細密彫刻による銀無垢メダイ 「三位一体に祝福される無原罪の御宿り」 アール・ヌーヴォー期の佳品 29.0 x 20.7 mm


突出部分を含むサイズ 縦 29.0 x 横 20.7 mm

フランス  19世紀末から20世紀初頭



 百年以上前のアール・ヌーヴォー期にフランスで制作されたアンティーク・メダイユ。縦 29ミリメートル、横 20ミリメートルという大きめのサイズにかかわらず、信心具に使われる最高級の素材、銀を惜しまずに使用しています。フランスにおいて800シルバーを示す「蟹」のポワンソン(ホールマーク)が、上部の環に刻印されています。





 メダイの中央には球体の上で蛇を踏み付ける無原罪の御宿り、すなわち聖母の姿が浮き彫りにされています。人々を庇護するために大きなマントを身に着けたミゼリコルディア(憐れみ)の聖母は、掌を前に向けて両腕を広げ、母の慈愛を以て罪びとを招いています。


(下・参考画像) 大きなマントを広げるミゼリコルディア(憐れみ)の聖母 Domenico Ghirlandaio, "Madonna della Misericordia", c. 1473, la chiesa di Ognissanti, Firenze




 聖母の背景は艶消し処理が為されているために、聖母像の銀に反射する光には宗教的象徴性が賦与されて、「聖母を通してわれわれを照らす神の愛と恩寵の光」となっています。聖母の背景に規則正しく配列された四個一組の点は、十字架あるいはフルール・ド・リスを表します。図像の背景に十字架やフルールドリスを散らすのは、フランスの伝統的意匠です。


(下・参考画像) リュドヴィク・ペナン作 美術メダイユ 「我が肉を食し我が血を飲む人は永遠の生命を有す、而して我、終の日に之を復活せしむべし」 直径 41.1 mm 1869年 当店の商品




 聖母像は三輪の白百合に囲まれています。百合が「純潔の象徴」であることはよく知られていますが、「神による選びの象徴」、「神の摂理に対する信頼の象徴」でもあります。「無原罪の御宿り」(マリア)が原罪の継承を免れたのは、救い主を生むという特別な役割のために神に選び出されたからです。マリアが救い主の母に選ばれたのは、神の摂理を無条件で信じる信仰のゆえです。したがってマリアを囲む三輪の白百合は、「純潔の象徴」であるとともに、「神による選びの象徴」、「神の摂理に対する信頼の象徴」でもあります。

 百合が三輪であることは、マリアが三位一体から祝福を受けていることを示します。マリアや他の諸聖人の図像に描かれる百合の数に決まりはありませんが、三輪の百合を描く作例は数多く見出すことができます。下にいくつかの例を示します。


(下・参考画像) ティエポロ 「無原罪の御宿り」 Giovanni Battista Tiepolo (1696 - 1770), "la Inmaculada Concepción", 1767 - 69, Óleo sobre lienzo, 279 x 152 cm, Museo del Prado, Madrid



(下・参考画像) ジャン=フィリップ・ロック作 「神に選ばれたるヨセフ」 若きヨセフの信仰のメダイ 直径 18.6 mm 当店の商品です。



(下・参考画像) 18世紀のミニアチュール 「おとめ聖マリーナ」 パピエ・ヴェルジェに手彩色銅版グラヴュール 123 x 63 mm 当店の販売済み商品




 本品の浮き彫りはスクリュー・プレスで打刻したものですが、フランス製メダイユならではの驚くべき細密性を有します。下の写真において定規のひと目盛は 1ミリメートルです。マリアの顔や手、蛇の頭はいずれも正確に造形されていますが、サイズは 1ミリメートルに満ちません。衣の襞の流れは自然で、胸の膨らみや太ももの丸みなど、女性らしい体つきが良く表されています。マリアはコントラポストの姿勢を取っていますが、上に示したティエポロの絵とは反対に、右脚に体重を掛け、左膝を曲げている様子も見て取れます。





 百合を模(かたど)る周辺部分は、あたかも蔓(つる)草のようにうねる茎と葉によって、透かし模様を形作ります。極端なまでに曲線を強調したこのフォルムは、爛熟したアール・ヌーヴォー様式によるものであり、1880年代頃からヨーロッパを席捲した日本美術から強い影響を受けています。





 「無原罪の御宿り」は、1854年12月8日に教義として宣言されました。19世紀後半はフランスのメダイユ芸術が頂点に達した時代であり、日本美術によって生まれたアール・ヌーヴォー様式の時代でもありました。これらの出来事は互いに無関係でありながら、窓なきモナドが共鳴するように同時期に起こり、その結果生まれたのが本品です。一度限り起こった幸いなる偶然により、19世紀後半のフランスという時代と場所でのみ生まれ得た、美しき「時代の結晶」といえましょう。





 本品は百年以上前に制作された真正のアンティーク品ですが、非常に良好な保存状態です。艶のある部分と艶消し部分の均衡のとれたコントラスト、九頭身のマリア像、あたかも生花のような百合の造形は、肉眼で見るときわめて美しく、信心具を超えて芸術の水準に到達しています。実物が放つ天上の輝きは、商品写真では十分の一も伝わりません。





本体価格 25,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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