幼きイエスのテレジア 薔薇とロザリオの列福記念メダイ 直径 15.3 mm 1923年


突出部分を除く直径 15.3 mm

フランス  1923年



 幼きイエズスの聖テレジア (リジューの聖テレーズ)は、1923年4月29日、教皇ピウス11世により、ローマで列福されました。本品はテレーズ列福を記念して制作されたフランスのメダイで、直径 15ミリメートルあまりと小さなサイズです。





 メダイの表(おもて)面は、テレーズの横顔を浮き彫りにしています。テレーズはカルメル会の修道女の服装、すなわち茶色の修道衣、薄茶色のマント、白のウィンプル、黒の頭巾を身に着け、微かな微笑みを浮かべつつ、眼差しを真っ直ぐに神へと向けています。「幼きイエズスの福者テレジア」(BEATA THERESIA A JESU INFANTE) という銘が、テレーズを囲むようにラテン語で刻まれています。


 テレーズのメダイというと、薔薇が咲きこぼれるクルシフィクスを抱いて微笑む聖女を、ほぼ正面から捉えた意匠の作品が多いですが、本品はテレーズを真横から捉えた珍しい作例です。19世紀前半から中頃にかけて活躍し、フランスにおけるメダイユ芸術隆盛の嚆矢となった彫刻家ダヴィッド・ダンジェ (Pierre-Jean David d'Angers, 1788 - 1856) は、横顔を好んで作品にし、次のような趣旨の言葉を語っています。「正面から捉えた顔はわれわれを見据えるが、これに対して横顔は他の物事との関わりのうちにある。正面から捉えた顔にはいくつもの性格が表われるゆえ、これを分析するのは難しい。しかしながら横顔には統一性がある。」

 ここでダヴィッド・ダンジェが言っているのは、モデルの顔を正面から捉えて作品にする場合、その時その場でその人物(彫刻家)と向かい合っているという特殊な状況(一回限りの、個別的な状況)のもとで、その時限りの感情が顔の表情となって現れ、モデルのありのままの人柄を観察・描写する妨げになるのに対し、横顔には常に変わらないモデルの人柄が、ありのままの形で現れる、ということでしょう。その時限りの感情ではなく、モデルの生来の人柄と、それまで歩んできた人生によって形成された人柄を作品に表現するのであれば、横顔を捉えるのが最も適しているというダヴィッド・ダンジェの指摘には、なるほどと頷(うなず)かせる説得力があります。





 メダイの裏面には薔薇の花環とロザリオが浮き彫りにされています。フランス語ではロザリオを「ロゼール」(rosaire) または「シャプレ」(chapelet) といいます。「ロゼール」は特に15連のロザリオを指す語で、語形から明らかなように、ラテン語「ロサーリウム」に由来します。「シャプレ」は5連のロザリオを指しますが、この語は本来「被り物」を表す「シャペル」(chapelle) に縮小辞が付いたものであり、やはり花の冠を表します。ラテン語において「コローナ」(CORONA) は「冠」あるいは「花環」を表しますが、これに縮小辞が付いた「コローッラ」(COROLLA) は専ら「花環」を意味するのに似ています。ドイツ語ではロザリオを「ローゼンクランツ」(Rosenkranz) といいますが、これは文字通り「薔薇の花環」という意味です。



(上・参考写真) 聖ドミニコと聖母子 「ルルドのロザリオの聖母」 十字架形メダイ 42.0 x 38.8 mm 当店の商品です。


 したがって、薔薇の花環とロザリオはもともと同じものです。メダイユ彫刻において薔薇の花環とロザリオを一体化させた意匠は、他の作品にも見られます。上の写真はそのような作例のひとつです。





 リジューのテレーズは1923年に列福、1925年に列聖されましたので、「聖テレーズ」のメダイに比べて「福者テレーズ」のメダイは圧倒的に少なく、めったに手に入りません。横向きの構図が採用されているのも本品の珍しい点です。商品写真は実物の面積を数十倍から百倍あまりに拡大していますので、突出部分のわずかな磨滅が判別可能ですが、肉眼で実物を見るとたいへん綺麗です。特筆すべき問題は何もありません。





本体価格 8,800円 販売終了 SOLD

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