高級品　「ノートル＝ダム・ド・ルルド」　二色のガラスによるエマイユ・シュル・バス＝タイユ　八角形の銀製メダイ　20.0 x 16.0 mm


突出部分を含むサイズ　縦 20.0 x 横 16.0 mm

フランス　　1920 - 30年代

　

　直線を多用した左右対称の幾何学的デザインによるアール・デコ様式のメダイ。メダイの素材として最も高級な銀を使用し、二色のガラスでエマイユ（琺瑯、七宝）を掛けています。フランスにおいて800シルバー（純度 800/1000の銀）を示す「蟹」のホールマークが、上部の環に刻印されています。指の間にメダイを挟むと、中央がわずかに膨らんでいることがわかります。暖色系の色と相俟って、ガラスの滑らかさが優しい感触を与えてくれます。





　メダイ（メダイユ　médaille）は円形が基本の形ですが、本品は特色のある八角形のシルエットを有します。神が六日で天地を創造し、七日目に休まれたという「創世記」冒頭の記述に基づき、キリスト教では「七」が完結性を有する完全数と考えます。したがって「七」に続く自然数である「八」は、復活と再生とを意味します。かつて全身を水に浸す形式の洗礼（浸礼）が行われていた時代に、礼拝堂とは別に建てられていた洗礼堂は、この理由によって八角形のプランを有するのが常でした。

　人祖たる女性エヴァは創世記3章において善悪を知る木の実を食べて人類に呪いと死をもたらしました。これに対して聖母マリアはイエズス・キリストを産むことで、人類に救いと再生をもたらした「新しきエヴァ」であるゆえに、八角形はマリアのメダイにふさわしい形といえます。





　一方の面には、ルルドの聖母の横顔を浮き彫りにしています。ヴェールを被り、俯（うつむ）きがちに瞑目する聖母は、マーテル・ドローローサ（MATER DOLOROSA　ラテン語で「悲しみの聖母」）のように見えます。

　聖母の出現を受けたルルドの少女、ベルナデットの証言によると、聖母は十代半ばの少女の姿でした。しかしながら本品の浮き彫りは永遠の相の下にある宗教美術であるゆえに、イエズスの誕生から受難までの間に起こるべき数々の心痛む出来事を、メダイユ彫刻家は若きマリアの横顔に投影したのでしょう。

　マリアの浮き彫りには紫色のガラス・エマイユが掛けられています。半透明ガラスのエマイユを浮き彫りに掛けて、立体性を強調するこの技法（エマイユ・シュル・バス＝タイユ）により、神秘的な奥行きと、精神性を孕む静謐さがよく表現されています。青と赤の中間色である紫は、天（青）と地（赤）を繋ぐ色であるゆえに、救い主の母マリアに相応しい色です。さらに紫はスミレの色でもありますが、地表近くに這うように育つスミレは謙譲、あるいは自己を無にする信仰の象徴であり、受胎告知の際、神に全てを委ねて、「お言葉どおり、この身に成りますように」(fiat mihi secundum verbum tuum.) とガブリエルに答えたマリアの信仰をも表しています。


（下・参考画像）　石版によるアンティーク小聖画　「お言葉どおり、この身に成りますように」（ブアス＝ジューヌ No. 3318）　フランス　当店の商品です。




　マリアを囲む部分には、茶色のガラスが掛けられています。茶色は土の色であり、創世記2章7節で「土（アダマ）から」作られた、と書かれている人祖アダムを連想させます。天と地を繋ぐ紫の聖母を茶色で囲んだ八角形のメダイのデザインは、救いと再生を求めて聖地ルルドに集まる人々の祈り、ならびに恩寵の器として人々を救い癒す聖母マリアの愛を、美しいエマイユ銀製品として形象化したものなのです。





　もう一方の面には、ルルドにおける聖母出現のシーンが浮き彫りにされています。茨の茂みに立つ聖母は腕にロザリオを掛け、胸の前に両手を合わせて斜め上方に顔を向けています。ベルナデットはヴェールを被って跪き、聖母に祈りを捧げています。マサビエルの岩場のごつごつした質感が、エマイユの色の深みによって写実的に強調されています。

　聖母が胸の前に両手を合わせ、斜め上方に顔を上げているのは、1858年3月25日、16回目の出現の際にベルナデットに4度続けて名を問われ、「わたしは無原罪の御宿りです」(Je suis l'Immaculée Conception.) と答えたときの姿です。

　本品はおよそ80年乃至90年前にフランスで制作されたものですが、古い年代にもかかわらずたいへん良好なコンディションです。特筆すべき問題はありません。実物は写真よりもはるかに美しく、末永くご満足いただけます。

本体価格　18,800円　販売終了　SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール（procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp）にてご注文くださいませ。




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