リュドヴィク・ペナン作

「罪無くして宿り給へる至福なる童貞マリア信心会」 美術品レベルのブロンズ製大型メダイユ 直径 41.0 mm



突出部分を除く直径 41.0 mm  最大の厚さ 4.4 mm  重量 29.2 g

フランス  1850 - 60年代



 一方の面には蛇を踏みつけて弦月の上に立つ無原罪の御宿りの聖母を、もう一方の面には薔薇と百合に囲まれた「アウスピケ・マリアエ」(AUSPICE MARIAE ラテン語で「マリアの庇護の下に」)のモノグラムを、それぞれ浮き彫りにしたメダイ。最大4ミリメートルの厚さ、29グラムの重量がある立派なサイズの工芸品で、手に取ると心地よい重みを感じます。

 一方の面において枠の中に刻まれているのは、無原罪の御宿り、すなわち罪無くして母の胎内に宿り給うた聖母マリアの御姿です。雲の上、すなわち天上にて蛇を踏みつけ、下弦の月に立つ聖母は、右脚に体重を掛け、体をわずかに右に捩(よじ)ったコントラポストの姿勢で表されています。聖母の両手は胸の前に重ねられ、首は左に傾(かし)げられて、天上に視線を向けています。





 聖母を取り囲む紡錘形の枠は、ロマネスク及びゴシックの聖堂彫刻に見られる身光、マンドーラを思わせます。聖母に執り成しを求める祈りの言葉が、枠にラテン語で記されています。

  SANCTA MARIA IMMACULATA, ORA PRO NOBIS.  汚れ無き聖マリア、われらのために祈りたまえ。





 紡錘形の枠の外側を、四つ葉形と正方形を組み合わせたゴシック様式の外枠が取り囲んでおり、外枠の内側に沿って、アンティーク・ファイン・ジュエリーに施される彫金細工、「ミル打ち」と同様の、微小な点状の装飾が施されています。





 二重の枠の間には、"AM" のモノグラム、及びモノグラムから発する薔薇の唐草文様が浮き彫りにされています。"AM" のモノグラムは「アウスピケ・マリアエ」(AUSPICE MARIAE ラテン語で「マリアの庇護の下に」)を表し、薔薇は聖母を象徴します。

 メダイの下部、最も外側の縁のあたりに、「リヨン、L. ペナン作」(L. PENIN A LYON) と記されています。「L. ペナン」とは、19世紀半ばのカトリック・メダイユ彫刻界を代表し、30歳代で亡くなったリヨンの天才彫刻家、リュドヴィク・ペナン (Ludovic Penin, 1830 - 1868) のことです。





 メダイの裏面には二重の円を描き、内側の縁に内接するように、四つ葉形と正方形を組み合わせたゴシックの枠を配します。枠の内側にはミル打ち様の点状装飾を施し、この枠に囲まれた内部には、"AM"(アウスピケ・マリアエ)のモノグラム、及びモノグラムを囲む薔薇と百合の花綱を、あたかも本物の植物のように精緻な浮き彫りによって表しています。下の2枚の写真は、実物の面積を 80 ~ 90倍に拡大しています。メダイの実物において、薔薇と百合の花の直径は、いずれも 2 ~ 3ミリメートルです。





 薔薇は棘だらけの繁みから伸びた花芽が、棘に傷つくことなく美しい花を咲かせるゆえに、聖母を象徴する花とされます。すなわち聖母マリアは、人祖アダムの妻エヴァと同様に女性でありながら、薔薇の棘、すなわちエヴァが犯した罪ゆえの原罪に傷つくことなく咲き出でた一輪の薔薇、無原罪の御宿りです。





 さらに百合も聖母の象徴とされますが、これは旧約聖書の恋の歌「雅歌」2:2に見られる次の聖句が、神の御心に適(かな)った女性マリアを指すと考えられたからです。

  Sicut lilium inter spinas, sic amica mea inter filias. (Nova Vulgata)  おとめたちの中にいるわたしの恋人は 茨の中に咲きいでたゆりの花。 (新共同訳)

 百合は純潔の象徴であり、この点でも無原罪の聖母に相応しい花といえます。メダイ裏面を囲む二重の枠に挟まれた部分には、次の言葉がラテン語で記されています。

  ADSCRIPTIO CONGREGATIONI BEATAE MARIAE VIRGINIS IMMACULATAE CONCEPTAE  罪無くして宿り給へる至福なる童貞マリア信心会への入会(の記念)

 これに続く二語のうち、"COLLE." は "COLLEGII"("COLLEGIUM" の属格) または "COLLEGIO"(同、奪格)の意味でしょう。"MONG." はラテン語表記したフランス地名(属格)を略記していますが、詳細は不明です。



 このメダイは19世紀フランスの美術史上に名を遺した夭折の彫刻家、リュドヴィク・ペナンの作品で、信心具と言うよりもむしろ美術品の域に達する名品です。この時代のメダイはほとんどが打刻によって制作された小型の品物であり、民衆のための信心具以上のものではありません。しかしながら本品は例外的に鋳造により、それらよりもはるかに立派なサイズに制作され、美術品レベルのメダイユ彫刻と同様の丁寧さで美しく仕上げられています。


リュドヴィク・ペナン作 聖セシリアのメダイユ 当店の商品です。


 鋳造による同時代の他のメダイと比べても、本品は群を抜いて優れた出来栄えであり、この時代のフランスのカトリック・メダイユ彫刻を代表する秀作となっています。


(下) 19世紀フランスに一般的な打刻によるメダイとの比較。右上は不思議のメダイ。右下はモンテギュの聖母のメダイ




(下) 厚みの比較。本品は本格的な工芸品として、例外的に大きなサイズで製作されています。




 保存状態に関しても、本品はおよそ150年前に制作された真正のアンティーク品にかかわらず、それほどまでに古い年代のものとは俄(にわ)かに信じ難いほどの良好なコンディションです。突出部分にも摩耗は無く、細部まで往時のままの完全な状態で残っている極めて稀な例です。





本体価格 38,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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