稀少品 ランスの「聖なる幼子イエズス姉妹会」 福者ニコラ・ロラン 貧しき孤児として表されたサルヴァートル・ムンディーの銀製メダイ 25.8 x 18.0 mm


突出部分を含むサイズ 縦 25.8 x 横 18.0 mm

フランス  1870年頃



 ランスの福者ニコラ・ロラン (Nicolas Roland, 1642 - 1678) が、孤児と平民子弟の女子教育を目的に、1670年に創設した「聖なる幼子イエズス姉妹会」(la Congrégation des Sœurs du Saint Enfant-Jésus) のたいへん珍しいメダイ。幼子イエズスが貧しい孤児の姿で表現されています。800シルバー製を示すフランスのホールマーク「イノシシの頭」が、上部の環に刻印されています。


 一方の面に打刻された幼子イエズスは、全宇宙の支配権を象徴する「グロブス・クルーキゲル」(GLOBUS CRUCIGER 世界球、ラテン語で「十字架付の球体」の意)を左手に持ち、右手で天を指さす威厳ある姿で表されています。左手に持った「グロブス・クルーキゲル」を示しつつ、右手で天を差して自らが神であることを明示する図像はイエズス像の一類型であり、「サルヴァートル・ムンディー」(SALVATOR MUNDI ラテン語で「世界の救済者」「世の救い主」の意)と呼ばれます。





 「サルヴァートル・ムンディー」にもさまざまなタイプがあります。北方ルネサンスの画家たちが描く「サルヴァートル・ムンディー」のキリストは豪華な装いを身にまとい、あたかも帝王のように見えます。しかしながら本品に浮き彫りにされた幼子イエズスは、これとは正反対に、何の飾りもないごく簡素な衣をまとい、一本の荒縄をベルト代わりに括っています。イエズスを取り囲むように、フランス語で「世の救い主イエズス」(Jésus Rédempteur du monde) と刻まれています。


 「聖なる幼子イエズス姉妹会」を創設したニコラ・ロラン神父は、町なかに出て説教し、孤児や貧民子弟の教育実現に奔走する実務家である一方で、イエズス受肉のミステリウムに思いを潜める神秘思想家でもありました。ロラン師が「聖なる幼子イエズス姉妹会」を創設して孤児と貧民の女子教育に乗り出したのは 1670年のことですが、この直前の 1667年、ロラン師はボーヌ(Beaune ブルゴーニュ地域圏コート=ドール県)のカルメル会修道院に滞在し、「愛ゆえに人となり給うた神のひとり子」のミステリウムに打たれました。この経験の後、ロラン師は孤児や貧しい平民の子どもたちに仕えることにより、貧しき幼子イエズスに仕える決心を固めたのでした。

 本品「聖なる幼子イエズス姉妹会」のメダイに刻まれたイエズスは、フロンドの乱で荒廃したフランスにおいて窮乏する民、とりわけもっとも弱い立場にあった子ども、孤児の姿を模(かたど)っています。ロラン師と「聖なる幼子イエズス姉妹会」の修道女たちは、きらびやかな衣を着た宮廷の人々ではなく、最も軽んじられる孤児たちや貧民の子どもたちに仕えることにより、受肉し給うたイエズス・キリストに仕えたのでした。





 メダイのもう一方の面には、「聖なる幼子イエズス姉妹会」(la Congrégation des Sœurs du Saint Enfant-Jésus) とフランス語で打刻されています。「聖なる幼子イエズス姉妹会」は近世フランスに平民の女子教育を普及させた有力な組織であり、平民の男子教育を普及させた「ラ・サール会」とともにその仕事の社会的価値を高く評価されるべき修道会です。しかしながらこの会のメダイはたいへん珍しく、私自身、本品以外に類品を手にしたことがありません。





 幼子イエズスをあたかも孤児か貧民の子どものような姿で表現したこのメダイは、受肉のミステリウムに打たれたニコラ・ロラン師の心を表すとともに、もっとも軽んじられる小さき者に仕えることで、人となり給うたイエズスの愛に応えようとする「聖なる幼子イエズス姉妹会」の理念を形象化しています。


(下・参考画像) ニコラ・ロラン師と同時代の画家ムリリョ (Bartolomé Esteban Murillo, 1618 - 1682) が乞食の少年を描いた作品。 「虱(しらみ)を取る子供」 "Niño espulgándose", c. 1645 - 1650, Óleo sobre lienzo, 134 x 110 cm, Museo del Louvre, Paris




 「全宇宙の支配権」を表すグロブス・クルーキゲルと「貧しい身なり」の組み合わせは、一見したところ違和感を感じさせます。しかしながらこれは「愛ゆえの受肉」という人知を絶するミステリウムをたいへんよく表現しています。本品は19世に典型的な打刻によるメダイですが、簡素な作りの中にもとりわけ深い精神性を秘めた作例ということができます。

 商品写真の撮影前にメダイをクリーニングしなかったので、汚れのせいか茶色っぽく写っていますが、本品の材質は800シルバーです。銀は信心具に使用される素材の中で最も高価であり、19世紀の銀製メダイは極端に薄く、あるいは小さなものが多いですが、本品は同時代の銀製メダイに比べてかなり大きめで、特別な機会に制作されたものであることがうかがえます。保存状態もたいへん良好で、いずれの面にも磨滅はほとんど見られません。おそらく同会の創立二百周年に当たる 1870年に制作されたものでしょう。





本体価格 15,800円 販売終了 SOLD

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