世界を統べる神の愛 《スカプラリオのメダイ 17.5 x 15.3 mm》 フィクスによる高品質の金張り製品 フランス 十九世紀末から二十世紀初頭


突出部分を含むサイズ 縦 17.5 x 横 15.3 mm ※ 可動環を除く。



 百年以上前、十九世紀末から二十世紀初頭頃のフランスで制作されたスカプラリオのメダイ。材質はドゥブレ・ドール(金張り)です。




 メダイの一方の面には、イエス・キリストの上半身を浮き彫りで大きく表しています。十字架付きの後光を戴くキリストは、右手を差し出して罪びとを差し招いています。その手のひらには釘が貫通した痛々しい傷痕が見えます。

 本品をはじめとするメダイユ・スカピュレール(仏 une médaille scapulaire スカプラリオのメダイ)の片面には、聖心のキリストを浮き彫りにするのが通例となっています。スカプラリオのメダイにおけるキリストは、衣の前を開き、胸に燃える聖心を指し示す姿で表現されるのが普通です。左手に聖心を載せるキリストは、たいへん珍しい作例です。




(上) Leonardo da Vinci, "SALVATOR MUNDI" (the Cook version), 1499 or later, Oil on walnut, 65.5 x 45.1 cm, Private collection 2011年に再発見された作品。


 キリスト像の伝統的図像表現に、サルヴァートル・ムンディー(羅 SALVATOR MUNDI 世の救い主)と呼ばれる類型があります。サルヴァートル・ムンディー型のキリストは右手で罪びとに祝福を与え、左手にグロブス・クルーキゲル(羅 GLOBUS CRUCIGER 世界球)を持っています。キリストの掌中に球が収まるさまは、キリストの支配権が全宇宙に及ぶことを象徴します。





 翻って本品メダイの浮き彫りでは、キリストの左手に聖心が載っています。すなわち本品のキリスト像に彫られた聖心はサルヴァートル・ムンディーの世界球に相当するのであって、これは世界を統べ治める神と救い主の愛の可視的表現となっています。

 サルヴァートル・ムンディーのキリスト像は威厳に満ちています。これに対して本品のキリスト像は右手を貫く釘の痕を示しつつ、受難の原因となった罪ある人々を差し招いています。キリストの左手に載る聖心は、価値無き罪びとを愛する激しい炎を噴き上げています。本品のキリスト像は伝統的なサルヴァートル・ムンディー像に倣い、後者と同等の威厳を備える一方で、世界球を聖心に置き換えることにより、キリスト教の本質であるアガペー(希 ἀγάπη 無価値な者に対する神の愛)をとりわけ強調しています。





 もう一方の面には幼子イエスを右腕に抱くカルメル山の聖母が浮き彫りにされています。聖母子は戴冠し、聖母は左手で、イエスは右手で、それぞれ茶色のスカプラリオを世の人々に授けようとしています。有翼の童子として表された五体のケルビムが、聖母子を取り巻くように浮き彫りにされています。

 旧約聖書において、ケルビムは地上における神の座とされています。それゆえイエスを腕に抱き、あるいは膝に乗せる聖母は、まことのケルビムの座と呼ばれました。この場合の「ケルビムの座」とは、ケルビムが座る場所という意味ではなくて、ケルビムと同様の役割を果たす座という意味です。キリスト教絵画において、聖母あるいは聖母子を取り巻いて讃仰するケルビムは、聖母が地上でケルビムの役割を果たす女性であることを表します。





 本品メダイの上部には、メダイ本体と同素材の環が取り付けられています。環にはフィクス(FIX)の文字と、ドゥブレ・ドール(仏 doublé d'or 金張り)製品であることを示すマークが刻印されています。





(上) サヴァールのビジュ(仏 bijoux ジュエリーとアクセサリー)を掲載した 1907年頃の広告


 サヴァール・エ・フィスを創業したジュエリー職人フランソワ・サヴァール(François Savard)は、1829年、真鍮またはブロンズの表面に金を張ったドゥブレ・ドールを発明しました。フランソワ・サヴァールの発明は息子オーギュスト(Auguste Savard)に受け継がれ、1893年以降、フィクスまたはティトル・フィクス(TITRE FIXE フィクス品位)という商標で全盛期を迎えました。フィクスまたはティトル・フィクスは金が厚いために磨滅しにくく、変色も起こらない高品質のジュエリーで、十九世紀半ばから二十世紀前半のフランスにおいて人気を集めました。上の写真はパリのアクセサリー商 E. ブリエ(E. Boullier)が、ティトル・フィクスの商品を掲載した 1907年頃の広告です。





 上の写真は本品を男性店主の手に乗せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真で見るよりもひと回り大きなサイズに感じられます。







 本品は百年以上前のフランスで制作された真正のアンティーク品です。現代の金めっきに比べると、昔の金張りは金の層に十数倍の厚みがあるので、本品は現在でも美しい金色に輝いています。商品写真は実物を大きく拡大しているゆえに突出部分の摩滅が判別できますが、本品の実物を肉眼で見るとたいへん美しく、実用上、美観上とも問題はありません。

 長く愛用すると上部の環が破断する可能性がありますが、金色の撥環(ばちかん)やC環は容易に手に入りますから、いつでも交換できます。ご希望の方には環を無料で交換してお渡しします。注文の際にご用命くださいませ。





本体価格 9,500円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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