聖ベルナデット 聖遺物の布を封入した「ルルドの聖母」のメダイヨン


直径 16.5 mm  厚さ 4.0 mm

フランス  1933年



 直径 16.5ミリメートルの小さなメダイヨン(ロケット)に聖遺物を封入し、携帯可能なルリケールとしたもの。メダイヨンの材質は、ブロンズに銀めっきを掛けています。





 メダイヨンの一方の面には少女マリアの横顔を浮き彫りにしています。花嫁のヴェールを被ったマリアは、口許に微笑みを浮かべつつ真っ直ぐに前を見、胸の前に手を合わせて神と対話しています。マリアを囲むように「ウィルゴー・インマクラータ」(VIRGO IMMACULATA ラテン語で「汚れなき処女」「無原罪の乙女」の意)と刻まれています。




(上) クレール・ドミニク・ローラン作 「マーグニフィカト わがこころ主をあがめ」 パリ造幣局のブロンズ製大型メダイユ 直径 63.1 mm 最大の厚さ 5.9 mm 重量 126.4 g 1982年


 家のなかに突然天使が入ってきて、処女であるマリアに受胎を告知するという異常な出来事にもかかわらず、アブラハムとヨブにも勝る信仰の持ち主である少女マリアは、「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように」と、落ち着いて答えました。マリアはこの後すぐに四、五日間の行程を歩いて親類のエリザベト(洗礼者ヨハネの母)を訪ね、神への讃歌を謳っています。





 本品に刻まれたマリアの幸せそうな横顔は、マーグニフィカト(わが魂は主をあがめ)の一節、「今から後、いつの世の人もわたしを幸いな者と言うでしょう」と思い起こさせます。

 小さな文字なので読み取りにくいですが、マリアの肩の下、メダイの縁に近いところに、メダイユ彫刻家 O. リュフォニーのサイン (O. Ruffony) が刻まれています。O. リュフォニーは 19世紀末から 1930年代初めにかけてフランスで活躍したメダイユ彫刻家で、1933年にベルナデット列聖記念メダイを制作しています。下の写真に示したのは O. リュフォニーによるベルナデット列聖記念メダイの裏側で、本品と同じ意匠の浮き彫りになっています。


(下) O. リュフォニー作 ベルナデット列聖記念メダイ 「汚れ無き童貞マリア」 「聖ベルナデットよ、我らのために祈りたまえ」 直径 30.3 mm 1933年 当店の商品です。




 本品(聖遺物入りメダイヨン)のもう片方の面には、当時 14歳であったルルドの少女ベルナデット・スビルー(聖ベルナデット Ste. Bernadette, 1844 - 1879)が、聖母の出現を受ける様子を刻みます。脱いで揃えた靴と薪の束が、ベルナデットの傍らに置かれています。左後方の遠景には、ルルドのバシリカが刻まれています。





 1858年3月25日、16回目の出現の際、ベルナデットに四度凝り返して名を問われた聖母は、微笑むのを止め、目を天に向け、下ろしていた両手を胸の前で組んで、「私は無原罪の御宿りです」と答えました。





 上の拡大写真において、聖母は茨の繁みに裸足で立っていますが、これはエヴァと同様に女でありながら、棘だらけの藪から咲き出でて無傷の花を咲かせるロサ・ミスティカ(ROSA MYSTICA ラテン語で「奇(くす)しき薔薇」)、すなわち「無原罪の御宿り」を象徴的に表しています。ベルナデットは髪をヴェールで被い、ロザリオを掛けた両手を胸の前に合わせて、聖母の前に跪いています。

 聖母は十五連のロザリオを手首に掛け、胸の前に手を合わせて、「わたしは無原罪の御宿りです」と名乗っています。「わたしは無原罪の御宿りです」(フランス語 Je suis l'Immaculée Conception.)という言葉は、聖母の後光に刻まれています。





 上部の環を中心にし、メダイの表裏を回転するようにずらすと、聖遺物として封入された 6×7ミリメートルの白い布片を見ることができます。これがどのような布片であるのか、説明は書かれていませんが、O. リュフォニーの浮き彫りがベルナデット列聖記念メダイと同じ作品であることを考えると、このルリケールもベルナデット列聖の記念に制作されたものであると思われます。したがってこの布片は、新しく聖人に列せられたベルナデットの聖遺物(遺体)に触れさせたか、あるいは棺の上に置かれた布片でしょう。



 本品が制作された 1933年は、三十三歳で十字架にかかり給うたイエズス・キリストの死と復活、昇天から 千九百周年であり、ルルドにおける聖母出現の七十五周年にも当たります。この年からの二年間は「購(あがな)いの聖年」とされ、聖年の締めくくりである 1935年の復活祭において、教皇のミサはローマではなく、ルルドで行われました。

 聖年が始まった 1933年は、ドイツでヒトラー内閣が成立した年でもあります。聖年を締めくくるミサのひと月前、1935年3月16日にヒトラーはドイツの再軍備を宣言します。9月15日にはニュルンベルクにおけるナチ党大会でニュルンベルク法 (Nuernberger Gesetze) が制定されてナチのハーケンクロイツ(鉤十字旗)が正式のドイツ国旗となり、ユダヤ人に対する本格的な迫害と絶滅政策が始まりました。

 1933年以降しばらくの間、キリスト教が説く隣人愛とは対極の、憎しみによる支配と戦争が世界中に広まりました。メダイユ彫刻家 O. リュフォニーが刻んだマリアの穏やかな微笑みは、後の歴史を知る我々の胸を打ちます。





 本品は八十年以上前に制作された真正のアンティーク品ですが、古い年代にもかかわらず良好な保存状態です。聖遺物はメダイヨンに封入されたまましっかりと守られ、聖遺物を守るメダイヨンにも特筆すべき問題はありません。メダイヨンは表面の銀めっきが剥落し、真正のアンティーク品ならではの趣(おもむき)を獲得しています。浮き彫り自体は突出部分においてもほとんど磨滅せず、細部に至るまで鋳造当時の状態を留めています。





19,500円 販売終了 SOLD

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