金の微光に包まれる少女マリア 受胎告知の十八金無垢ペンダント フランス製アンティーク 直径 16.6 mm


突出部分を除く直径 16.6 mm

 フランス  1930年代



 聖母となるべき少女マリアのアンティーク・ペンダント。およそ八十年前のフランスで制作されたアンティーク品で、十八カラット・ゴールド(十八金)を使用しています。

 現代の金製メダイはほとんどの製品が艶(つや)のある仕上げとなっています。艶やかに光る金は高級感がありますが、金に艶を出すには磨けばよいだけですので、制作に手間がかかりません。本品は手間をかけて艶消し仕上げを施してあり、あたかも天上の微光のような優しい光がマリアを包み込んでいます。





 本品の浮き彫りにおいて、まだ十代半ばの少女マリアは信仰の証しである神の花嫁のヴェールを被っています。受胎告知の際、マリアは「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように」(ルカ 1:38)と答え、自由意思によって救いを受け入れて、恩寵の器となりました。

 マリアがキリストを生むべく選ばれたのは、イスラエルの太祖たちにも勝る優れた信仰ゆえでした。イエスの受胎を告知されたとき、マリアは十代半ばの少女でした。しかるに受胎告知を主題にした多くの図像において、マリアは実際の年齢よりもずっと大人びた容姿で描かれます。これはマリアの精神的成熟を視覚化したものと考えられます。





 本品のマリアは、史実の通りに、少女として表現されています。しかしながら天使が家に突然入ってくるという異常事にもかかわらず、心静かに神に祈るマリアの表情には、優れた信仰と精神的成熟がはっきりと読み取れます。天上に目を注ぎ、心に親しい神に対して問いかけるように祈る少女の姿は、全てを神に委ねつつ、ガブリエルの言葉を思い返し、「聖なる者、神の子」を生むという想像を絶する告知の意味について、思いを巡らせているように見えます。





 フランスにおけるメダイユ彫刻中興の祖ダヴィッド・ダンジェ (Pierre-Jean David d'Angers, 1788 - 1856) はモデルの横顔を好んで作品にし、「正面から捉えた顔はわれわれを見据えるが、これに対して横顔は他の物事との関わりのうちにある。正面から捉えた顔にはいくつもの性格が表われるゆえ、これを分析するのは難しい。しかしながら横顔には統一性がある。」と言っています。

 ここでダヴィッド・ダンジェが言っているのは、モデルの顔を正面から捉えて作品にする場合、その時その場でその人物(彫刻家)と向かい合っているという特殊な状況(一回限りの、個別的な状況)のもとで、その時限りの感情や、取り繕った体裁が顔の表情となって現れ、モデルのありのままの人柄を観察・描写する妨げになるのに対し、横顔には常に変わらないモデルの人柄が、ありのままの形で現れる、ということでしょう。その時限りの感情ではなく、ましてや取り繕った体裁ではなく、モデルとなる人物の生来の人柄と、それまで歩んできた人生によって形成された人柄を作品に表現するのであれば、横顔を捉えるのが最も適しているというダヴィッド・ダンジェの指摘には、なるほどと頷(うなず)かせる説得力があります。

 したがってこのペンダントに彫られたマリアの横顔は、いわば誰にも見られていない時のマリアの素顔です。歳若き少女マリアの美とは、神の眼に適う卓越した信仰がその素顔に滲み出たものにほかならず、不可視の信仰に裏打ちされたマリアの美を余すところなく捉えたところに、メダイユ彫刻家の優れた力量が発揮されています。





 上の写真に写っている定規のひと目盛りは、一ミリメートルです。整った横顔を見せる少女マリアの顔の各部は一ミリメートルに満たない極小サイズですが、大型の浮き彫り彫刻に勝るとも劣らない写実性を有します。指の関節や筋肉、髪や衣、ヴェールの襞等、顔以外の部分も細部まで正確に再現され、あたかも生身の少女を眼前に見るかのような錯覚を覚えます。

 ポワンソン(仏 poinçon 貴金属の検質印、ホールマーク)と金細工工房のマークが、上部の環に刻印されています。ポワンソンが環からずれていて、意匠を確認できないので、念のために当店の検査機器で金の純度を測定したところ、「十八カラット以上二十カラット未満」という結果が出ました。フランスにおける金製品の標準的な純度は十八カラット・ゴールド(750パーミルの金、十八金)ですので、本品にもこの純度の金が使用されていることがわかります。





 名前や日付の刻印等によるペルソナリザシオン(仏 personalisation 個別化)はアンティーク品ならではの特性です。ペルソナリザシオンはアンティーク品のみに備わる歴史性の表れであり、筆者はこれを無個性な新品には欠けている大きな魅力と考えて、高く評価しています。

 本品は「モンテーヌ」(Montaine)と名付けられた女児の誕生と洗礼を記念するメダイで、裏面には女の子の名前がビュラン(仏 burin グレイヴァー、彫刻刀)で手彫りされています。「モンテーヌ」という名前は、五世紀の隠修士聖モンタン(St. Montain)に因みます。南フランスの風光明媚な中世都市サン=モンタン(Saint-Montan オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏アルデシュ県)も、この聖人に因んで名付けられています。

 フランス統計総局(la Statistique Générale de la France, SGF)や、フランス国立統計経済研究所(l'Institut National de la Statistique et des Études Économiques, INSEE)の資料によると、「モンテーヌ」という女子名は十九世紀前半まではそれほど珍しくありませんでしたが、十九世紀半ばから 1920年代まではほとんど使われなくなり、1930年代初頭になってわずかながらも復活しました。その後は再び使われなくなりましたが、1980年代初めに再度復活し、現在では以前よりも人気がある名前となっています。


 本品は 1930年頃のもので、伝統的でありつつも珍しい名前を付けた娘に贈られたメダイです。1929年10月24日、ウォール街でGMの株が暴落し、これが引き金になって世界恐慌が始まりました。世界恐慌がフランスに波及するのは 1931年で、1930年のフランス経済は未だ恐慌に巻き込まれていませんでした。しかしながら 1930年に本品のような金無垢ジュエリーを購入できる階層は、ごく少数に限られていました。モンテーヌ嬢は裕福な家庭のお嬢さんだったのでしょう。

 両親は新しく生まれた娘に「マドレーヌ」や「ジャンヌ」のようなありきたりの名前を付けず、特別な名前を考えました。出身地に因む名前であったのかもしれませんし、オーヴェルニュのサン=モンタン、あるいは聖モンタン隠修士に関する思い出が、両親にあったのかもしれません。「モンテーヌは、どう?」「いい名前だね」と話し合う若い夫婦の姿が、目に浮かびます。高価な金無垢メダイに大きく彫られた「モンテーヌ」の文字に、両親が娘に注ぐ大きな愛情が感じられます。

 モンテーヌがまだ幼い時に、フランスの国土は第二次世界大戦の戦場となります。聖母マリアの加護の下、少女モンテーヌが両親とともに戦争を生き延び、無事成長して幸せな女性となったことを、心から願わずにはおれません。





 本品は十八金製ですので、金属の酸化による変色も無く、将来も変色することもありません。保存状態は極めて良好で、突出部分もまったく磨滅していません。十六ミリメートル強の直径は、ペンダントとして大きすぎず小さすぎず、日々ご愛用いただきやすいサイズです。浮き彫り彫刻の出来栄えは見事であり、美術品水準のアンティーク・ジュエリーに仕上がっています。





42,800円

電話 (078-855-2502) またはメールにてご注文くださいませ。




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