リュドヴィク・ペナン作　ルルドの聖母よ、われらのために祈りたまえ　23.5 x 15.0 mm


突出部分を含むサイズ　縦 23.5 x 横 15.0 mm

フランス　　1920 - 30年代

　胸の前に手を合わせて祈るルルドの聖母を、楕円の空間に収めた優美なメダイ。





　ルルドの聖母はロザリオの聖母とも呼ばれますが、ロザリオにおいては、受胎告知の際の天使祝詞が主な祈りの言葉となります。このメダイに表された年若い聖母は、しっかりと目を見開いて前を見ています。天使ガブリエルから受胎を告知され、自らを神に委ねて、与えられた役割を素直に受け入れる少女マリアは、その姿に深い精神性を感じさせます。浮き彫りにされた聖母像の背景には、次の言葉がフランス語で刻まれています。

　　Notre-Dame de Lourdes, priez pour nous.　　ルルドの聖母よ、われらのために祈りたまえ。

　聖母の背後、メダイの縁に近いところに、リヨンの彫刻家リュドヴィク・ペナンの刻印 (PENIN LYON) が、半ば磨滅した状態で確認できます。リュドヴィク・ペナン（Ludovic Penin, 1830 - 1868）はフランス・カトリック界を代表するメダユール（仏 médailleur　メダイユ彫刻家）のひとりで、教皇直属の芸術家にも選ばれましたが、惜しくも夭折した人物です。ペナンのサインに続く "DÉP."（DÉPOSÉ　デポゼ）は意匠登録の意で、このメダイのデザインがある程度まで定型化しつつも、メダユールによって芸術面での独自性を与えられていることを示します。

　なおリュドヴィク・ペナンのメダイユ彫刻は素朴な作風ですが、本品はリュドヴィク・ペナンの没後。同郷の芸術家ジャン・バティスト・ポンセ（Jean-Baptiste Poncet, 1827 - 1901）によって、原作が有する清冽な敬虔性を尊重しつつも、都会風、二十世紀風の洗練を加えられています。





　メダイの裏面には、マサビエルの岩場における聖母出現の場面が、浮き彫りで表されています。ルルドの聖母は、腕にロザリオを掛け、胸の前に両手を合わせています。ベルナデットはヴェールを被り、ロザリオを手に跪いています。メダイの左端に近いところに、次の言葉がフランス語で刻まれています。

　　Je suis l'Immaculée Conception.　　わたしは無原罪の御宿りです。

　これは 1858年3月25日、ルルドにおける16回目の出現の際、ベルナデットに名前を問われたときに、聖母が答えた言葉です。


　本品は70年以上前にフランスで製作され、ヨーロッパ全体が戦場となった第二次世界大戦をくぐり抜けて来ました。写真は実物を大きく拡大していますので、突出部分に軽い摩滅が判別できます。このメダイが持つ優しい表情は、ルルドの聖母の優美さのせいでもありますが、摩滅のせいでもあります。

　信心具であるメダイの摩耗は活きた信仰のあかしであり、単に「物」としての保存状態が良好な新品には求めるべくもない精神性を感じさせてくれます。さらに美術工芸品として見ても、ルルドの聖母を刻んだ数あるメダイのなかでも最も美しい作品のひとつであり、聖母を慕う古来の信仰を近代性のうちに形象化したメダイユの意匠は、リュドヴィク・ペナンの優れた芸術的感覚を証明しています。

本体価格　16,800円　販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール（procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp）にてご注文くださいませ。




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