聖クリストフとスポーツ・カー 「どこにいるときも、不慮の事故から守りたまえ」 銀無垢の小メダイ 小さな高級品 15.0 x 130 mm


突出部分を含むサイズ 縦 15.0 x 横 13.0 mm

フランス  1950年代



 円と八角形を組み合わせた聖クリストフ(聖クリストファー)のメダイ。指先に載る小さなサイズながら、信心具の素材として最も高級な銀を使用した銀無垢製品です。写真にうまく写っていませんが、フランスにおいて純度 800/1000の銀を表す「蟹」のポワンソン(仏 poinçon ホールマーク、貴金属の検質印)、及びフランスの銀製品工房を表す菱形のマークが、上部の突出部分に打刻されています。





 一方の面には幼子イエスを肩に乗せて河を渡る聖クリストフが浮き彫りにされています。十三世紀の聖人伝集成「レゲンダ・アウレア」によると、大男の武人クリストフォロスは世界で最強の君主に仕えることを望み、まずはじめに、最強と思われるカナンの王に仕えました。しかしながら王が悪魔を恐れていることがわかったので、次に悪魔の家来になりました。やがて悪魔が神を恐れていることを知ると、神に仕えることを望みましたが、どうすれば神に出会えるかがわかりません。隠者に相談したところ、人を背負って深い川を渡す仕事をすれば神に出会える、と教えられました。ある日小さな男の子が現れて、向こう岸に渡してくれるようにと頼まれたクリストフォロスは、男の子を肩に乗せて運び始めますが、途中で男の子が非常に重くなり、やっとの思いで向こう岸にたどり着きました。男の子は世界を創ったキリストで、世界よりも重かったのです。クリストフォロスはこのときから神に仕える者となりました。

 「クリストフォロス」(希 Χριστόφορος)は、ギリシア語で「キリスト」を表す「クリストス」の語根「クリスト」(Χριστ-)と、「運ぶ人」を表す「フォロス」(-φορος)を、繋ぎの音「オ」(-ο-)を介して合成した語です。すなわち「クリストフォロス」とは「キリストを運ぶ人」という意味の普通名詞で、もともと人名ではありません。しかしながらこの呼び名は聖人名として定着し、男子の名前としても人気があります。クリストフォロスのラテン語形は「クリストフォルス」(CHRISTOPHORUS)、フランス語形は「クリストフ」(Christophe)、英語形は「クリストファー」(Christopher)です。





 本品に浮き彫りにされた聖人クリストフは、肩の上の男の子があまりにも重くなったので、杖にすがって振り返り、問いかけるように男の子を見ています。幼い男の子として表されたイエス・キリストは、グロブス・クルーキゲル(世界球)を手にし、天を指し示しています。

 「グロブス・クルーキゲル」(羅 GLOBUS CRUCIGER)とは「十字架を有する球体」という意味のラテン語で、文字通り、球に十字架を取り付けた形をしています。球は被造的全世界(全宇宙)の象徴であり、これと十字架の組み合わせは、世界の支配権を示します。幼子が片手にグロブス・クルーキゲルを持ち、もう片方の手で点を指さす仕草は、自らが神なるキリストであること、並びに宇宙の支配権を有することの宣言です。

 本品の八角形部分のサイズは縦横十三ミリメートル、内側の円の内径は十ミリメートルです。人物の顔は直径およそ一ミリメートルという極小サイズです。突出部分に軽度の摩滅がありますが、問いかけるように幼子を見つめる聖人と、威厳ある態度で聖人を見下ろす幼子のあいだには、視線を介した無言の対話が読み取れます。張りつめた腕の筋肉、足下に逆巻く川の流れ、強風にはためく衣等の細部が、大型の浮き彫り彫刻を見るかのような迫真性を以て表現されています。




(上) Robert Campin, dit le maître de Flémalle, "l'Annonciation", 1420, tempera sur bois, 61 x 63 cm, les Musées royaux des beaux-arts de Belgique (MRBAB), Bruxelles


 中世以来、クリストフの絵や像を見た者は、その日のうちに「悪(あ)しき死」に遭わない、すなわち臨終の場に司祭が立ち会わない突然の死に遭うことが無いと信じられています。それゆえクリストフの絵やメダイには人気があって、さまざまな作品が作られています。

 上の写真はロベール・カンパン(Robert Campin, 1378 - 1444)が受胎告知を描いたテンペラ板絵で、暖炉の上の壁面にクリストフの聖画が張られています。ロベール・カンパンが「受胎告知」を描いたこの作品は、現在ベルギー王立美術館に収蔵されています。





 聖クリストフは突然の死から守ってくれる守護聖人として知られるゆえに、そのメダイユには危険なスポーツをする人や、乗り物に乗る人の姿がしばしば描かれます。突然の死がいつどんな状況で訪れるか予測することは不可能であって、健康な人が日常生活の中で何の前触れもなく心停止に陥ることさえありますが、交通事故は、平時において、突然の死をもたらす最も大きな原因の一つに違いありません。

 本品には、二人の人を載せて未舗装の田舎道を疾走するスポーツ・カーが浮き彫りにされています。メダイユ彫刻は色を使わず、高低差数分の一ミリメートルというわずかな凹凸のみで全てを表現します。この面の彫刻も全ての部分がほぼ同一平面上にありますが、自動車は実際に手前にあるように見えますし、背景の山や尖塔は実際に遠くにあるように見えます。

 芸術としてのメダイユ彫刻はルネサンス期のイタリアで始まりましたが、後にフランスに伝わり、十八世紀後半以来大いに発展しました。本品の表裏に見られる優れた浮き彫りも、フランス製メダイユならではの特徴です。





 先に述べた通り、聖クリストフいつの時代にも人気があって、中世から現代に至るまで数多くの絵や浮き彫りが作られ続けています。裏面に彫られたスポーツ・カーが 1950年代に流行した形であることから、本品はその頃に制作されたことが分かります。上の写真はイギリスのスポーツ・カー、「トライアンフ TR-3」の広告で、1959年のものです。トライアンフ社のスポーツ・カーに関しては、1953年から 1955年に生産された "TR-2"、及び 1955年から 1962年の間に生産された "TR-3" が、本品に刻まれた自動車とよく似ています。





 本品の意匠は八角形と円形を組み合わせています。八角形の表す意味は多様ですが、ひとつには地図のロゼッタと同様に「あらゆる方角」を表し、ひいては「地上のあらゆる場所」を象徴します。一方、完全かつ無限な図形である円は、神のいます天上界を象徴します。したがって八角形と円形を組み合わせた本品の意匠は、地上のどこにあっても神の加護が得られること、聖クリストフの執り成しにより不慮の事故から守られることを、その形によって願い、表現していることがわかります。





 本品はおよそ六十年前のフランスで制作された真正のアンティーク品(ヴィンテージ品)ですが、古い年代にもかかわらず、充分に良好な保存状態です。商品写真は実物の面積を数十倍から百倍程度に拡大していますから、突出部分の摩滅が容易に判別できますが、実物を肉眼で見るとたいへん綺麗です。小さなサイズながらも高級な銀で制作され、しっかりとした厚みを有する本品は、神と聖人に対する子供のような信頼が形となった愛すべき小メダイです。





5,500円

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