稀少品 二色のエマイユ・シャンルヴェに金めっき 《ファティマの聖母》 聖母子と星の小さなメダイユ 直径 18.8 mm 未販売のデッド・ストック フランス 1960年代


突出部分を除く直径 30.4 mm  最大の厚さ 3.4 mm  重量 13.0 g



 すっきりと清楚なモダニズム・デザインのメダイ。五十年以上前のフランスで制作された品物です。上部に突出した半円状の環に、製造国を示すフランス(FRANCE)の文字が読み取れます。

 二十世紀美術の大きな潮流の一つであるミニマリズムは、古代以来のキリスト教神学と強い親和性を有します。本品は 1960年代のもので、ミニマリスムの強い影響を受けています。なお本品はレプリカではなく、1960年代に作られた真正のヴィンテージ品です。長期に亙る保管中、ところどころに小さな疵(きず)が付いていますが、本品は未販売のまま残っていた新品です。





 メダイの表(おもて)面には、幼子イエスを腕に抱く聖母の上半身が浮き彫りにされています。ミニマリスムの影響を受けた浮き彫りは、目鼻口や髪、衣文(えもん 布の襞)等の細部がいずれも簡略化されています。

 聖母は幼子を向き合うように抱いており、聖母子はジ(J)の形に一体化しています。聖母子の後光も境界が重なり、同色のエマイユのうちに融け合っています。





 本品メダイはもともと円形に作られていますが、鏡面光沢を有する幅広の縁が、円形をさらに強調しています。本品において、円は幾つかの象徴的意味を有します。

 第一に、円は始まりも終わりもない円運動の軌跡であり、永遠を象徴します。天動説の時代、あらゆる天体はハルモニア・ムンディー(羅 HARMONIA MUNDI 世界の調和)と呼ばれる数理的秩序に従い、地球を中心に円を描いて運動していると考えられていました。初期の地動説においても、十七世紀初頭にケプラーの第一法則が見いだされるまで、惑星は円軌道を描いて太陽を周回していると考えられていました。天体の運動は永遠に持続するゆえに、円こそがその軌道の形に相応しいと考えられたのです。

 第二に、円は神を中心とする世界秩序の象徴でもあります。スコラ学の考え方によると、神がどのような方であるかを、地上の人間が知ることはできません。地上に生きる人間の知性が知りうるのは、神がどのような方でないかということだけです。それゆえ神は座標を持たない(すなわち、位置が限定されない)数学的点に譬えることができます。しかるに円は平面上の一点から等距離にある点の集合ですが、神とあらゆる被造物の間には無限の隔たりがあって、その隔たりの無限性に大小は無いゆえに、あらゆる被造物の集合は神から等距離にある円周に比定することができます。それゆえ円は神が創り給うた森羅万象、秩序あるコスモスを象徴します。

 第三に、円は完全な充実である神、及び神が住まう天上界の象徴でもあります。スコラ学において、神はエッセの純粋現実態(羅 ACTUS PURUS ESSENDI)と規定されます。これは簡単に言えば、神には足りないところが無く、変化することもないという意味です。エレア派哲学者パルメニデスは、存在するものは無限に大きな球体であると考えました。パルメニデスは紀元前六、五世紀の古代ギリシア人で、パルメニデスが言う「存在するもの」はおそらく単なる物体のことであり、キリスト教の神とは無関係です。しかしながら完全な充実を球体として表象するパルメニデスの思想は、完全図形である球や円を、神及び天上界に結び付けるキリスト教の象徴体系と一定の共通性を有します。





 それゆえ円を強調した本品メダイの意匠は、まず第一に、聖母子に通い合う愛の永続性を象徴しています。幼子イエスは人間であるとともに神でもあり、しかるにキリスト教の神が変化することがありませんから、イエスは地上にあったときと同様に、いまも聖母を愛しておられます。これは聖母の執り成しの有効性にもつながります。すなわち聖母が罪びとを執り成し給うとき、イエスは御母の願いを決して拒み給わないのです。この象徴的意味は、聖母子の背景に輝く星の赤色によって強調されています。

 第二に、本品メダイの円形は、聖母子を中心とするコスモス(秩序)を象徴します。キリスト教の図像において、イエスや聖母はしばしば球体とともに表され、球体上に立っていたり、世界球を手にしていたりします。円の中心に聖母子を配した本品の意匠は、そのような図像表現と同等の意味を有します。本品メダイが有する円形の意匠は、聖母やキリストの足元の球体、あるいは世界球と同じ意味を有します。聖母子の背景に浮かぶ星々は、コスモス(秩序ある宇宙)を具体的に表現したものです。コスモスを象徴する円形は、エマイユが施されてよく目立つ後光の円形によってさらに強調されています。

 第三に、本品メダイの円形は、天上にあって地上を見守り給う聖母子の愛を象徴します。円は球と同様に、天上界を表します。それゆえ聖母子が円のうちにある姿は、イエスと聖母が天上界におられることを表します。しかしながら十字架上に成し遂げられた救世は、イエスと同時代の人にのみ関わるのではありません。イエスの降誕と公生涯及び受難は歴史上の特定の時代、特定の場所で起こった出来事ですが、その宗教性において時間的及び空間的な普遍性を有します。聖母子が生きたのは二千年前のパレスチナですが、救世主イエスがもたらし給うた救いは時空の隔たりを超えて現代の我々に達するのです。それゆえ本品メダイの円形は、天上の聖母子が愛のまなざしを地上に注ぎ給うことを、永遠の相の下(もと)に表しています。





 聖母子の後光には青色ガラスで、背景の星々には赤色ガラスで、いずれも透明感のあるエマイユが施されています。本品に施されている二色のエマイユは、最も古典的なエマイユ技法であるシャンルヴェ(仏 l'émail champlevé)によります。

 ヨーロッパ最大のエマイユ・シャンルヴェの産地は、フランス本土の中央から少し西にあるリモージュ(Limoges ヌーヴェル=アキテーヌ地域圏オート=ヴィエンヌ県)です。リモージュは磁器の産地として有名ですが、ヨーロッパで磁器が作られ始めたのは、1768年、リモージュの南四十キロメートルにあるサン=ティリエ=ラ=ペルシュ(Saint-Yrieix-la-Perche ヌーヴェル=アキテーヌ地域圏オート=ヴィエンヌ県)でカオリンが発見されて以降のことです。リモージュ産エマイユの歴史は磁器よりもはるかに古く、文献上の初出は 1167年ないし1168年頃に遡ります。1770年代に磁器製造が始まると、リモージュの産業構造はエマイユから磁器へと急速に転換します。これによって急速に衰えたリモージュのエマイユは、十九世紀に息を吹き返し、今日に至ります。





 フランスのエマイユは、十九世紀以来、ブル=カン=ブレス(Bourg-en-Bresse オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏アン県)でも制作されています。しかしながら技法と作風の両方において、リモージュのエマイユとブル=カン=ブレスのエマイユは大きく異なります。本品メダイはソミュール(Saumur ペイ・ド・ラ・ロワール地域圏メーヌ=エ=ロワール県)のメダイユ工房ジ・バルム(la société J. Balme)が制作したものですが、ジ・バルムは本品をソミュールからリモージュに運び、エマイユ・シャンルヴェを施したものと考えられます。メダイの右下に見えるジ・ベ(J B)のモノグラムは、ジ・バルム社のサインです。メダユール(仏 médailleur メダイユ彫刻家)のサインはありませんが、ジ・バルム社のために多数のメダイを制作した彫刻家、フィリップ・シャンボー(Philippe Chambault, 1930 - )の作品と思われます。





 メダイの裏面には、聖母が子供たちに出現し給うた時の様子が定型化された浮き彫りで表されています。灌木の上に出現した聖母は胸の前に手を合わせ、地面に跪く三人の子供たちに愛のまなざしを注いでおられます。群像を取り巻くように、執り成しを求めるフランス語の祈りが記されています。

  Notre-Dame du Rosaire de Fátima, priez pour nous.  ファティマのロザリオの聖母よ。我らのために祈り給え。


 ファティマの聖母は灌木の上に出現しました。地面から直立する灌木とその上に立ち給う聖母の姿は、アークシス(羅 AXIS 軸)すなわち世界軸の可視化であり、聖地ファティマが人の生きる時間(人生)と空間(生活圏)に意味を与える支点であることを、目に見える形で示しています。

 この祈りにおいてファティマの聖母は「ロザリオの聖母よ」と呼びかけられています。ロザリオは、いわば聖地ファティマの延長です。なぜならばファティマに足を運べない人も、天使祝詞の祈りを通して自らが生きる時間と空間に意味を与えることができるからです。「ロザリオの聖母」という称号は、ロザリオの祈りが日常における世界軸、すなわち信仰生活の支点であることを表しています。裏面に記された「ロザリオの聖母」という称号は、表面の浮き彫りが表す「愛の永遠性」「聖母子を中心とする世界秩序」「天上の聖母子が地上に向け給う愛のまなざし」のテーマと響き合います。





 上の写真は本品を男性店主の手に載せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真で見るよりもひと回り大きなサイズに感じられます。





 本品は五十年以上前のフランスで制作された真正のヴィンテージ品ですが、珍しいことに未販売のまま新品の状態で残っていた品物です。長く保管されているうち、ところどころに小きずが附いています。小傷きずは拡大写真で見ると判別できますが、肉眼で見るとまったく気になりません。特筆すべき問題は何もありません。下記は本体価格です。




11,800円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




ファティマの聖母のメダイ 商品種別表示インデックスに戻る

各地に出現した聖母のメダイ 一覧表示インデックスに戻る


各地に出現した聖母のメダイ 商品種別表示インデックスに戻る

聖母マリアのメダイ 商品種別インデックスに戻る


メダイ 商品種別インデックスに移動する


キリスト教関連品 商品種別表示インデックスに移動する



アンティークアナスタシア ウェブサイトのトップページに移動する




Ἀναστασία ἡ Οὐτοπία τῶν αἰλούρων ANASTASIA KOBENSIS, ANTIQUARUM RERUM LOCUS NON INVENIENDUS