美麗な高級品 フレデリック・ヴェルノン作 われは無原罪の御宿りなり ルルドの聖母 重厚な銀無垢メダイ


突出部分を除くサイズ 23.5 x 20.0 mm  最大の厚み 2.9 mm  重量 5.9 g

フランス  19世紀末頃



 典雅な作品群で知られるフランスのメダイユ彫刻家、フレデリック・ヴェルノン (Charles-Frédéric Victor Vernon, 1858 - 1912)が、19世紀末頃に製作した貴重な小品、「ルルドの聖母」。比重の大きい800シルバー無垢でできているため、50円硬貨ほどの大きさであるにもかかわらず 500円硬貨ほどの重量があり、手に取ると意外な重みを感じます。現状では上部の環が削り落とされていますが、環を元通りに溶接することも可能です。





 表(おもて)面は、胸の前に手を合わせて天を仰ぐ聖母を大きく捉えた浮き彫り彫刻となっています。1858年3月25日、16回目の出現の際、ベルナデットに名を問われた聖母の「われは無原罪の御宿りなり」(Je suis l'Immaculée Conception.) という言葉が、周囲にフランス語で刻まれています。

 あたかも光が闇を照らすかのように、聖母から発出しているのは、聖母を通して人間に与えられる神の愛と恩寵(恵み)です。天使ガブリエルから受胎を告知されたとき、マリアは10代の少女であったにもかかわらず、神への全面的な信仰により、救い主を産むという大任を引き受けました。動じることも恐れることも無く、却って歓びを以って受胎告知を受け容れた少女マリアの信仰は、「ルカによる福音書」1章に記録されている賛歌「マーグニフィカト」にも、よく表われています。本品の浮き彫りにおいて聖母から発出する光は、少女マリアがこの完全な信仰により、神の愛と恩寵を伝える仲立ち、「恩寵の器」となったことを表しています。


【下・参考画像】 19世紀中頃のカニヴェ 「恩寵の器」("Le Cœur Immaculé de Marie", Bouasse-Lebel) 当店の商品です。




 聖母から発出する光は、また、神とともに天上にある聖母の栄光をも表しています。プロテスタントと違って、カトリックでは聖母マリアを大切に崇敬しますが、それは上述のように完全な信仰を以って受胎告知を受け容れたマリアが、恩寵の器であるとともに、キリスト者の鑑(かがみ)であるからです。 プロテスタント思想においては、人間は善を為すことができません。人間にできるのは、罪を犯すことだけです。しかるにカトリックにおいては、人間は善を為す自由を有すると考えられています。神は救いを強制せず、マリアは自由意志を以って、全人類のために救いを受け入れるという善を為したのです。

 ルルドのメダイの彫刻において、多くの場合、聖母はちょうど受胎告知を受けた頃のように若々しい少女の姿で表されます。これは、出現した聖母が「とても若かった」と語る目撃者、聖ベルナデットの言葉に拠ります。


【下・参考画像】 アドルフ・ペナンによるメダイ 「ルルドの聖母よ、われらのために祈りたまえ」 23.5 x 15.0 mm 当店の商品です。




 しかるにこの作品において、ヴェルノンが刻む聖母は大人びており、10代の少女には見えません。20代か30代くらいの女性に見えます。マリアの優れた内面、聖母が聖母たる所以(ゆえん)である卓越した信仰心を、メダイユ彫刻家ヴェルノンは、成熟した女性の姿に仮託して表現しているのです。


 本品


 考えてみれば、聖母が無原罪の御宿りとして生を享け給うたことは、神により永遠の相の下(もと)に立てられた救世計画の一部であって、ルルドの聖母を少女の姿で表さなければならない必然性はありません。いっぽう大人の女性として表すべき必然性も無いわけですが、他の誰よりも優れたマリアの信仰を、ひとりの女性の姿に仮託して表現するとすれば、少女としてよりもむしろ成熟した女性として表すほうが、作品の製作意図が鑑賞者に伝わりやすいでしょう。受胎告知や聖母の御訪問をテーマにした数々の美術作品において、聖母は成熟した女性の姿に描かれています。これは歴史上の出来事が起こった時点におけるマリアの年齢をありのままに再現することを目指さず、むしろ神への絶対的・無条件的な信仰という目に見えない価値を可視化すべく、ひとりの女性マリアの姿に仮託した芸術的表現と考えることができます。


【下・参考画像】 Leonardo da Vinci, "L'Annunciazione", c. 1472 - 75, olio e tempera su tavola, 217 x 98 cm, La Galleria degli Uffizi, Firenze.




 聖母の左肩に、メダイユ彫刻家フレデリック・ヴェルノンのサイン (VERNON) が刻まれています。フレデリック・ヴェルノンは典雅なアール・ヌーヴォー様式の作品群で知られ、ジュール=クレマン・シャプラン (Jules-Clément Chaplain, 1839 - 1909)ルイ・オスカル・ロティ (Louis Oscar Roty, 1846 - 1911) の後継者と位置付けられています。





 裏面にはルルドのグロット、すなわちルルドの聖母が出現したマサビエルの岩場が浮き彫りにされています。


 聖母が出現した当時のマサビエル


 マサビエルの岩場の上にはバシリカが建設されて、現在では岩場はクリプト(地下聖堂 聖堂の地上部よりも低い部分)になっています。聖母が出現したグロット(岩窟)のくぼみには、右腕にロザリオを掛けたルルドの聖母像が安置され、体が不自由な人、病気の平癒を願う人を含む年間数百万人の巡礼者を集めています。


【下・参考画像】 車椅子の若者が、ルルドのクリプトで祈りを捧げています。グロットに背を向けて鏡に聖母像を映しているのは、頭部あるいは背中側の患部を聖母に近づけるためでしょう。

 「パリ・マッチ」 No. 462 《ルルドの聖母出現百周年記念号》 1958年2月15日発行 当店の商品


【下・参考画像】 ルルドのクリプトで祈りを捧げる人々を描いたブアス=ルベルのカニヴェ。当店の商品。




 本品裏面の浮き彫りでは、グロットの前で聖母に祈りを捧げる巡礼者たちの姿が表されています。病者を担架で運んで来た人は、病者の家族でしょうか。親しい友人たちでしょうか。ひとりは病者の体を支え、もうひとりは両腕を挙げて、病気の治癒をわが事のように聖母に嘆願しています。グロットに掛かった数多くの松葉杖は、身体の障害や病気が快癒した巡礼者たちからの感謝の捧げものです。





 上の写真は実物の面積を80倍以上に拡大しています。メダイの実物において、聖母像の高さはおよそ3.5ミリメートル、幅はおよそ1ミリメートル、両腕を挙げて立っている人の身長、及び柵の高さはおよそ4ミリメートルです。非常に小さなサイズにもかかわらず、聖母像も巡礼者たちも人体の正しいプロポーションで彫られており、ごつごつした岩の様子や一本一本の松葉杖、柵の先端部にある槍状の造形など、ルルドのクリプトのあらゆる細部がありのままに再現されています。あたかもその場に身を置いているかのような臨場感ですが、メダイユの実物において、最も手前に突出した部分と、最もくぼんだ部分の高低差は、1ミリメートルに満たないのです。メダイユ彫刻家フレデリック・ヴェルノンの卓越した芸術的感覚と、驚嘆すべき職人的技量が、この小品に凝縮されています。


 本品は高名な彫刻家による作品で、アール・ヌーヴォー期に制作された真正のアンティーク品ですが、古い年代にかかわらず、細部まで綺麗に残っています。肉眼では判別できない小さなきずが拡大写真では判別できますが、実物はたいへん美しく優れた保存状態です。なお現状で削り落とされている上部の環は、ご希望により、2,000円ほどのコストで元通りに溶接できます。





本体価格 34,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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