アール・ヌーヴォー期以前に制作された透かし細工の銀製メダイ。高級品である銀製メダイは小さいものが多いですが、本品はおよそ3センチメートルX2センチメートルと大きめのサイズで、十分な厚みもあり、手に取ると心地よい重みを感じます。壁面彫刻を思わせる枠のデザインも、視覚的な重厚感を与えています。
メダイの中央には、19世紀のフランスで愛好され、額や鏡に採用されたクラシカルな楕円形の画面に、すらりと美しい聖母の立ち姿を浮き彫りにしています。球体の上に蛇を踏みつけて立つ「無原罪の御宿り」は、両腕を広げて斜め下に降ろし、手のひらを前に向けて罪びとを腕の中へと招いています。聖母を浮き彫りにした楕円形部分は、建築物の壁面彫刻を思わせる重厚な枠で上下を、三輪ずつの薔薇による優雅な枠で左右を、それぞれ囲まれています。薔薇は聖母の象徴です。
上部の環には800シルバー(純度80%のシルバー)を示すフランスのホールマーク(蟹)、及びフランスの銀製品工房のマークが刻印されています。
このメダイは摩耗の程度もごく軽く、細部までよく残っています。19世紀に制作された古いメダイであるにもかかわらず、たいへん良好なコンディションです。