稀少品 青色ガラスによるエマイユ・シュル・バス=タイユ 《不思議のメダイ 直径 6.4 mm》 最小サイズの作例 フランス 1940年代頃


突出部分を除く直径 6.4 mm

フランス  1940年代頃



 1940年代頃にフランスで制作された不思議のメダイ。銀または銀色の金属に、トランスルーセント(半透明)の青色ガラスによるエマイユを施しています。フランスの銀細工工房のマークが、上部に突出した環に刻印されています。





 信心具として制作されるメダイユを、我が国ではメダイと呼んでいます。聖母マリアのメダイにはさまざまな種類がありますが、不思議のメダイ(仏 la médaille miraculeuse)は種類とサンプル数のいずれにおいても、ルルドの聖母のメダイと並んで最も数多く作られているもののひとつです。

 不思議のメダイとルルドの聖母のメダイは、いずれも無原罪の御宿りのメダイに属します。これら二類型を含む無原罪の御宿りのメダイは、聖母のメダイのみならず、キリストのメダイ、諸聖人のメダイを含むあらゆるメダイの中で、おそらく最も多く制作されています。





 不思議のメダイに関しては、カトリーヌ・ラブレが幻視した二通りの聖母のうち、ウィルゴー・ポテーンスの聖母は教会当局が図像化を許さず、両腕を斜め下に伸ばした聖母像のみがメダイに刻まれました。両腕を斜め下に伸ばした聖母像は、伝統的イコノロジーに基づく無原罪の御宿り像と完全に一致しています。人祖アダムの妻エヴァを誘惑した蛇は悪魔の象徴ですが、新しきエヴァであるマリアは罪の支配を受けません。聖母は裸足ですが、もともと罪を持たない無原罪の御宿りは、如何なる罪の影響も受けなないゆえに、蛇は聖母を害することができません。それゆえ伝統的図像に描かれる無原罪のマリアは、裸足で蛇を踏みつけています。聖母が裸足で蛇を踏みつける表現は、ルルドの聖母が裸足でを踏んでいるのと似ています。




(上) Giovanni Antonio da Pesaro, "Madonna della Misericordia", 1462, Chiesa di Santa Maria dell'Arzilla, Pesaro


 ほとんどの不思議のメダイにおいて、聖母が羽織るマントには多数の襞があり、広げると非常に大きなサイズであることが予想されます。大きなマントを羽織ったマリアは、憐みの聖母です。憐みの聖母はラテン語でマーテル・ミセリコルディアエ(羅 MATER MISERICORDIÆ)、イタリア語でマドンナ・デッラ・ミゼリコルディア(伊 la Madonna della Misericordia)と呼ばれるキリスト教図像の一類型で、大きなマントの下に罪びとを匿(かくま)う聖母の姿を描きます。

 上の写真はペーザロ(Pesaro マルケ州ペーザロ・エ・ウルビーノ県)に生まれた十五世紀の画家ジョヴァンニ・アントニオ・ベッリンツォーニ(Giovanni Antonio Bellinzoni da Pesaro, 1415 - 1477)の作品で、俗人男女と修道士、修道女のほか、苦行信心会の会員と思われる頭巾姿の男性たちの姿も見えます。





 カトリーヌ・ラブレが聖母から示されたとされる不思議のメダイの意匠は、執り成しを求める祈りの言葉が、無原罪の御宿りを取り囲んでいます。本品においても極小の文字によるフランス語の祈りが聖母の周囲に刻まれています。

  Ô Marie conçue sans péché, priez pour nous qui avons recours à vous.  罪無くして宿りたまえるマリアよ、御身に頼るわれらのために祈りたまえ。


 上の写真に移っている定規のひと目盛りは、一ミリメートルです。聖母の身長はわずか四ミリメートルほどですが、通常サイズのメダイの浮き彫りと同様に丁寧に彫られています。





 「不思議のメダイ」と無原罪の御宿りの一般的なメダイの違いの第一は、不思議のメダイにおいて、執り成しを置留める祈りの言葉が聖母像を取り巻いていることです。第二の違いは、不思議のメダイにおいて、上の写真のような意匠が裏面に彫られていることです。

 メダイ中央部にはインマクラータ・マリア(羅 INMACULATA MARIA 汚れなきマリア、無原罪のマリア)と十字架のモノグラム(組み合わせ文字)があります。このモノグラムは救いの経綸における聖母子の協働を表しています。モノグラムの下には、向かって左側にイエスの聖心、右側にマリアの聖心が刻まれています。イエスの聖心は神から発して人間へと向かう愛を、マリアの聖心は人間から発して神と救い主に向かう愛を、それぞれ象徴しています。これらを囲むように、十二の星が刻まれています。これらは「ヨハネの黙示録」十二章一節において女が被る冠であるとともに、十二使徒すなわち全キリスト教会の象徴でもあります。





 本品に使用されている金属についてですが、銀である場合は八百パーミル(八十パーセント)の銀です。銀でない場合は、銀めっきを施したベース・メタルかもしれませんし、フランス語でマユショル(仏 maillechort)またはアルジャンタン(仏 argentin)と呼ばれる合金かもしれません。検質印(ホールマーク)があれば銀製品を確実に判別できますが、本品には検質印がありませんので、金属の種類は不明です。

 検質を受けることは法律的な義務ではなく、銀製品工房の判断に任されています。製品を検質所に提出して刻印を受けるには、銀製品工房から検質所に手数料を支払う必要があります。たとえばわが国では造幣局に頼めば検質印を受けられますが、金属の種類によって一個あたり 780円から 10,730円の手数料が必要です。大きなサイズの貴金属製品を不特定多数の人に向けて販売する場合、価格に地金代が反映していることを買い手に納得してもらうためにも、貴金属製品工房は検質所に手数料を払って検質印を刻印してもらいます。しかしながら品物のサイズがごく小さい場合や、特定の人のために一点のみ制作された場合などは、貴金属製品であっても検質所に提出されず、刻印が無いことがあります。





 上の写真に写っている定規のひと目盛りは、一ミリメートルです。モノグラムの下にある二つの聖心はいずれも一ミリメートルほどの極小サイズですが、心臓の上部には燃え上がる愛の炎がきちんと彫られています。聖母の心臓は悲しみの剣に刺し貫かれています。





 本品は指先に載る小さなメダイですが、浮き彫りの細部や祈りの言葉のように肉眼で判別できない部分まで、たいへん丁寧に制作されています。筆者は長年に亙ってフランス製メダイを扱い、不思議のメダイも数多く見ていますが、本品はこれまでに目にした中で最小の作例です。サンタ・クルスの聖母のメダイを本品と組み合わせ、計二点を下記価格にてお譲りいたします。本品のみをお譲りする場合、価格は 4,500円です。本品の在庫数は一点のみです。





本体価格 7,800円  ※ サンタ・クルスの聖母のメダイとも。

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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