アドルフ・ペナン、リュドヴィク・ペナン及びジャン=バティスト・ポンセ作 「ルルドの聖母」 アール・デコのメダイ 20.7 x 16.1 mm


突出部分を含むサイズ 縦 20.7 x 横 16.1 mm

フランス  1920 - 30年代



 アール・デコ様式に基づいて制作された「ルルドの聖母」のメダイ。20世紀に活躍したアドルフ・ペナンの作品を表(おもて)面に、教皇御用達のメダイユ彫刻家であったリュドヴィク・ペナン、及び幾分古風なペナンの作品を原作者の没後に美しく甦らせたジャン=バティスト・ポンセによる作品を裏面に採用しています。





 八角形のメダイ内部を五角形の枠で区切った表(おもて)面の意匠は、アールデコ様式に基づきます。五角形の内部には歳若いルルドの聖母を浮き彫りにしています。横顔にあどけなさの残るマリアは、口許に微かなほほえみを浮かべつつ、天上に眼差しを注いでいます。家の中に突然天使が入ってきて、メシアの受胎を告知されるという異常な出来事にもかかわらず、少女マリアは「お言葉どおり、この身に成りますように」と答えました。アブラハムやヨブにも勝るこの信仰ゆえに、マリアは神の花嫁として選ばれたのです。本品を制作したメダイユ彫刻家は、優れた芸術的感覚と卓越した技量により、「無条件に神に付き随う信仰」という不可視の価値を形象化しています。

 マリアの後ろにペナン (PENIN) の署名が刻まれています。リヨンのペナン家は、19世紀前半以来、四世代にわたってメダイユ彫刻家を輩出しました。"PENIN" という署名はリュドヴィク・ペナン (Ludovic Penin, 1830 - 1868) と、その孫であるアドルフ・ペナン (Adolphe Penin, 1888 - 1985) によって使われています。「ペナン」の署名が裏面と異なって「ポンセ」との連名になっていないこと、リュドヴィク・ペナンが単独で制作した浮き彫りとは作風が異なること、本品の制作年代が 1910年代から 1930年代であることに基づきいて判断すると、本品の彫刻はアドルフ・ペナンの作品であることがわかります。





  裏面は直径 11ミリメートルの円内に、ルルドにおける聖母出現の場面が浮き彫りにされています。岩場に出現したマリアは右腕にロザリオを掛け、胸の前に両手を合わせて、「わたしは無原罪の御宿りです」と名乗っています。ベルナデットは祈りを象徴するヴェールを被り、手首にロザリオを掛け、両手を胸の前に合わせて跪いています。二人を取り巻くように、聖母が名乗ったときの言葉がイール=ド=フランス方言(標準フランス語)で記されています。

  Je suis l'Immaculée Conception.  わたしは無原罪の御宿りです。

 マリアは茨の繁みに裸足で立っているにもかかわらず、その足は傷ついていません。茨の棘は原罪、及び原罪がもたらす呪いを象徴します。棘に傷つくことなく茨の繁みに立つマリアは、原罪をその身に帯びない無原罪の御宿り、「ロサ・ミスティカ」(ROSA MYSTICA ラテン語で「神秘の薔薇」の意)です。

 下の写真に写っている定規のひと目盛は 1ミリメートルです。極小のミニアチュール彫刻であるにもかかわらず、人体は正しい比例で造形されており、ごつごつした岩場の様子やまばらに生える雑草までもが臨場感豊かに再現されています。本品の優れたできばえは、彫刻を見る者自身の内に深い宗教感情を呼び起こします。





 円形画面の右下に "P. P." のサインが彫られています。ペナン家から出た最初のメダイユ彫刻家リュドヴィク・ペナン (Ludovic Penin, 1830 - 1868) は豊かな才能を認められ、弱冠34歳であった1864年、当時の教皇ピウス9世により、カトリック教会の公式メダイユ彫刻家 (graveur pontifical) に任じられましたが、惜しくもその4年後に亡くなってしまいました。

 早逝の芸術家リュドヴィク・ペナンは1870年代からアール・ヌーヴォーに至る時代を知らずに亡くなったわけですが、リュドヴィク・ペナンの作品は、三歳年上の同郷の芸術家ジャン=バティスト・ポンセ (Jean-Baptiste Poncet, 1827 - 1901) の手によっていわば「現代化」され、1870年代以降においても愛され続けました。ジャン=バティスト・ポンセは画家でもあり、メダイユ彫刻家でもある人で、その作品は質朴な作風のペナンに比べ、都会風に洗練された典雅さが特徴です。ペナンの没後にポンセが手を加えて「現代化」した作品には、"PENIN PONCET", "P P LYON" 等、ふたりの名前が併記されています。





 本品はおよそ八十年以上前のアール・デコ期に制作された真正のアンティーク品ですが、古い年代にもかかわらず良好な保存状態で、細部までよく残っています。いずれも優れたメダイユ彫刻家であるアドルフ・ペナン、リュドヴィク・ペナン、ジャン=バティスト・ポンセの才能が小さなメダイに注がれて、数ある「ルルドのメダイ」のなかでもひときわ薫り高い佳作に仕上がっています。





本体価格 13,800円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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