銀無垢の高級品 日本風の「無原罪の御宿り」 初聖体のメダイ アール・ヌーヴォー様式による作例 25.8 x 19.8 mm


突出部分を含むサイズ 縦 25.8 x 横 19.8 mm

フランス  1900 - 1910年代



 二十世紀初頭、アール・ヌーヴォー全盛期のフランスで制作された美麗なメダイ。無原罪の御宿りなる聖母マリアの立像を、アール・ヌーヴォー様式の枠で囲んでいます。

 本品は一生に一度の晴れ舞台である初聖体またはコミュニオン・ソラネルのために作られた特別な品物で、信心具に使われる最高級の素材、800シルバー(純度 800/1000の銀)を惜しまず使って制作されています。フランスにおいて銀無垢製品を示す「蟹」のポワンソン(仏 poinçon ホールマーク、貴金属検質所の印)、及び銀細工工房のマークが、上部の環状部分に刻印されています。


 メダイの表(おもて)面には無原罪の御宿りが浮き彫りにされています。突出部分が幾分磨滅しているために、細部がわかりづらいですが、聖母は優しいまなざしを地上に向けて、初聖体を受ける子供たちを祝福しています。




(上) フレデリック・ヴェルノン作 「エヴァ」 ブロンズ製プラケット 当店の商品です。


 球体の上に立つ無原罪の御宿りは、蛇を踏み付けています。聖母が蛇を踏み付ける意匠は、「創世記」 3:15 において、神が蛇に向かって言われた次の言葉によります。

  お前と女、お前の子孫と女の子孫の間に、わたしは敵意を置く。彼はお前の頭を砕き、お前は彼のかかとを砕く。(新共同訳)

 ここで言う蛇とは動物の蛇のことではなく、エヴァを誘惑して神に背かせた悪魔を指しています。カトリックの聖書解釈によると、上に引用した神の言葉は、蛇の支配を受けない(すなわちその身に罪を帯びない)女、すなわち聖母マリアに関する預言であるとされます。





 聖母が立つ球体は、世界(地上界、全宇宙)を象徴しています。聖母は両腕を広げて斜め下方に伸ばし、その指先からは神の恩寵が地上へと降り注いでいます。聖母の背景には布目にも似た細かい凹凸があり、銀が硫化して黒ずんでいます。暗色の硫化銀を背景にして、聖母像の銀色の輝きはいっそう強調され、神の恩寵に照らされたその姿は、あたかも漆黒の空に煌々と輝く月のように見えます。

 聖母のマントはたいへん大きく、すべての罪人を庇護する「ミゼリコルディアの聖母」(憐れみの聖母)像を思い起こさせます。下の写真はドメニコ・ギルランダイヨが 1472年頃、フィレンツェのオニッサンティ教会身廊に描いたフレスコ画です。聖母が立つ台にはラテン語で「ミセリコルディアー・ドミニー・プレーナ・エスト・テッラ」(MISERICORDIA DOMINI PLENA EST TERRA 地は主の憐れみに満ちている)と書かれています。


(下) Domenico Ghirlandaio, "Madonna della Misericordia", c. 1472, la capella Vespucci della chiesa di San Salvatore di Ognissanti, Firenze 右から二人目の少年はアメリゴ・ヴェスプッチです。




 聖母が神の恩寵の器(通り道)とされるのは、受胎告知の際、天使ガブリエルに対して「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように」(「ルカによる福音書」 1: 38)と答え、救いを受け容れたからです。神は救いを強制せず、マリアは自由意思を以て救い主の受胎を受け容れました。そのことにより救い主が生まれて、人間は救いを得たのです。


(下) Simone Martini e Lippo Memmi, "L'Annunciazione tra i santi Ansano e Margherita", 1333, tempera e oro su tavola, 305 x 265 cm, La Galleria degli Uffizi, Firenze




 メダイの左側にはマーガレットと思われるキク科の花が彫られています。キク科植物をあしらったのは日本美術の影響であり、主に装飾的意図による意匠と思われます。しかしながらマーガレットの語源であるラテン語「マルガリータ」(MARGARITA)、及びその語源であるギリシア語「マルガリーテース」(μαργαρίτης) はいずれも「真珠」という意味で、真珠は「キリストの象徴」あるいは「天国の象徴」ですから、マーガレットはキリストの御体を拝領する初聖体のメダイにふさわしい図柄といえます。初聖体のメダイには聖体とカリスを描いた作例が多いですが、本品においては聖体とカリスがマーガレットに置き換わっていると考えても良いでしょう。





 本品は第一次世界大戦以前のフランスで制作されたものです。フランスをはじめこの時代のヨーロッパでは、富の大半が富裕層に集中していました。たとえば 1910年のフランスにおいて、上位一パーセントの富裕層が富の70パーセント近くを所有していました。富裕層の範囲を上位十パーセントに広げると、この階層が富の九割を独占し、残りの一割を90パーセントの国民が分け合う状況でした。「一部の富裕層以外は、全員が下層階級」というように、社会が極端に二極分化していたのです。このような時代に作られた銀無垢メダイは、大多数の人々にとって、めったなことでは手に入らない高価な品物でした。本品もそのようなもののひとつであり、突出部分に見られる軽度の磨滅は、大切に、且つ肌身離さず愛用された品物であることを物語っています。

 本品は真正のアンティーク品であり、古い年代を考えれば十分に良好な保存状態です。大きな商品写真は実物の面積を数十倍に拡大してあるので突出部分の磨滅がよく判別できますが、実物を肉眼で見るとたいへん美しく、時を経た物のみが獲得する古色と優しい丸みが、現代のものには決して真似のできない趣きを醸しています。





本体価格 18,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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