稀少品 スカプラリオのメダイ 「ルルドの聖母」のブロンズ製ケース付


アルミニウム製メダイのサイズ 20.0 x 14.0 mm (突出部分を含む)

ブロンズ製ケースのサイズ 26.5 x 17.2 mm (突出部分を含む)

フランス  1890年代



 19世紀のフランスで制作されたイエズスの聖心カルメル山の聖母ルルドの聖母のメダイ。「イエズスの聖心」と「カルメル山の聖母」はアルミニウム製「スカプラリオのメダイ」の表裏を為し、ひとまわり大きな「ルルドの聖母」のブロンズ製ケースに納められています。下の写真はひとつの品物の表裏を並べて示したものです。商品の数は一つです。





 ブロンズ製ケースは上部が蝶つがいになっており、一方の面にルルドの聖母、もう一方の面にルルドのバシリカを、楕円形の画面に打ち出しています。楕円形部分が突出したデザインは、19世紀後半のフランスで流行した漆喰彫刻の額を思わせます。表裏のケースが合わさる部分には、ミル打ち(アンティーク・ファイン・ジュエリーに施される彫金の一種)状の装飾があります。

 ケースは 8.3ミリメートルの厚みがあり、ブロンズの色も重厚ですが、小さなアルミニウム製メダイが一枚入っているだけですので意外に軽く、常用しても苦になりません。小さな物を追加して入れることもできますし、ブロンズ製ケースに他の物を入れて、アルミニウム製メダイとは別に使うこともできます。

 ケースはバシリカを打ち出した方がひと回り小さく、聖母を打ち出した方の内側にはまり込む単純な構造ですが、適度の摩擦によってしっかりと閉じられます。激しく振ると開きますが、通常の着用中に自然に開くことはないでしょう。聖母を打ち出した方の最下部に切れ込みがあり、バシリカを打ち出した方の最下部の出っ張りがここに嵌まります。開けるときは、この出っ張りを手掛かりにして簡単に開くことができます。





 ブロンズ製ケースの片方の面には、マサビエルの岩場に出現したルルドの聖母を浮き彫り状に打ち出しています。聖母の姿勢は右脚に体重をかけた優雅なコントラポストです。撮影角度の関係で写真では分かりづらいですが、右腕に十五連のロザリオを掛けています。1858年3月25日、16回目の出現の際、ベルナデット・スビルーに名を問われたルルドの聖母は、目を天に向け、下ろしていた両手を胸の前で組んで、「私は無原罪の御宿りです。」と答えました。本品に打ち出されているのはこのときの様子で、聖母は胸の前に手を合わせています。聖母を囲むように「ノートル=ダム・ド・ルルド」(Notre-Dame de Lourdes ルルドの聖母)と記されています。





 もう片面にはルルドのバシリカが刻まれています。このバシリカはマサビエルの岩場を蔽うように建てられており、下部には岩場が見えています。楕円形画面は縦13ミリメートル、横9ミリメートルという小さなサイズであるにもかかわらず、岩場の自然の岩石がごつごつした様子も建物の細部も見事に再現されており、あたかも眼前にルルドの風景を見るかのように優れた出来栄えです。バシリカを囲むように、「サンクチュエール・ド・ルルド」(Sanctuaire de Lourdes 聖地ルルド)の文字が記されています。


 ブロンズ製ケースは蝶つがい式になっており、これを開くとスカプラリオのメダイが現れます。スカプラリオは司祭、修道士の肩布を小型化した布製の信心具ですが、片面にイエズスの聖心、もう片面にカルメル山の聖母を刻んだメダイを「スカプラリオのメダイ」と呼んで、布製信心具の代用としています。スカプラリオ、及びスカプラリオのメダイは、これを肌身離さず身に着ければ死後に地獄に落ちることがなく、救いを証明し、危険を防ぎ、安らぎと契約のしるしとなると言われています。





 本品に封入されたスカプラリオのメダイはアルミニウム製で、突出部分を含むサイズが 20 x 14ミリメートルと小さめです。

 アルミニウムは19世紀に発見された金属ですが、イオン化傾向が大きいので塩(えん)の電解によって分離・析出させることができず、1890年頃までは金 (Au) よりも高価でした。ボーキサイトからアルミニウムを安価に精錬する方法が発見されたのは1886年、アメリカとスイスで産業規模の生産が始まったのは1888年のことに過ぎません。1852年から1870年までフランス皇帝であったナポレオン三世は、通常の賓客を金銀の食器で、特別に大切な賓客をアルミニウムの食器で、それぞれもてなしました。アルミニウムは高価、稀少であるゆえに、当時はジュエリーの素材としても使われました。

 1886年に低コストの精錬方法が見つかったとはいえ、それほど普及していなかった19世紀末のアルミニウムには、いまだ稀少な貴金属のイメージがあったものと思われます。19世紀末から20世紀初頭頃に制作されたメダイやロザリオなど信心具には、アルミニウムが良く使われています。





 本品のアルミニウム製メダイの片面には、カルメル山の聖母の立ち姿が刻まれています。聖母が右腕に幼子イエズスを抱き、幼子が右手にスカプラリオを持つのは通例どおりの様式ですが、本品において聖母は左手首のあたりにロザリオを掛けています。「カルメル山の聖母」の図像において、聖母子はともにスカプラリオを持って描かれるのが普通です。スカプラリオを持たずに、腕にロザリオを掛けた「カルメル山の聖母」の図像はたいへん珍しく、私は初めて目にしました。

 このメダイの彫刻は打刻による浅浮き彫りですが、その細密さには驚かされます。上の写真は実物の面積を約百倍に拡大してあり、定規のひと目盛は1ミリメートルです。聖母の頭部は直径1ミリメートルほどで、幼子の頭部はさらに小さいですが、目鼻立ちは整っています。人体のプロポーションも正確で、手足の指やイエズスの髪、聖母の衣の襞、ロザリオのビーズまでもが克明に再現されています。執り成しを願うフランス語の祈りが、高さ1ミリメートル未満の文字によって、聖母子を取り巻くように刻まれています。

  Notre-Dame du scapulaire, priez pour nous.  スカプラリオの聖母よ、われらのために祈りたまえ。





 アルミニウム製メダイのもう一方の面には、聖心を示すキリストが刻まれています。キリストは右手に開いた釘の孔を示しつつ、やはり釘の孔のある左手で胸を開いて、聖心、すなわち人智を絶する神の愛を示しています。キリストの聖心(Sacré-Cœur サクレ=クール)はあまりにも強い愛ゆえに炎を噴き上げ、まばゆい光輝を発しています。受難の象徴である十字架が聖心の上部に突き立ち、茨の冠が聖心を囲んでいます。キリストを取り巻いて、祈りの言葉がフランス語で記されています。

  Sacré-Cœur de Jésus, ayez pitié de nous.  イエズスの聖心よ、われらを憐れみたまえ。

 上の拡大写真でご覧いただけるように、キリストの顔は縦3ミリメートルほどの極小サイズにもかかわらず、大型の浮き彫り彫刻に劣らない緻密さで丁寧に彫られており、柔和な眼許と穏やかに結ばれた口許に、溢れるような慈愛を示しておられます。

 スカプラリオのメダイは19世紀よりも以前からあった信心具ですが、類品に比べてもとりわけ心をこめて作られたと思われる本品からは、ちょうどこの時期にモンマルトルにサクレ=クール教会を建てた19世紀フランスの人々、「悔悛のガリア」(GALLIA POENITENS) の祈りが伝わってきます。ブロンズ製ケースから独立させて使いやすいように、アルミニウム製メダイに環を取り付けました。当店で後付けした環は、ご不要であれば簡単に取り外せます。


 本品は百年以上前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、たいへん良好な保存状態です。類品中とりわけ美しいスカプラリオのメダイは、通常であれば浅浮き彫りが磨滅して細部が判別できなくなっているはずですが、本品の場合はたまたまケースで守られていたために、制作された当時のままの状態です。

 ブロンズ製ケースは突出部分が磨滅していますが、特筆すべき損傷は無く、聖母の姿勢や衣の襞、右腕に掛けたロザリオ、バシリカの細部や地下の岩場のごつごつした様子などの細部がよく残っており、真正のアンティーク品ならではの美しいパティナ(古色)が全体を均一に被っています。蝶つがい等、実用性に関わる部分にも、問題は一切ありません。実物は写真で見るよりもはるかに重厚で美しく、必ずご満足いただけます。





本体価格 18,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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