 位格的結合)と呼んでいます。


 イエスが幼子として聖母に抱かれる図像においては、神と人の二性のうち、人間としての側面が描写されます。すなわち本品に刻まれた聖母子像において、イエスは神ではなく、ひとりの普通の赤ちゃんです。

 昔は成長できずに亡くなる子供が多く、わが国においてもほんの数十年前まで、子供はよく亡くなりました。わが国における 1920年代の乳児死亡率は十五パーセント前後です。これは一歳の誕生日を迎えるまでに、十五パーセントの子供が亡くなったことを意味します。一歳になったからといって急に体が強くなるわけでもなく、七歳になるころまでにおよそ半数の子供が亡くなりました。

 子供の死亡率は時代を遡るほど高くなります。イエスが生まれたのはいまから二千年も前ですから、子供が無事に大きくなるのは非常に難しい時代でした。それでもイエスは両親の愛に包まれて順調に生長してゆきました。「ルカによる福音書」二章四十節には「幼子はたくましく育ち、知恵に満ち、神の恵みに包まれていた。」(新共同訳)と書かれています。

 本品において聖母子を包む柔らかな光は、ルカが言う「カリス・テウゥ」(希 χάρις θεοῦ 神の恵み)を可視的に表しています。「神の恵みに包まれていた」という新共同訳は意訳で、この部分のギリシア語原文(χάρις θεοῦ ἦν ἐπ' αὐτό.)を直訳すると、「神の恵みは彼(イエス)の下にあった」「神の恵みが彼を支えていた」となりますが、聖母子像の背景を為す銀板が柔らかな光を放ちつつ、包み込む貝殻のように内に湾曲した様(さま)は、聖母子を守る神の恩寵をよく表しています。





 上の写真は本品裏面の刻印を拡大撮影しています。右側の五芒星はスペインにおける銀のコントラステ(西 contraste 検質印、ホールマーク)で、本品に使われている銀が 915パーミル(915/1000、91.5パーセント)以上の純度であることを示しています。左側に見える六角形の刻印は、プラテロ(西 platero 銀細工師、銀製品工房)の刻印です。

 本品は外付けの吊り環を除く縦横のサイズが 48.4 x 39.0ミリメートル、吊り環を含めると 57.5 x 39.0ミリメートルという大きなサイズですが、すべての部分が銀でできています。12.7グラムの重量は、おおよそ五百円硬貨二枚分に相当します。作りの点でもたいへん手間をかけて制作されており、特別な機会に購入された高価な品物であることがわかります。





 上の写真は本品を男性店主の手に載せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真よりもひと回り大きなサイズに感じられます。





 アンティーク品を手に入れる楽しみには、いくつかの側面があります。第一に、現代の品物では再現できないような材質や作りを楽しむこと。第二に、品物が伝える時代の雰囲気を楽しむこと。第三に、古い品物ならではの摩滅や古色を楽しむこと。第四に、たとえ量産された品物であっても現代まで残っている例は少なく、「一点もの」の贅沢を楽しめること。

 本品はアンティーク品(ヴィンテージ品)としては比較的新しい年代の品物で、制作当時の状態を留めており、摩滅や古色はほとんどありません。しかしながら二番目に書いた魅力が豊かで、1960年代の空気を今に伝えています。また銀は信心具に使われる最高級の素材であり、これをふんだんに使ったうえに複雑な工程で手作りされた本品は、量産といえるほどの数が作られたとは思えません。長年にわたって信心具を扱う筆者自身、このメダイを手にするのは本品が初めてであり、「一点もの」の贅沢を楽しめる良いアンティーク品となっています。


 本品をメッセージ性の観点から見れば、母子の愛は時代、民族、宗教の違いに関わらず、全世界の全時代に共通します。およそ動物が抱(いだ)き得る感情で、母子の愛ほど強いものはありません。本品は愛児の成長を願う両親が特別な機会に購入したメダイと思われ、キリスト教美術を超えた普遍性を有します。

 子供が無い方の場合も、その方自身が誰かの子供であり、両親と神の庇護の下、無事に育って大人になっています。それゆえ本品はすべての大人と子供にふさわしい《愛のメダイ》です。





42,800円 販売終了 SOLD

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