極稀少品 マリ=ベルナール修道士作 「福者 幼きイエズスのテレジア」 列福記念メダイ 直径 18.6 mm


突出部分を除く直径 18.6 mm

フランス  1923年



 1923年にリジューのテレーズが列福された際の記念メダイ。テレーズやベルナデット・スビルー、聖母をテーマに、数多くの美しい彫刻作品を制作したトラピスト修道士、マリ=ベルナール修道士 Fr. Marie-Bernard (俗名 ルイ・リショム Louis Richomme, 1883 - 1975)の作品です。





 表(おもて)面にはカルメル会の修道衣を着たテレーズの横顔を浮き彫りで表し、周囲にラテン語で「幼きイエズスの福者テレジア」(BEATA TERESIA A JESU INFANTE) と記しています。

 メダイの下部に、マリ=ベルナール修道士の署名 (Fr. M - Bernard R) が刻まれています。この署名は略記されていますが、省略せずに書くと「フレール・マリ=ベルナール・リショム」(Frère Marie-Bernard Richomme) となります。「フレール」(frère) はフランス語で「兄弟」、すなわち「修道士」のことです。マリ=ベルナール修道士は俗名をルイ・リショム (Louis Richomme) といい、「リショム」はマリ=ベルナール修道士のノム・ド・ファミーユ(nom de famille 姓名の「姓」、苗字)です。





 聖母マリアをはじめとする古代の聖女たちは、実際の顔立ちが分からないぶん、かえって彫刻しやすいともいえますが、19世紀の人物であるテレーズ・マルタンは、家族や教会関係者をはじめ、交流があった多数の人々が存命中でした。写真も残っていて、だれもがテレーズの顔立ちをよく知っていました。

 さらに宗教のメダイにおいては、テレーズの外見に似せるに止まらず、その信仰心、聖性の薫りを小さなメダイの浮き彫りに表現しなければなりません。芸術家としての才能、職人的技量に加えて、深い信仰を併せ持ち、修道女テレーズと共感できるマリ=ベルナール修道士は、テレーズのメダイを制作するのにこの上ない適任者といえましょう。


 ところで、19世紀前半から中頃にかけて活躍し、フランスにおけるメダイユ芸術隆盛の嚆矢(こうし 魁)となった彫刻家ダヴィッド・ダンジェ (Pierre-Jean David d'Angers, 1788 - 1856) は、横顔を好んで作品にし、次のような趣旨の言葉を語っています。

「正面から捉えた顔はわれわれを見据えるが、これに対して横顔は他の物事との関わりのうちにある。正面から捉えた顔にはいくつもの性格が表われるゆえ、これを分析するのは難しい。しかしながら横顔には統一性がある。」

 ここでダヴィッド・ダンジェが言っているのは、モデルの顔を正面から捉えて作品にする場合、その時その場でその人物(彫刻家)と向かい合っているという特殊な状況(一回限りの、個別的な状況)のもとで、その時限りの感情や、取り繕った体裁が顔の表情となって現れ、モデルのありのままの人柄を観察・描写する妨げになるのに対し、横顔には常に変わらないモデルの人柄が、ありのままの形で現れる、ということでしょう。その時限りの感情ではなく、ましてや取り繕った体裁ではなく、モデルとなる人物の生来の人柄と、それまで歩んできた人生によって形成された人柄を作品に表現するのであれば、横顔を捉えるのが最も適しているというダヴィッド・ダンジェの指摘には、なるほどと頷(うなず)かせる説得力があります。




 マリ=ベルナール修道士が本品を制作したのは、テレーズが列福された 1923年です。マリ=ベルナール修道士はこの前年に、薔薇の溢れるクルシフィクスを胸に抱いたテレーズ像を、リジューのカルメル会修道院のために制作しているのですが、本品にはよく知られたポーズのテレーズではなく、敢えて横顔のテレーズを刻んでいます。

 よく知られた「薔薇のクルシフィクスを抱えるテレーズ」の図像は、華やかな薔薇とテレーズの美貌のせいで、誰が見ても美しく感じます。しかるにこのメダイに彫られたテレーズは横顔で、質素な修道衣に身を固め、薔薇を抱えてもいません。しかしそれゆえに却って、従順、貞潔、清貧をはじめとするカルメル会会則に従ったテレーズの聖性、神とイエズスを愛する愛が、直径十数ミリメートルの小さな画面に、溢れるばかりに表現されています。






 裏面には、世界(地上界)を象徴する球体を下部に配し、地上に向けて天から降り注ぐ薔薇の雨を、巧みな浮き彫りによって表しています。薔薇は愛の象徴です。 図像下部の盾形は、跣足カルメル会の紋章の一部です。図像の周囲に、テレーズの言葉をラテン語で記しています。

  ROSARUM IMBREM E COELO EFFUNDAM.  私は天から薔薇の雨を降らせましょう。


 本品の直径は 2センチメートルに届かず、浮き彫りの各部分は極小サイズで制作されています。裏面では文字の高さがちょうど1ミリメートルほどで、薔薇の花はさらに小さなサイズですが、それにもかかわらず花の形は綺麗に整い、一枚一枚の花びらまでもが表現されています。

 また輪郭線がはっきりとした浮き彫り彫刻を制作するのは比較的容易ですが、この作品は天上界を象徴する雲、地上に降り注ぐ恩寵の光、下部の球体を囲む雲など、不定形のものを巧みに表現しており、小品ながらも素晴らしい仕上がりです。





 このメダイは90年前のフランスで製作された真正のアンティーク品です。たいへん古い物であるにもかかわらず、非常に優れた保存状態です。メダイ全体を写した大きい商品写真は、実物の面積を30倍以上に拡大しており、小さな疵(きず)が判別可能ですが、実物を肉眼で見ると写真よりもはるかに綺麗です。特筆すべき問題は何もありません。直径 18.6ミリメートルのサイズは大きすぎず小さすぎず、ペンダントとしてご愛用いただくのにちょうど良い大きさです。

 テレーズは1923年に列福、1925年に列聖されましたので、「聖テレーズ」のメダイに比べて「福者テレーズ」のメダイは圧倒的に少なく、めったに手に入りません。本品は横顔を彫っている点でも珍しく、深い精神性を感じさせる作品に仕上がっています。マリ=ベルナール修道士によるテレーズの彫刻群はよく知られ、作品の複製は数多く目にしますが、修道士自身の署名が入った作品はとりわけ稀少です。





本体価格 16,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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