刺繍糸で縁取った「悔悛のガリア」のソヴガルド 修道女の手作り品 聖心の小メダイ付


ソヴガルドのサイズ 縦 7 x 横 5.5センチメートル

額のサイズ 縦 15.5 x 横 12センチメートル  厚さ 1センチメートル


フランス  19世紀後半または20世紀初頭



 フランスの修道院で修道女の信心業として制作されたソヴガルド。19世紀後半または20世紀初頭の作例です。





 ソヴガルドの中央には、縦 5.5センチメートル、横 3.7センチメートルの白い綿布に、赤色の染料で聖心を描きます。十字架を突き立てられ、茨の冠に囲まれて血を流すキリストの聖心は、人知を絶する愛の強さゆえに、炎を噴き上げて燃えています。愛に燃える聖心からは、神の恩寵が眩い光輝となって発出しています。聖心の左右には、あたかも聖心に寄り添うように、次の祈りがフランス語で記されています。

  Cœur agonisant de Jésus, ayez pitié de nous.  イエスの苦しみ給う御心よ、我らを憐れみたまえ。

 聖心の上下には、次の言葉がフランス語で記されています。

  Que Votre règne arrive!  御国(みくに)の来たらんことを!

  Le Cœur de Jésus est là. Arrête!  イエスの聖心あり。止まれ!





 聖心のイマージュ(絵)と祈りを記した白い綿布は、真っ赤な刺繍糸を使って、クリーム色のウールの布に縫い付けられています。綿布を縫い付けた刺繍糸は、ジグザグのパターンを描く様(さま)が、あたかも聖心を取り巻く茨のように見えます。実際、この縫い取りは茨を象(かたど)ったもので、修道女は茨の冠を二重にし、イエスの聖心の「苦しみ」(agonie) を強調しています。

 本品に使われている色彩は、布の明色を除けば、赤のみです。聖心のイマージュ(絵)と祈り、二重に縫い取られた茨の冠、全体の縁取りには、いずれも赤が使われています。赤は愛の火を表すゆえに、神の愛そのものの顕(あらわ)れである「聖心」に最もふさわしい色です。


 本品はウールの布のところどころに虫喰いの孔が開いていますが、聖心を描いた綿布に虫喰いはありません。刺繍に使われている糸も木綿糸らしく、虫に喰われていません。虫喰いの有無は材質の問題に過ぎませんが、まるで虫が「イエスの聖心あり。止まれ!」(Le Cœur de Jésus est là. Arrête!) と命じられたようにも見えて、面白く感じます。ちなみにソヴガルドは戦闘の際の「弾除け」とも考えられ、革命期には王党派の軍人に愛用された記録が残っています。





 本品にはブロンズのメダイが縫い付けられています。このメダイはごく小さなもので、突出部分を除くサイズは縦十ミリメートル、横八ミリメートルです。

 メダイの一方の面には、聖母訪問会パレ=ル=モニアル修道院の修道女マルグリット=マリが、礼拝堂の床に跪く様子が刻まれています。マルグリット=マリは聖心を示すイエスを幻視しています。マルグリット=マリが両腕を広げているのは、祈りの姿勢です。聖女に執り成しを求める祈りの言葉が、浮き彫りを囲むようにフランス語で刻まれています。

  Bienheureuse Marguerite-Marie Alacoque, priez pour nous.  福者マルグリット=マリ・ア・ラ・コックよ。我らのために祈りたまえ。




(上) 聖心を示すキリストを幻視するマルグリット=マリ。石版画による19世紀後半の小聖画。当店の商品です。


 マルグリット=マリ・アラコックは1864年9月18日にピウス9世により列福、1920年5月13日にベネディクトゥス15世により列聖されました。本品のメダイでは「福者マルグリット=マリ・ア・ラ・コックよ」と呼びかけていますから、メダイの制作年代は 1920年よりも前であることがわかります。





 上の写真に写っている定規のひと目盛は 1ミリメートルです。人物の顔や手のサイズは 0.2ミリメートルか 0.3ミリメートルに過ぎません。マルグリット=マリが腰から提げたロザリオの先端には、小さな十字架が見えます。イエスの衣やマルグリット=マリの修道衣には、流れるように自然な襞が表現されています。床の敷石もひとつひとつが判別できます。





 メダイの裏面には、キリストの聖心を中央に大きく刻みます。聖心には十字架が突き立てられ、上部からのみならず脇の槍傷からも、太陽のようにまばゆい光輝を伴って、烈しい愛の炎が噴き出ています。聖心は茨に囲まれており、その外側には免償のクルシフィクスに刻まれているのと同じ言葉がフランス語で記されています。

  Voilà ce Cœur qui a tant aimé les hommes.  人をかくも愛したまえるこの聖心を見よ。

 19世紀後半から20世紀初めのフランスでは、マルグリット=マリの列聖をひとつのきっかけに、聖心への信心が大きなうねりとなって広まりました。このソヴガルドとメダイは、「悔悛のガリア」(Gallia pœnitens) 時代のフランスの雰囲気をいずれもよく伝えています。





 本品は百年以上前のフランスで修道女が手作りした真正のアンティーク品です。布は明るい色ですが、変色や染みはありません。ウール布のところどころに虫喰いがありますが、大切な部分はいずれも破損を免れており、美観上の問題はありません。保護のために簡易な額に入れました。下記の価格には額装が含まれます。





本体価格 12,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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