「わたしが旅をしていたとき、あなたはわたしに宿を貸してくれた」 マタイによる福音書二十五章 愛の小聖画

"J'etais étranger, et vous m'avez recueilli", Bouasse-Lebel, Paris, G.O. 6.804


余白を含む聖画全体のサイズ 60 x 85 mm

商品写真に写っている額のサイズ  164 x 207 mm  奥行 33 mm


フランス   1948 - 1950年頃



 幼い子供にも分かり易いやさしい言葉と絵を使って、キリスト教的徳を表した小品。第二次世界大戦の終結から間もない1948年から 1949年、戦争の傷跡から立ち直りかけた時代のフランスで制作された聖画です。余白を含めた小聖画全体のサイズは横 60ミリメートル、縦 85ミリメートルで、裏面は白紙です。商品価格には額装が含まれます。





 聖画には五、六歳くらいのフランス人の男の子と、旅をする外国の男の子が描かれています。外国の男の子はほとんど裸で、足には靴も履かず、食べ物や飲み物も持っていません。住む家も無く、異国にたったひとり、心細い旅を続けています。フランスの男の子は外国の子の方に優しく手を添え、家に招き入れています。旅する子はフランスの子の顔を見て微笑んでいます。その表情には安心と喜び、愛が溢れています。愛と喜びと安心はフランスの子の表情にも同じように現れており、この子が外国の子の身になって感じ、考えていることがわかります。

 聖画の下には手書き風のフランス語で次の言葉が記されています。

  J'etais étranger, et vous m'avez recueilli. Mattieu XXV - 35  わたしが旅をしていたとき、あなたはわたしに宿を貸してくれた。 「マタイによる福音書」 二十五章三十五節


 「マタイによる福音書」二十四章と二十五章では、世の終末と最後の審判に関するキリストの預言が記録されています。聖画に引用されている箇所の前後を、AELF(l'Association Épiscopale Liturgique pour les pays Francophones フランス語圏典礼司教協会)のフランス語訳と新共同訳により示します。

         la traduction officielle liturgique française par l'AELF    新共同訳
             
     34     Alors le Roi dira à ceux qui seront à sa droite : “Venez, les bénis de mon Père, recevez en héritage le Royaume préparé pour vous depuis la fondation du monde.    そこで、王は右側にいる人たちに言う。『さあ、わたしの父に祝福された人たち、天地創造の時からお前たちのために用意されている国を受け継ぎなさい。
     35     Car j’avais faim, et vous m’avez donné à manger ; j’avais soif, et vous m’avez donné à boire ; j’étais un étranger, et vous m’avez accueilli ;    お前たちは、わたしが飢えていたときに食べさせ、のどが渇いていたときに飲ませ、旅をしていたときに宿を貸し、
     36     j’étais nu, et vous m’avez habillé ; j’étais malade, et vous m’avez visité ; j’étais en prison, et vous êtes venus jusqu’à moi !”    裸のときに着せ、病気のときに見舞い、牢にいたときに訪ねてくれたからだ。』
     37    Alors les justes lui répondront : “Seigneur, quand est-ce que nous t’avons vu… ? tu avais donc faim, et nous t’avons nourri ? tu avais soif, et nous t’avons donné à boire ?    すると、正しい人たちが王に答える。『主よ、いつわたしたちは、飢えておられるのを見て食べ物を差し上げ、のどが渇いておられるのを見て飲み物を差し上げたでしょうか。
     38     tu étais un étranger, et nous t’avons accueilli ? tu étais nu, et nous t’avons habillé ?    いつ、旅をしておられるのを見てお宿を貸し、裸でおられるのを見てお着せしたでしょうか。
     39     tu étais malade ou en prison… Quand sommes-nous venus jusqu’à toi ?”    いつ、病気をなさったり、牢におられたりするのを見て、お訪ねしたでしょうか。』
     40    Et le Roi leur répondra : “Amen, je vous le dis : chaque fois que vous l’avez fait à l’un de ces plus petits de mes frères, c’est à moi que vous l’avez fait.”    そこで、王は答える。『はっきり言っておく。わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである。』






 色刷り部分の下端には、次のように書かれています。

  B. L. Paris, G.O. 6.804, Imprimé en France  パリ、ブアス=ルベル 図版番号 G.O. 6.804 フランスで印刷

 ブアス=ルベル社(Bouasse-Lebel Éditeur et Imprimeur)は、「ブアス=ルベル」と名乗ったエングレーヴァー、アンリ=マリ・ブアス (Henri-Marie Bouasse, 1828 - 1912) が 1845年に創業し、1965年まで存続したカトリックの版元で、数多くの美しい聖画の制作で知られています。

 カニヴェをはじめとするフランスの小聖画は、十九世紀にはおおむねインタリオで制作されました。しかしながら 1880年代頃には多色刷り石版による小聖画が多く刷られるようになります。縁に切り紙細工のあるカニヴェは二十世紀初頭まで作られましたが、最終世代に当たる二十世紀初頭のカニヴェは、切り紙細工が無い小聖画と同様に、すべて石版で刷られています。

 インタリオから石版画への移行は版画技法の変化に過ぎませんが、二十世紀半ばになると、小聖画の社会的役割にも大きな変化が生まれます。二十世紀前半までのフランスでは、カトリック信仰が市民生活に深い影響を及ぼしていました。教会をはじめとする宗教教育の場では、子供たちの日常生活に信仰を浸透させるため、教理問答のご褒美等に小さな聖画が与えられ、祈祷書の栞(しおり)に使用されて、宗教心の涵養が目指されました。しかしながら第二次世界大戦後には社会の世俗化が急速に進み、かつて子供たちの日常生活に浸透していた小聖画は姿を消しました。二十世紀半ば以降の小聖画には、日常生活と信仰をテーマにした作品はほとんど見られなくなり、ノエル(クリスマス)や誕生日、洗礼や初聖体など、特別な機会を記念するものに限られるようになりました。

 フランスにおける聖画制作の最大手であったブアス=ルベルも、フランス社会の世俗化の波に翻弄され、業績が悪化しました。この聖画が刷られたときの社主アルベール・ブアス(Albert Bouasse, 1868 - 1955)は、1949年の5月と12月に東洋美術の個人コレクションを競売にかけましたが、その収益も焼け石に水でした。アルベール・ブアスは 1955年に亡くなり、モンパルナス墓地に埋葬されました。その十年後である 1965年に、ブアス=ルベル社は操業を停止します。





 本品において、聖画下端の社名は "B. L. Paris" と表記されています。ブアス=ルベルの社名がこの形式で表記されるのは、1940年代以降です。図版番号は "G.O. 6.804" となっていますが、ブアス=ルベルの図版番号がこの形式で表記されるのは、1940年代末から 1950年頃までです。また 1950年代の初頭を過ぎると、ブアス=ルベルの聖画の色遣いは、本品よりも原色が多用されるようになります。したがって本品の制作年代はおそらく 1948年から 1949年、最も遅く見積もっても 1950年と考えて間違いないでしょう。本品はフランス社会が本格的に世俗化しはじめた頃に刷られた聖画であり、日常の信仰生活を主題にした子供向け聖画としては最後の世代に属する作例です。





 本品は七十年近く前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、古い年代にもかかわらず、保存状態は極めて良好です。破れ目や折り目、目立つ汚れなど、特筆すべき問題は何もありません。良質の中性紙に刷られているため、酸性紙のような劣化は今後も起こりません。

 下記の商品価格には、聖画、額、マット、ベルベット、工賃、税をすべて含みます。写真に写っている額は注文制作による一点物で、絵画用額縁制作に使う高級な木製棹(さお フレームの素材)を使用し、日本国内の職人が手作りしたものです。この額のサイズは 164 x 207ミリメートルです。壁掛け用金具と紐が付属していますが、縁の周囲が平坦で、33ミリメートルの奥行きがあるので、自立させても安定しています。マットに張ったベルベットのワイン・レッドはミサによって聖変化するキリストの御血の色であり、愛を象徴します。他の色やデザインの額をご希望の場合、またはご注文をいただいた時点で写真の額が在庫していない場合、お好みに合う同等クラスの他の額をご用意いたします。マットの色は追加料金無しで変更できます。なお商品写真は反射を防ぐためにガラスまたはアクリル(プレクシグラス)を取り外して撮影しています。





12,800円 (聖画、額込み)

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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