カルメル会修道女の手作り品 《リジューの聖テレーズ 額型ルリケール 10.5 x 7.5 cm》 セピア色の写真と金色のパプロール フランスまたはベルギー 1900年代から 1920年代初頭



 フランスまたはベルギーで制作された美しいルリケール。ルリケール(reliquaire) とは額型容器や黄楊の小箱などに聖遺物を封入したもので、金線を模したパプロール(仏 paperoles 渦状に巻いた紙片による紙細工)や、少し大きなものだと聖画等で飾られ、たいへん美しい細工物となっています。





 本品ルリケールは楕円形の額型で、縦横のサイズは 10.5 x 7.3センチメートルです。額内は赤のベルベットを背景に周囲を金色の紙で縁取り、楕円形の台座の周囲を華やかなパプロールで放射状に飾ります。楕円形の台座には、リジューのテレーズ(Thérèse de Lisieux, 1873 - 1897)の肖像がセピア色の写真となって展示されています。写真のサイズは縦三センチメートル余り、横二センチメートル余りです。写真のすぐ下に金色の紙でできた直径四ミリメートルの小円盤があり、黒い聖遺物が塗布されています。

 聖遺物は黒い泥のように見えます。遺灰のようでもありますが、テレーズは火葬されていませんから、遺灰ではありません。テレーズは死後に棺を開けて改葬されているので、この黒い物は棺内から採取した塵埃か、あるいは墓所の土でしょう。





 セピア色の写真に写ったテレーズは、跣足カルメル会の茶色いヴォワル(voile ヴェール)とアビ(habit ハビット、 修道服)、白いコワフ(coiffe ウィンプル)とマントを身に着けています。この写真の元になったのは、テレーズが亡くなった二年後の 1899年に、実姉セリーヌが描いたまゆみの木炭画です。

 テレーズは女の子ばかり五人姉妹の末子で、五人はいずれも修道女になりました。四人の姉のうち、三女レオニーは聖母訪問会の修道女となり、長女マリー、二女ポーリーヌ、四女セリーヌは、五女テレーズと同じく、リジューのカルメル会の修道女でした。テレーズのすぐ上の姉セリーヌ(Marie-Céline Martin, 1869 - 1959)は、四人の姉妹が修道女となった後も、家に残って老父ルイ・マルタン(Louis Martin, 1823 - 1894)の世話をしました。父ルイが亡くなったのは 1894年7月29日、埋葬されたのは8月2日でした。セリーヌは父の死後の整理を終えると、1894年9月14日、テレーズと同じリジュ―の跣足カルメル会修道院に入り、聖顔のジュヌヴィエーヴ(Sœur Geneviève de la Sainte Face)という修道名を名乗りました。

 美術の才能があったセリーヌは、1891年から画家エドゥアール・クルーク(Édouard Krug, 1829 - 1901)の指導を受けて絵を学んでいました。セリーヌの才能を非常に高く評価していたクルークは、セリーヌのカルメル会入会後も、幾度か修道院を訪れてセリーヌに面会し、自分が愛用するパレットを贈っています。セリーヌは自分の才能の限界も知っていましたが、天才画家でなくとも神の役に立てると考えるようになりました。





 セリーヌはテレーズの生前に多数の写真を撮影していましたが、1959年に亡くなるまで、それらの写真を公開しませんでした。世の人々がそれらの写真を目にしたのは、セリーヌの死後である 1961年のことです。セリーヌが写真を公開しなかった理由は、写真の影像には生身のテレーズが捉えられていないと考えたからです。

 十九世紀末の写真は、およそ九秒の露光時間を要しました。被写体となる人は、九秒のあいだ、姿勢を変えることも表情を変えることもできなかったのです。当時の写真に写る人は、どうしても口もとがこわばり、表情が硬くなります。これに加えて写真は九秒間に起こるわずかなぶれのために不鮮明になりがちでしたし、当時の印画紙は明暗の階調の再現性も劣っていました。このような理由で、セリーヌは写真ではなく絵によって、自分が誰よりもよく知っている妹、ありのままのテレーズを再現したのでした。





 聖人に関連する品物の制作年代を知るには、文字に書かれた聖人の称号や、肖像に描き込まれた後光の有無がひとつの手掛かりになります。セリーヌがこの肖像画を描いたのは 1899年です。一方テレーズは 1923年に列福、1925年に列聖されています。セリーヌによるテレーズの肖像画は数多く複製されて小聖画となり、あるいはメダイユの浮き彫りとなって普及しましたが、そのような信心具の肖像には列福後に淡い後光が、列聖後に明瞭な後光が付加されるのが通例です。

 十七世紀以来フランスの修道院では、前面をガラス張りとし、聖遺物をパプロールで飾った本品のようなルリケールを制作していました。本品もカルメル会修道女による手作り品です。セリーヌによるこの肖像画は広く流布していましたので、淡い後光がある福者テレーズの像も、明瞭な後光がある聖テレーズの像も、その時々で容易に手に入ったはずです。修道女であればその時点で最もふさわしい肖像画をルリケールの素材に選ぶでしょうから、後光が無い肖像を用いた本品は、テレーズが未だ列福も列聖もされていない時点で制作されたと考えられます。





 本品のサイズは縦 105ミリメートル、横 75ミリメートル、厚さ 15ミリメートルで、どこにでも置けるサイズです。裏側には壁掛け用のリングが付いています。本品は硬い床に落下したらしく、前面のガラスが割れた状態で見つかりましたが、当店にて修復を行いました。今後同様の事故によって破損することが無いように、ミネラルガラスを有機ガラス(アクリル)に変更しています。この修復と変更を除き、本品の内部は制作当時のままの状態です。特筆すべき問題は何もありません。

 当店の商品は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払い(二回、三回、六回、十回など。金利手数料無し)でもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。ご遠慮なくご相談くださいませ。





本体価格 39,000円 販売終了 SOLD

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