水彩による手描き小聖画。プロのミニアチュール画家並みの優れた筆遣いで、聖画の左半分に可憐なスミレを描いています。花の色には紫、白、赤の絵具が、葉と茎の色には緑、黄、白、茶の絵具が、それぞれ何通りもの色調に調製され、使用されています。
スミレは丈の低い小さな植物で、地表に這いつくばるように慎ましく育つことから、へりくだりの象徴とされています。この聖画に美しく咲くスミレは、神の前に謙虚になり、慢心を捨て、自分を捨てる信仰を表しています。
下の画像は実物の面積を約 16倍に拡大しています。スミレの花の直径、及び左下の大きな葉の長さは 1センチメートルです。
聖画の右半分には、赤、青、金の絵具を使い、やはりプロの写字生並みに美しいゴシック典礼体で、次の言葉を記しています。
Quand on possede Dieu, rien ne manque! 神を持つ人には、足りないものが無い。
キリスト教の象徴体系において、赤は愛、青は知恵を表し、二色を組み合わせた作例が多く見られます。この小聖画もそのようなもののひとつです。また金は神の栄光あるいは天国の栄光を表し、赤及び青と組み合わせて用いられます。
聖画の裏面には美しい字体フランス語で、次の言葉がペン書きされています。
Conservez bien au fond du cœur les grâces et les joies d'un si beau jour!
À Elfrida-Maria, souvenir de Marie d'Icard, 3 Octobre, 1879
かくも素晴らしい日の恵みと喜びを、心の奥底によくしまっておきなさい。エルフリダ=マリア様 マリ・ディカールより 1879年10月3日
この美しい細密画を描き、レタリングを施したのが、マリ・ディカール (Marie d'Icard) という女性であったことがわかります。細密画を贈られたのはエルフリダ=マリア
(Elfrida-Maria) という女性で、おそらく初聖体か堅信を受けた少女でしょう。
ちなみにエルフリダ=マリア (Elfrida-Maria) はゲルマン系の女性名、マリ・ディカール (Marie d'Icard) はフランス語の女性名です。
近世以降、フランスはドイツと対立を繰り返し、19世紀後半には普仏戦争(1870 - 71年)がありました。鉄血宰相として知られたビスマルク
(Otto Eduard Leopold Fuerst von Bismarck-Schoenhausen, 1815 - 1898) は、普仏戦争に勝利してドイツ帝国統一に成功すると、1873年にはオーストリア・ハンガリー及びロシアの両帝国との間に三帝同盟、1882年にはオーストリア・ハンガリー、イタリアとの間に三国同盟、1887年にはロシアとの間に独露再保障条約を結んで、対フランス包囲網を構築しました。
本品はこのような時代にフランス人女性が制作し、ドイツ系と思われる少女に贈られています。ふたりは年齢の隔たりにもかかわらずとても親しかったはずですが、どのような関係だったのでしょうか。
このミニアチュールはフランス、セネラー社のモールディングを使用したラーソン・ジュール社の高級フレームに、ベルベット張りマットを使用して額装しました。額はアンティークの風合いを出したアール・ヌーヴォー様式の浮き彫り模様に縁どられ、3.5センチメートルの奥行があります。自立式、壁掛け式のいずれにもお使いいただけます。ベルベットの色は価格を変えずに変更できます。
下記の価格には、小聖画だけでなく、商品写真に写っている額、マット、ベルベット、工賃、税も含みます。商品写真に写っている額が在庫していない場合、同じ価格の他の額をご用意いたします。また商品写真とは異なるデザインや色の額をご希望の場合、同じ価格の他の額をご用意いたしますので、お気軽にご相談くださいませ。
28,800円 販売終了 SOLD
電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。
すみれを描いたアンティーク小聖画 商品種別表示インデックスに戻る
カニヴェ、イコン、その他の聖画 一覧表示インデックスに戻る
植物を描いたアンティーク小聖画 商品種別表示インデックスに移動する
動植物を描いたアンティーク小聖画 商品種別表示インデックスに移動する
アンティーク小聖画 商品種別表示インデックスに移動する
カニヴェ、イコン、その他の聖画 商品種別表示インデックスに移動する
キリスト教関連品 商品種別表示インデックスに移動する
アンティークアナスタシア ウェブサイトのトップページに移動する
Ἀναστασία ἡ Οὐτοπία τῶν αἰλούρων ANASTASIA KOBENSIS, ANTIQUARUM RERUM LOCUS NON INVENIENDUS