1933年は、ルルドに聖母が出現した 1858年から数えて 75周年めにあたります。この年は、12月8日、無原罪の御宿りの祝日に、教皇ピウス 11世により聖ベルナデット (Ste. Bernadette, 1844 - 1879) が列聖されたのをはじめ、さまざまな記念行事が行われ、この記念メダイが鋳造されました。メダイは片面にピウス
11世、もう片面にルルドの聖母出現のシーンを刻んでいます。
ピウス11世を浮き彫りにした面は、教皇の柔和な横顔を囲んで、次のラテン語が記されています。
PIUS XI PONTIFEX MAXIMUS 教皇ピウス11世
メダイの周囲には次の言葉がフランス語で刻まれています。
1858 - 1933 LXXVe anniversaire des apparitions 1858 - 1933年 御出現 75周年
教皇の像の下端に、アドルフ・ペナン (Adolphe Penin, 1888 - 1985) の作であることを示す刻印 (PENIN) があります。リヨンのメダイ彫刻家アドルフ・ペナンはフランスを代表する名匠です。
もう片方の面には、窓形の画面にマサビエルの洞窟における聖母出現のシーンを刻み、薔薇の花輪で円く取り囲んでいます。浅浮き彫りにもかかわらずリアルに再現された岩場の窪みには、聖母マリアが立っています。聖母は手首にロザリオを掛け、目を閉じ、穏やかな表情で祈っています。斜め下方では当時14歳の少女ベルナデット・スビルー(聖ベルナデット)がひざまずいています。ベルナデットはヴェールを被り、右手にろうそく、左手にロザリオを持って、岩場の聖母を仰ぎ見ています。
商品写真は数十倍の面積に拡大してありますが、実物の聖母は高さ 10ミリメートル、顔の縦の長さ 1ミリメートルほどしかありません。名匠ペナンがいかに優れた技量を持つメダイ彫刻家であるかがわかります。
薔薇の花輪がこのシーンを取り囲んでいます。薔薇の花輪はラテン語でロサーリウム (ROSARIUM) といいますが、これはイタリア語及びポルトガル語のロザリオ
(rosario)、カスティリア語のロサリオ (rosario)、フランス語のロゼール (rosaire) 等と同じ言葉です。したがって薔薇の花輪ロサーリウムは、「ロザリオの聖母」とも呼ばれるルルドの聖母に相応しい飾りです。
メダイに彫刻されているのは野生種の薔薇です。野生種の薔薇が持つ 5枚の花びらは、キリストの五つの傷(両手と両足の釘の傷、及び脇腹の槍傷)を表します。それゆえ薔薇はキリストの受難の象徴であり、神の愛の象徴であると考えられています。
このメダイが鋳造された 1933年は、ヒトラー内閣が成立した年でもあります。フランスはこの後ドイツによって国土を蹂躙され、首都パリも陥落しますが、聖母はフランスを守り給うでしょう。
本品は 80年近く前に鋳造された真正のアンティーク品ですが、摩耗はまったく見られません。新品のようなコンディションです。