稀少品 「ルルドの聖母は決して見棄てたまわない」 大きな喜びと幸福のメダイ 直径 16.2 mm


突出部分を除く直径 16.2 mm

フランス  1870年代後半



 ルルドの聖母のブロンズ製メダイ。本品は正面から見たときに上部の吊り輪の穴が見えません。フランスにおいてこのような方向に吊り輪が取り付けられるのは、概ね 19世紀半ばころまでに制作されたメダイの特徴です。裏面に彫られたルルドのバシリカは、1876年に建てられたものです。したがって本品の制作年代はバシリカができて間もない 1870年代後半頃と考えられ、ルルドのメダイとしては最初期に属します。本品は一見したところ同時代の類品と似通っていますが、「聖母がフランスに与え給う庇護と恩寵」をとりわけ強調し、溢れる喜びを感じさせる作例となっています。





 一方の面には、右腕にロザリオを掛けた聖母の立ち姿が浮き彫りにされています。1853年 3月25日、16回目の出現の際、少女ベルナデットが四回繰り返して聖母に名前を問うと、聖母は目を天に向け、両手を胸の前で組んで、「わたしは無原罪の御宿りです」(Je suis l'Immaculée Conception.) と答えました。メダイに表されているのは、このときの聖母の姿です。聖母に執り成しを求めるフランス語の祈りが、周囲に刻まれています。

  Notre-Dame de Lourdes, priez pour nous.  ルルドの聖母よ、我らのために祈りたまえ。

  聖母の背景には、たくさんのフルール・ド・リス(fleur de lys フランス語で「百合の花」の意)が散りばめられています。百合は「純潔」「摂理への信頼」「神による選び」を意味するゆえに、キリスト教の図像体系において聖母マリアを卓越的に象徴し、そのアトリビュートとして描かれます。フルール・ド・リスも百合と同じく、聖母マリアを象徴します。


 しかるにフルール・ド・リスは、フランスの象徴ともされています。フルール・ド・リスとフランス王権が決定的に結びついたのはカペー朝の時代で、これはシュジェ、及びクレルヴォーの聖ベルナールの影響と考えられています。

 シュジェ (Suger, 1081 - 1151) はサン=ドニ修道院長となり、最初のゴシック建築であるサン=ドニ聖堂を建設した人物です。シュジェはカペー朝第5代国王ルイ6世 (Louis VI le Gros, 1081 - 1137) と同い年で、10歳のときからの親友でした。ルイ6世とその子ルイ7世 (Louis VII le Jeune, 1120 - 1180) に仕え、ルイ7世が十字軍で不在であった間は摂政も務めました。クレルヴォーの聖ベルナール (St. Bernard de Clairvaux, 1090/91 - 1153) はシトー会の改革者であり、当時の西ヨーロッパで最も影響力のある宗教人でした。アベラールとの論争に勝ったことや、ヴェズレーで第一回十字軍を勧説したことによっても知られています。





 いずれも聖母崇敬に熱心であったシュジェとベルナールは、カペー家を聖母の庇護の下に置くべく王室の聖母崇敬を推し進め、これに伴って聖母の象徴である百合文、すなわちフルール・ド・リスも多用されるようになりました。上の図はシュジェが仕えたルイ6世の印璽(印影)です。王はフルール・ド・リスの王冠を被り、左手にフルール・ド・リスの王笏、右手にフルール・ド・リス形装飾品を持っています。





 メダイのもう一方の面にはルルドに建設されたバシリカが大きく浮き彫りにされ、周囲に「バジリク・ド・ノートル=ダム・ド・ルルド」(Basilique de Notre-Dame de Lourdes フランス語で「ルルドの聖母のバシリカ」の意)と刻まれています。バシリカの背景にも多数のフルール・ド・リスが散りばめられています。

 フランス王室の紋章に関連してさきほど述べたように、フルール・ド・リスは「聖母による庇護」を表します。ルルドに聖母が現れ、バシリカが建てられ、このメダイが作られたのは、「悔悛のガリア」の時代でした。ルイ14世の時代以降、直近には普仏戦争の敗北に至るまで、「カトリックの長姉」であるはずのフランスが数々の災厄に見舞われたのは不信仰のせいでしたが、それにもかかわらず聖母は不肖のフランスを選んで、ルルドに出現し給いました。信仰深い当時の人々にとって、この事実はいかに心温まるものであったことでしょうか。バシリカの背景に散りばめられたフルール・ド・リスは、この世の如何なる母よりも慈しみ深きマリアが、罪深きフランスを決して見棄てずに愛し、祝福し、執り成し給うことを表しているのです。




 本品は百四十年近く前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、古い年代にもかかわらず、きわめて良好な保存状態で、いずれの面も細部までよく残っています。特筆すべき問題は何もありません。

 悲しい悔悟に沈む 19世紀後半のフランスにとって、ルルドにおける聖母の出現は、「それでも聖母は見棄て給わない」という喜ばしいメッセージとなりました。小さなメダイに大きな喜びを表現した本品は、「悔悛のガリア」において幸福感に満ち溢れた稀有な作例となっています。





本体価格 15,800円 販売終了 SOLD

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